各ヒロイン勢は凡作から頭一つ抜きん出ている程度。しかしトリともいえる夢ルートが秀逸。メルヘンな設定と等身大なキャラの噛み合いがここでカッチリ填まる。泣きゲーは嫌だけどジーンとしたいという人にオススメ。
悪夢を刈る死神の少女によって、かつて約束を交わした少女の名前を失う所から始まる物語。
となれば再びその名前を思い出す所から本当のスタートになる訳で、あえて乱暴な言い方をすればそれまでのヒロインの話は回り道とも言える。
各ヒロインの簡単な感想
明日歩
思い出(≒初恋)からの脱却というオーソドックスな展開。
夢が望んだであろう結末。
ヒロインとなる明日歩も主人公に恋心を抱く明るい人気者という定石の一手。
嫌味のないヒロイン像は好感が持てるがそれに尽きる。
こもも
ここで親達「都市伝説世代」の思惑が見え隠れしてくる。
加えて舞台装置とも言える星神・星霊などの設定が明確化してくるのもこの辺り。
しかし夢ルートをやればわかるが、正直この辺りの設定は重要ではなかったりする。
次第に主人公に心引かれる様が、手に取るように分かるこももの姿にニアニアするのが正しい楽しみ方かと。
こさめ
こももルートの派生系。設定の大半がこももルートで判明しているので、どうしても消化不良の感がある。いっそ差別化を図るために総本山との対決などに力を入れた方が良かったんじゃないか?と思うが、それでは色物か(苦笑)
衣鈴
ここでようやく主人公の父親である大河が現れる。
衣鈴に関しては決して心を許さない孤高から子犬キャラに変貌するところがポイントなのだが、タイミングが遅い印象。
どうしてもそこに到るまでのつっけんどんな印象が強い。
千波
バカキャラ・ネタキャラ枠。
「家族」がキーワードとなるが、肝心の詩乃の印象が薄いのでどうしても感動が薄れてしまう。この辺りはもう少し他のルートで見せてくれれば良かったのだが・・・。
それらしいのは明日歩ルートの後半でのビンタくらいだし・・・。
変わりに母・歌澄と父・大河に関する設定が浮き彫りになる。
夢
本作で唯一日付が12月に入る文句なしのトゥルーエンド。
主人公・メア・夢。この三人を繋ぐ線がようやく判明する。
願いに隠された夢の想い。悩み、葛藤し、それでも懸命に前に進もうとする主人公。
そんな二人の等身大な姿とそれを繋ぐメアという存在。
それぞれが星空に思いを馳せ、二人の望む結末にメアが導いていく。
その過程の真っ直ぐさが本作の一番のポイントなのだと思う。
綺麗な結末。このルートを一言で評するならこう評したい。
決して交わることのなかった父と子。
しかし二人は同じ星空に魅せられ、やがてはかつて父が立っていた場所にたどり着く。
かつて母が乗り越えることの出来なかった壁の向こうにあるのは、平凡でありふれた普通の家庭。しかし二人にとっては何事にも代えがたい奇跡に等しい結末。
余韻に浸れる良い作品でした。
ミドルプライスでいいからエピローグに至る補完をしてくれないかなあ。
余談
メアルートは正直蛇足だと思う。