一話完結型のライアー的ファンタジー。読み易くも深い文章と群を抜く物語性。学園萌えゲーに食傷気味なら、こういう作品に触れるのをオススメしたい
一言で言えば、人を救おうと足掻き続ける医者の物語。
こう言えばありふれたテーマに取れるかも知れないが、「インガノック」という我々と常識も歴史も違う世界で、それでも愚直なまでに「手を伸ばす」姿を、癖のある人物達と綺麗な文章を通して描くことで見事に「物語」として完成している。
元々ファンタジーとは「指輪物語」のように異世界を通して我々を風刺的に描くという側面があるが、この作品にもそれは当てはまると思う。心とは?美しさとは?
薄汚れた下層の世界を通して、そんな事を問いかけているような気がしてならなかった。
この作品では終始この「手を伸ばす」という行為が印象的に描かれているが、無論その先には手を伸ばして掴みたい何かが存在するはずである。それは人だったり世界だったり、可能性だったりするのだろう。
他の作品とは一線を画す、ライアーらしい癖のある作品だが、時にはこんな物語に浸るのも良いのではないだろうか?
パートボイスな所が唯一の減点、しかし演出として捕らえればこれもアリなのかも知れない
余談
メーカーHPにてWebノベルを展開中である。この世界に魅力を感じたら是非足を伸ばしてもらいたい