ErogameScape -エロゲー批評空間-

tomQさんのエヴォリミットの長文感想

ユーザー
tomQ
ゲーム
エヴォリミット
ブランド
propeller
得点
80
参照数
1281

一言コメント

タイトルへの深読みはダメ。あくまでそれっぽい格好良いタイトルを冠した少年誌的燃えゲ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作のお題はどう見ても「進化の在り方」
だが、残念なことにそんな高尚かつ深遠なものを描いているかと言われれば答えはNO。
進化=人間を超越するくらいのパワーアップ的な位置づけと割り切った方が良い内容だ。
それでもあえて「進化」という点で見てみると

1 そもそもその進化を促そうとする敵である「災害」の登場が遅い
物語的には中盤に差し掛かった頃に登場。
それまでは「あやかしびと」のように学園都市を取り巻く人間達との交流がメインである。登場が遅いということはその分本題に直面する時間も少ないということ。

2 人類最悪の敵のはずの「災害」がわりとあっけなく敗北する
バトルそのものは死闘であるのは間違いないのだが、基本的に災害達と主人公達が相対する時点で戦闘の結末まで一気に進んでしまう。まさに猪突猛進。
策略とか陰謀とかお構いなしの攻撃あるのみ。
しかも一人が登場すると芋づる的に次々と襲いかかるので「死闘の連続」に見えつつ実は「単なる踏み台」に終わっていたりする。特に雫ルートは顕著。
「人類の進化」とは無関係なヘカトンケイルの方が余程強大な壁に見えるから何とも。

雫ルートのラストバトル・シャノン戦で総括されてる分破綻はしてないが、作品全体としてはむしろテーマが足を引っ張っていた感は否めない。
故に進化=限界を超えるパワーアップ程度に置き換えて考えてみる方が良いと思う。


ヒロイン別感想

カズナ
良い意味での腹黒という言葉にすると矛盾する響きの市長さん。
市民に平等に接するという立場と義務を持つが結構喜怒哀楽が大きい。
自ら時代の変化の渦中に身を置き、火星の新しい可能性を模索するというのが主題なのだが、この辺りはどうにもチャペックに一本取られた気がする。
もうひとつの母親との確執の解消はエピローグに用意されるという、これまた何とも惜しい内容。もう少しこの辺りの要素は本編にちりばめても良かったのでは?

リーティア
ロリ北都製妹キャラ。
これにはかなり食傷気味なのでヒロイン感想は略
何気に主人公・不知火の家族についても色々語られるルート。
弟を探す一心で火星まで来るやってくる姉ちゃん、あんたすげえブラコンだな。
加えて実はカラミティーモンキーズ的にも一番のハッピーエンドじゃないかと。
初回のルートがこれだったので敵=災害=かなりの強敵の図式な私は拍子抜けしてしまった。


文句なしの真のヒロイン。
気合でもなく、勇気でもなく、ラブパワーだけで強くなるルートヒロイン補正MAXな相棒。このルートではかつての仲間であるカラミティーモンキーズの生き様も強く描かれており、まさに東出氏らしさ全開とも言える。
雫と築きあげたのも絆ならば、またかつての仲間との間にあったのも絆のひとつの形。
思い出と共に作り上げた絆の昇華というのは東出氏にとっては物語を作る上で欠かせない重要な要素なのだろう。そしてそれはシャノンとの間にも確かに存在していた。
その絆の果てが、雫との「共生」であり、ドミトリ達からの「継承」であり、シャノンとの「決別」である。


総評としては、「人の進化の果ては宇宙である」という結論から本作が生み出されたのではないかと考える。しかしその要素を如何に切り崩して見せていくかという部分で失敗してしまった。だが読みやすく丁寧に燃えゲーテキストを構築していく東出テイストは以前健在。そう意味では少し惜しかったなと思う。


余談
雫役の声優さんって何者?
表名義はさっぱり詳しくないが、演技力に関しては文句なしのレベル。
今後は是非ともフルプライスの抜きゲなどでエロ方面の艶技を磨いて下さい。
久々のエロゲ声優界待望の新星の今後に期待。