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tokoyamisさんの夏の終わりのニルヴァーナの長文感想

ユーザー
tokoyamis
ゲーム
夏の終わりのニルヴァーナ
ブランド
ぱじゃまソフト
得点
85
参照数
488

一言コメント

死生観がテーマの良ゲー

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このゲームは現世(此岸)でも、あの世(彼岸)でもない
死者が裁かれる為にある世界で、主人公である閻魔の息子が
死者と縁を紡ぎ魂を裁くという話です。

(Wikiより抜粋)
死生観(しせいかん)とは、死を通した生の見方をいう。
宗派によっては生死観(しょうじかん)ともいう。 具体的な型には

1.人が死んだらどうなるか?どこへ行くのか?
2.死後や死者をどう捉えるか?
3.生についての人々の考え方や理解の仕方
4.生きることとは何か?死ぬこととは何か?

このゲームは上記3.4がテーマとなっている様子。
重要な選択肢はお祭りの所だけ、ほぼノベルゲーです。
原画はぱじゃまソフトのいつもの方、大野哲也氏です。
BGMはクラシックのアレンジであり、安定の名曲ばかりなので耳には幸せです。

主人公の一人称が「俺様」なので、俺様キャラかと思いきや、
異様に有能なのになぜかパシリになる悲しい立ち位置。
あと変態じゃないのに変態扱いされたり結構不遇というよりは、
報われないタイプで憎めない。
何にしても女性陣が話を聞かなすぎる。
特にクオンは主人公の事が好きなのはバレバレなのだが、
初心なのに耳年増という残念な感じなので大したことをしてないのに
すぐに主人公にお仕置きをする。
電車やバスでの冤罪ってこうやって生まれるんだなと
思ってしまうレベル。
ちなみにシナリオ後半で、主人公は決める時は決めるので
一応安心してほしい。

序盤、中盤のテキストは特に日常がだれぎみですが、
個別に入ると結構良いです。
家族ネタに打たれ弱いのでミハヤルートではぐっときてしまいました。
ちなみに個別でえちいシーンがありません。このゲーム18禁じゃなくてもいいよね・・・。

・ミハヤ
自らを責めている少女。自身の存在自体が罪とし、
自殺を何度もし、自らの存在を消したがっていた。

だが、彼女に生きて欲しいと願っていた二人の存在があった。
それに目を背け、彼らの命を無駄にしていた。
そして、ミハヤを今支えている存在すらも彼女は拒絶していた。

未熟だった魂を3人の存在と主人公が救う。そういう話です。

最後にミハヤは言う。
ごめんなさいではなく、ありがとうと。


・レイア
人間の醜い部分に触れ、すべてを閉ざしてしまった。
人が信じられないというよりは、人間が嫌いと言っていいだろう。
その心をある存在が救う。そういう話です。

綺麗は汚い、汚いは綺麗ではないが、
全ては表裏一体で人間は誰しも醜い部分もあるし、綺麗な部分もある。

2キャラとも最後の台詞は「ありがとう」なんですよね。

ナユ
体が弱かった彼女。
生まれた事に、そして生きる事に意味があるのか?
そういう話です。
定番の話ですが、定番であるがゆえに普通に良い話でした。
出来ればミハヤルートの後にやって頂きたい所。
ミハヤが如何に甘えていたのかが分かる。

クオンルートはネタバレ抜きでは語れないので詳細は割愛。
ともかく全ては必然だったって事なんですかね。
このルートでのEDは少し納得がいきませんが、
(殻に閉じこもったように見えて)
世界もクオンも幸せにするというEDがあっても
良かったとは思いますが、それだとご都合シナリオになりそうですし、
たとえ神でも万能ではないって事でもあり、
不条理を受け入れる事こそも生きるって事なんでしょうかね。
またそれに負けずに生きるという事も。

このルートだとミハヤがすごく悪役に見えます。
不自由は楽、自由は苦というミハヤルートにも
繋がる話であり、過去の左近さんは
自分で考える事を放棄していた。
ここで業(カルマ)というか呪いを背負ったからこそ、
このゲームの話があるわけです。

クオンルートクリア後、各ルートに追加があり、
えちいシーンが追加されましたが、マジでなくてもいいなっ。
後付け感が大変なことになる。
何にしても良いゲームでした。