燃えゲとしては名作に入れて間違いない出来。ただ従来の「バトル描写」に力を入れる燃えゲとは少し毛並みが違う。これはこのライターの特徴なので事前に体験版プレイは必須事項。
デモや作中でメルクリウスが言った「筋書きはありきたりだが役者が至高」
まさにこの作品を評すればこの一言。
綿密かつ個性的なバックボーンにより確立されたキャラクターが素晴らしい。
その反面、敵の強大さが強調されているので味方側の方がどうにも心許ない印象を受けてしまう。故に「覚醒による一発逆転」「今までの鬱憤を晴らすような、こちらが敵を圧倒する展開」といった爽快感のあるシナリオは少ない。
そういう意味ではどちらかと言えば様々な燃えゲに触れてきた人の方が楽しめる内容ではないかと思う。
加えてライターの正田氏はバトルをメインに持って来るのではなく、あくまでキャラクターを立てる一要素として位置づけている面がある。
例えるならば剣客者の人情活劇。
派手な立ち回りはあくまで話を彩る一要素であり、主は登場人物の悲喜交々な姿。
本作もこれに近いと思う。
己が望みを叶えるべく虎視眈々とするラインハルト。
その狂気に見入られ、跋扈する団員達。
そんな彼らに崩されていく日常、仲間は必死に守り抜こうとする蓮。
そして全てを嘲笑うメルクリウス。
それら全てを一つの舞台にしたのが本作という訳だ。
同じ燃えゲの代表格であるFateは「設定に裏打ちされたバトル物」の極地。
対してDies iraeは「キャラに裏打ちされたバトル物」の極地。
というのが個人的な感想。
これほどキレのある文章を書けるライターはこの業界でもそうはいない。
本作に関わるメーカーの対応は正直眉をひそめるレベルではあるが、食わず嫌いせずに手にとって欲しい作品だ。
余談
因みに私は07版は事前情報で回避した側です。
発売を知って約3年。待たせただけの価値はあったと思いますが、正田氏にこれ以上の作品を作れるか、ここから本当の正念場と見守っています。