晩秋から冬のロンドンを舞台に繰り広げられる心温まるヒューマンドラマ。偶然だけど今の季節にプレイできたのはラッキーだった。
グラフィック(20/20)
何よりも204にものぼるCG総数に圧倒されます。物語のハイライトには必ず一枚絵が挿し込まれ、どころか同じシーンでも角度を変えたものとか複数枚用意されていることもあったり。外国の絵画や童話のような雰囲気に存分に浸れるのは大槍さんの画風も然ることながら、労を惜しまない姿勢によるところも大きいですね。立ち絵に関しても、チョイ役にも用意されていたり、この項目に関しては文句のつけようがない。
ストーリー(39/50)
まず、短編集の形式にしたのは非常に良かったと思います。物語の初っ端に某探偵小説をオマージュしてましたが、あの空気感なんですよね、この時代のロンドンのイメージって。登場人物や舞台設定は共通で、様々な事件に遭遇するという探偵小説の形式に倣った格好ですが、おかげですっと作品世界に入りやすくしてくれたような気がします。ちょっとミステリっぽい視点変換も冒頭に持ってきたりしてたしね。
お話の内容に関しては、童話的でしたね。怠惰で退廃的な御屋敷の住人たちがどん底から成長していく割と王道な筋。世界名作劇場みている感覚で読んでました。いや、実際共通だけで言えば、子供に見せても大丈夫な気がしないこともない雰囲気がそこはかとなくあったんじゃないかと。
お気に入りは第二話、七話、九話かな。
二話は上述のミステリ風味をそのまま引っぱった感じだけど、捕まえて警察に突き出そうとかはせず、だけど無抵抗でもなく、彼等らしい解決だったかな。人が良いけどチャッカリもしているっていうか。
七話はニナちゃんの過去話だけど、ロンドンの暗部を担った(ニナだけに)キャラクタだったんですよね。雨を小道具として使っている辺りもこの街ならではの表現だよね。死別と離別と再会と。雨もそう捨てたもんじゃなくて、OP曲の「ノーレイン、ノーレインボー」ってのは彼女を念頭に書いているのかも。
九話はアルフ翁の強さと優しさ。死期を悟りながら、おくびにも出さず、マシューに己の半生を教えることで執事としての姿勢を示した。リタちゃんには重荷を背負わせてしまう形になったけど、同時に強い感情の発露を促す契機にもなったわけで、後に彼女の個別で人間らしさを取り戻す一助になったことを思えば彼の深慮だったのかな。少なくともリタちゃんの欠陥は見抜いていたでしょうね。
幕間に関しては微妙。何ていうか、ここは史実どおり、ここはフィクション、って一々説明されると、興醒めしかねない。聞いてもないのに言い訳されているような感覚というか。用語解説だけに留めておいて欲しかったです。
共通の空気が居心地良すぎて、個別でマシューとヒロインの話に移行してしまうのが何か寂しくて、無理に恋愛とかセックスとか入れなくてもいいじゃん、って思ったけど、これエロゲだったわ。メインの二人が屋敷を飛び出す結末ってのは意外だった。
エロ(8/20)
劇の中の一部、って感覚が強すぎましたね。股間を意識するような空気感になれなかったというか。マシューとヒロインのセックスって意識しか持てなかったというか。シーン中に彼の声もバッチリはいってるし。
音楽(10/10)
一話ごとにOPED入ってて何度も聞くことになるんで、何か刷り込みっぽくて納得いかない気持ちもあるけど、まあでも良い曲だよ両方。BGMに関しても牧歌的なものやエレガントなものが揃っており作品の雰囲気にマッチしていた。
合計(77/100)