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tkktさんのCANDY GIRLの長文感想

ユーザー
tkkt
ゲーム
CANDY GIRL
ブランド
Le.Chocolat
得点
60
参照数
169

一言コメント

色々と挑戦的で斬新なゲームだった。ガワだけ見れば完全に「イロモノ」なんだけど、実際に読んでみるとガチ。3体のドールの数奇な運命を描いたオムニバス形式で、どれも悪くない読み応え。さらにそれらを上手く絡め合った構成も上手かった。まあ売値に見合ったボリュームじゃないけど。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

グラフィック(18/20)
 正直、絵ではないので何点つけるか迷ったのだけど、労力とか経費(スタジオなんかも借りたんでしょうし、ロケ地へ運んだりもしたでしょう)とか考えると、低い点つける気にはならなかったですね。ラブドールを着せ替えて、座らせたり立たせたりして角度整えて撮りまくって……って考えただけでも僕なら羞恥心で耳から出血しそう。何と言うか、お疲れ様です。


ストーリー(35/50)
 意外に練られていて面白かったですね。最初の選択肢でヒロインのみならず、主人公も選択されているというのが中々に斬新だった。つまり3体のドールとそれぞれに対応した3人の主人公の小話を読めるという構成ですね。ただの売春斡旋業の分際で「レディメーカー」などと名乗りイキってる人間の屑から、(内心はどうあれ)職責のため身を粉にして働く外科医まで落差があるのが面白かった。
 3つのお話はそれぞれ独立しているようで、実のところ繋がっていて、全部読めば全容が掴めるという構成になっています。ほんの少しのオカルトも混ぜつつ、基本はアンドロイドと人間の在りようを探る感じの比較的オーソドックスなテーマ表現となっていますね。愛とレディメーカー(笑)の関係性は厭世的というか、二人だけで閉じたような雰囲気がありますが、理恵と新米技術者の関係性は、お互いにこれから成長していく未来を示唆していて、主任や智子といった理解者にも囲まれ、開かれた雰囲気が漂うエンドでした。良い対比になっていて、きっとどちらのペアが正解・不正解と論じる類のモノではないのでしょう。
 そんなテーマの作中において、アリスと外科医の話は異色ではあったのですが、同時に出色の完成度でした。起承転結の全部が好きでしたね。古物店の奥にひっそり佇む、心に傷を負った人間にしか認識されないドール。彼女が見せる退廃的で甘美な夢に耽溺していく主人公。しかし幸福な夢はいつしか辛い過去をなぞる悪夢へと変化し、ドールへの不信と恐怖が渦巻く中盤。そして悪夢(試練)の先に待ち受けたカタルシス。最後に救済を終えたドールは店に戻り、再び眠りにつく。オカルティックで妖しい雰囲気を保ちながらも、優しくて温かい人間賛歌を描いた、非常に僕好みのルートでした。
 といった感じでですね、シナリオ全体を振り返ってみても、期待外れみたいなルートもなく、テキストも堅実で(やや硬いけど)読みやすい。バッドエンドなども納得のいくものが多く、アクセントとしてよく機能していたと思います。なのに微妙に点数が伸び悩んだのは、ひとえに短さ故です。マジで短いよ、これ。売値がハイミドルでこの短さはキツイわ。僕はDMMの遊び放題でやったから腹は立たなかったけど、定価で買ってたらキンタマに鈍痛が走るレベル。ライターさん間違いなく書ける人だろうし、もう少し長く読みたかった。とは言え、特に期待せずに物珍しさから手を出しただけだったのに、意外や意外、まさに古物屋(本作は2005年発売なので十分古物よねw)を覗いてみたら、思いがけない掘り出し物に出会ったような体験が出来たので、ラッキーということで。


エロ(5/20)
 愛1、アリス1、理恵2、智子1で合計5回。やはり値段考えるとしんどい。今よりエロ重視されてない頃のゲームなので現代の基準で量るのも気の毒ではあるのだけど。質も正直褒められたモンじゃなく、ボラギノールのCMみたいに静止画がコロコロと切り替わっているうちに射精。暗転してお終い。尺もハナクソです。女性器すら見えず(ラブドールだから実装されてるよね?)、精液描写も無しという、惨憺たる有りさま。


音楽(2/10)
 BGMは多分だけど3曲くらい? この時代ですから、音楽鑑賞モードなんて洒落たものも無いので確認は出来ず。一応イメージソングみたいなのがあるらしいんだけど、これもいつ流れたのか分からない。おま環だったら申し訳ないのだけど、作品内では流れないのでは? どこか外部サイトにあるんだろうか?


合計(60/100)