期待外れでした。全クリして改めて見返しても意外性に乏しい、追う楽しみが少ない単調なフローチャートだなという感想が一番に出てきてしまう。もっとエンド増やそうぜ。
グラフィック(17/20)
単独原画ながら多くのサブキャラにも立ち絵が用意されていたり、中々の作業量。ただそのせいで作品ボリュームに対してCG枚数がやや少なく感じる。キャラデザは静さんが一番好き。ついでクローデットかな。背景に関しては問題なし。
ストーリー(26/50)
箇条書きで。
・強すぎて賢すぎる二人
今作の主軸となる主人公とアリスはとにかく間違いません。こう書くと非常に有能でストレスフリーで良い事のように聞こえるかも知れませんが、実はこれがかなり厄介な設定になってしまいました。バッドエンドを迎えにくいんですよ、この二人。今までの桐月作品の主人公は多少の異能を持っている場合もありましたが、基本的には等身大。特別な強さを持たない人を動かしていたワケです。つまり少し行動を間違えば、あっさりとご臨終します。それが今作のソウジ君はむしろジョーカー。彼にデッドエンドを迎えさせようとしたら、相当な役者(作中の実力だとセツナちゃんくらいでしょうかね)を配さなければ辻褄が合わないことになるんですよね。
そしてそんな彼のブレインがまた超優秀で、間違った行動を取ろうにも、先回りして押し留めてしまう。ここまで揃えると本当にバッドエンドは厳しい。ストレスフリーの代わりに緊張感を失う書き方ですよね。特に直近のシュミラクルを楽しんでプレイした方だとピリッとしないでしょう。このプロットは、メーカーさんの側がブランドイメージ的に真っ赤っかCGはやめてと言ったのか、桐月さんの方が慮ったのか、知る由もないですが。
また緊張感の欠如もですが、一言に書いたように、単調なフローチャートを形作った遠因にもなってます。パズルが組みあがるのを見ているような楽しみが無く、どっち選んでも合流してしまう選択肢ばかり。共通のバッド(?)とノア、アリス個別内の会長エンド、最後の選択くらいか。フラグメントもシナリオから切り離したエロシーン補完の用途だけになっていて、別視点からのシナリオ補足になっていないし。唯一クレイジーサイコレズの心情描写だけ補完されていますが、クッソ要らない。普通に考えてジーナの成り立ちとかでしょう、補完するなら。
・バッドエンドも口頭説明
そしてこれらのエンド数の少なさが、説明大会の開催につながるワケです。つまり自分たちの行動の妥当性をツラツラと、本当にツラツラと、口で説明してくれるんですよ。だって別エンドで見せないから。間違った方を見せてくれて、「あ、こっちは行き止まりなんだな」とフローチャートで確認出来たら、何よりそれが反対の(正解の方の)行動の妥当性の証明になるハズなんです。千言万語を尽くすより、一度視覚でパッと見せてくれた方が何倍も分かりやすいし、それを効率的に出来るのがフローチャートシステムの強みのハズですが。
「私たちはこういう選択をしたけど、多分あっちはダメだったろうね。というのも……」という説明を、派閥の仲間が後から合流したらその子にも重複した説明を、プレイヤーが忘れた頃にもう一度最初から説明を、隙あらば説明を……。ダルいっす。桐月さんの他作品でもやや理屈先行な書き方が見られることはあったけど、これはチョット。
・放置されたパズルのピース
こっからは少し別の切り口で(結局ダメ出しなのが辛い所だけどw)。
過去の優等生アリシア、島の東端の旧市街あたりは、本来はシナリオの本筋に組み込むつもりの設定だったんじゃないかと推測しています。特にアリシアに関しては、その元従者であるノエルさんにシーンがありながらルートが無かったことから、そうなんじゃないかと。アリシアは過去の巫女選定に関わりがあった人として使うつもりで、その派生でノエル攻略を、というのが本来の構想だったんじゃ? という気がしてなりません。それを時間か容量かは分からないけど、とにかく問題があったので削った。そして半端なエロだけ数合わせで取り敢えずぶち込んだ。……まあ全くの的外れかもしれませんが。
・大山鳴動して鼠一匹
いよいよのオーラス、アリスルートは中盤くらいまでは良いんですが、終盤の「設定を羅列しました」に近い詰込みは酷過ぎます。「ああ、アレはそういうことだったんだ」と伏線が繋がることはなく、そもそも他の個別ルートでロクに伏線なんか張ってないし、正直口がポカーンとなる新事実が矢継ぎ早に開示されるという体たらく。
しかも最後に委ねられる選択肢もヤバい。現状は二千年後までしか続かない世界か、神の手を離れた事で明日壊れてしまうかもしれない世界、どちらかを選べと言われます。ノータイムだよねwこんなもん。だって俺、二千年後生きてねえしどうせ。それどころか、「地球温暖化でこのままだと二千年後に地球は滅んでしまうかも。未来の世界のためにエアコンの使用等を控えよう」とか言われても使うよね。だって寒いもん。腹冷やしたらウンコ漏れるよ。屁だと思ったらウンコなんだもん。
だけど正史はどうやら後者の世界を選んだ後ということらしい。その理由はアリスが島に縛られてしまうのを嫌ってということらしい。……我慢せえや、贅沢か。つーか別に姫神家に未練なんて毛ほどもないし、姉も島に居るんだから何の問題があるのか全く理解できなかったんですが。なんか俺読み落としてるかなーと感想書いてる今でも不安になるほど説得力が感じられません。
そしてそして。別に後者を選んだ後も特にどうということもない。世界がカオスになったりとかは無いらしい。せいぜい学校が無期限の休校になったことで、先生やノエルが路頭に迷いそうという事くらい。明日をも知れぬ世界(失業)とかやめてあげて。
・クローデットが可愛い
最後の良心。格闘系主人公への変更が一番いい形で結実したのが彼女のキャラかな。共通内でタカビーお嬢を助けて惚れさせるってのは、やっぱ個人的にすごい好き。つまり共通ルートは(説明過多な所を除けば)だいぶ好きな部類で、それが一応ギリギリ見れる点数に留まっている主要因です。また彼女以外でも、俺ツエーが結構爽快だった箇所も多くそこも加点。彼の強さを損なわないままマルチエンドを書ければなあと思いました。ユーリエのルートとかは書けそうなんだけどね。
・総評
やっぱ桐月さんは単独で書いてこそ光るライターさんだわ。他ルートにも伏線を散らして、だけどそのキャラたちも駒には成り下がらず魅力を残したまま。そして最後のルートで伏線を回収するという手法の作品で評価を得てきた人なわけだし。また作品全体に妖しい雰囲気を漂わせる「雰囲気ゲー」としての側面も持ち合わせたモノを作らせてこそ。今回は色々と魅力をそいじゃった感じ。まあただ新しいタイプの主人公像を試せた事で、次作以降の引き出しになればと願います。
エロ(18/20)
メインが四回ずつ。サブが三人一回ずつ。ただサブの出来は悪く「ノアちゃんの褐色ちっぱい見せてー」と買ったら地獄を見せられる仕様。
また全体通して卑語が少なく、ロイヤルガーデンより質が落ちているという謎。キャストを考えれば、絶対今作の方が卑語入れやすそうなのに。喘ぎに濁点がついている箇所が散見されるのも好みが分かれそう。ただ今作もおっぱいは健在で尺も長めということで、概ね満足ではありますが。
音楽(6/10)
ボーカル曲は二つ。OPともうひとつは何故かエンド曲でなく挿入歌になっています。ホント挿入歌好きだな、このメーカー。ただどっちの曲にしてもアマカノがチラついて仕方ない。声優さんは結構いろんな人使うのに歌手さんは固定ですよね。ちょっとマンネリ。
合計(67/100)