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tkktさんのあなたに恋する恋愛ルセットの長文感想

ユーザー
tkkt
ゲーム
あなたに恋する恋愛ルセット
ブランド
UNiSONSHIFT
得点
74
参照数
697

一言コメント

セックスしてお菓子作るだけ。正解はエッチ後製菓。ルセットに忠実な仕上がりは評価するべきだとは思うけど、シリアスを恐れるあまり、キャラの感情や思考に不自然さを感じる箇所もチラホラと。柚姫・ののかルートは酷評になるので好きな人は閲覧注意。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

グラフィック(19/20)
 素晴らしいお仕事だと思います。ぬいぐるみを思わせるような柔らかで丸っこい輪郭の女の子たち。そんな彼女たちが台詞を話している最中にもコロコロと表情を変えていく。見ているだけで癒されますね。SDも可愛かった。適宜挿入されるお菓子の絵まで可愛い。背景絵は普通。絵の技巧とかは僕には分からんけど、存分に「可愛い」を表現しているので非常に好印象。


ストーリー(31/50)
 もう少し良い点をつけたいな、という思いもあるんだけど……ここら辺が限界かなー。まあ正直、だいぶ眠たくなるんですよねwフックソフトとかも起伏の無い日常恋愛を書くけど、あそこは恋愛感情を抱くまでの過程、積み重ねが凄く丁寧だから半寝くらいで済むんだよね。そして、一応はルートごと、キャラごとでその過程や積み重ね方ってのが違う。だけど今作はどのルートも個別に入った時点で主人公もヒロインも半自動的に好意を抱いている状態なんだよね。加えて、デートの場所も、初エッチの入り方も、大体同じで、進み方も差別化が少ないっていう。それこそ菓子作りみたいに、キッチリ計量してマニュアル進行みたいな。
 とはいえ、当たり前ですが話全体が同じというワケではなくて、キャラごとに違う穏やかな起伏は作っています。美絵瑠ルートは両親を思い出の菓子で笑顔にする。ののかルートは大会を通じて自身の菓子作りへの取り組み方を見つける。柚姫ルートは海外留学で離れ離れになる。楓花ルートは将来の夢と主人公との時間。と言った具合ですね。ただ、この起伏に際したヒロインと主人公の心模様において納得しがたい箇所が散見された事について、僕は大きめに減点しています。柚姫・ののか各ルートをやり玉に挙げて具体的に書いていきます。
 ヒロインの海外留学(というか主人公と他ヒロインたちとの共同体から一人抜けていく展開)自体もともと好きじゃないけど、応援できる要素・納得せざるを得ない要素が無い状態でやるソレとか論外ですね。唐突に降って湧いた留学話に、特に大きな理由もなく了承、会いたくて会いたくて震える、という顛末。いやいや。彼女の一応の理由付けとしては、学園長に直々に指名された栄誉と期待を裏切りたくないから、らしい。どの国に何をしに行くかも書いてない。つまり、トップの為、学校の栄誉の為、恋人を郷里に置いてでも、他国へ単身上陸するという事らしいですね。第二次世界大戦かよ。泣いて嫌がるくらいなら行かなきゃ良いじゃん。それこそ赤紙が来たんじゃないんだから、いくらでも断れるでしょう。なんで主人公との時間<<<学園長になってんの? なんで恋人なのに知り合いのオカンに負けてんの? 主人公も主人公で、「柚姫が決めたんなら止めない」ってどういうこと? なんでスッと行かせるの? 本当に君ら恋人同士?
 つまり、そういう事っすよ。衝突させるわけにはいかない(シリアス徹底排除の作品コンセプトに抵触するから)けど、海外留学は話として入れたい。だったらスッと行かせようっていう。確かに衝突はしないけど不自然極まりないよね、これじゃあ。好意自体が疑わしくなってしまう。
 例えばさ。柚姫の家が貧乏で、オヤジさんもハゲてるからあまり働けない。そういう事情を酌んで奨学金で通わせてもらっているから学園長には義理がある、とかなら分かるけどね。或いは留学経験を武器に良い会社に行って沢山稼いでオヤジの髪を生やしてやろうとかさ。それなら納得できるよ。家族の事とか義理人情の事だからね。ウガンダでもグアテマラでも行ってくるといいさ。或いは、どうしても別離展開を入れたいんだったら、もとから柚姫を外国籍の設定(見た目的にも違和感ないしね)にしておくのも手だと思う。最初から別れ展開が予測できれば唐突感や理不尽な印象は受けないよね。人気も出ないだろうけどwでも、まあ納得は出来るじゃないですか。「ビザが切れる」って言われたら「亡命して」とは中々言わないですから。第ニ次世界大戦みたいになっちゃうし。
 続いて、ののかルート。大会に負けるのは別に良いんだけど、彼女の悩みに全く主人公が絡めていないのは、やっぱ微妙。まあ彼女が悩んでる間、スマホ弄ってテレッとしてたワケでも無し、一応フライング祝勝会の準備をしてたんだから、不快感とかは無いですけどね。「予選くらい勝つっしょwwメインヒロインだし」とか俺も思ってたし。まあでも春馬君は俺じゃないからな。一番近くに居るべき人だから、彼女が悩んでるんだったら、共有して一緒に道を探す書き筋にして欲しかったですね。
 これまた素人考えの作例で恐縮だけどさ。例えば父ちゃんがハゲてて長時間労働出来ない所為で家が貧乏な女の子が居たとして。ひょんなことから知り合ったその子の誕生日と予選当日が被ってしまって、悩んだ末に(春馬くんも手伝って)女の子のお家にケーキを届けてあげる、みたいな。そして女の子の輝くような笑顔を見たり、親御さんの輝く頭を見たりして、「やっぱケーキってのは誰かを笑顔にしてナンボだな。大会とか利己的なヤツは人間の屑」みたいな結論に落ち着くと、色々読後感も良いよね。予選落ちするよりは。
 まあ悩んでグジグジするところとか、春馬くんも含めて余裕がなくなるような描写を入れると、例のシリアス徹底排除のコンセプトに抵触するって判断なのかなー。うーん。
 さて、ここで終わったら本当に酷評だけなんで、良かった方の二人のルートも書いておきます。
 美絵瑠ルートは、まさに誰かを笑顔にするお菓子という使い方でしたから、普通に評価できますね(これをののかルートでやってあげたら良かったんじゃないかなwとも思うけど)。また両親の思い出のシュケットを作る為に尽力してくれる主人公に想いを募らせていく展開は、好意の自覚過程が全ルート中一番丁寧に感じました。最後やっぱり海外に行ったのは良く分からないけど。
 楓花ルートは洋菓子中心の部活で和菓子をどう活かすかみたいな技巧的な話が見たかったんだけど、ちょっと意外なモノが出てきたね。ミスコンへの考え方は萌えゲーマーの独占欲を大変よく理解してくださっている素晴らしい演説だったよね。NHKで流した方が良いよ。将来の展望と店の後継と主人公との時間を天秤に掛けたり悩んだりしている楓花を主人公も共有し支えてましたね。ののかルートもこれで良かったんだけどね。ルート終盤、偶然訪れた一日同棲イベントで主人公への気持ちを再確認し、「私はあなたと一緒に居られたら、それでいいんだ」という結論に至る。最後の一枚絵がテレビ電話だった人は見習った方が良いんじゃないですか? 楓花ちゃんは単純に体目当てで最後に攻略したんだけど、話としても一番好きでした。
 ののか・柚姫の方が気合入れてコンセプトでカチカチに固めて作った感じがするけど、実はこっちの方が人間の自然な心情や行動(悩んだ末に相談したり決断したり)が描けてなくて、ただただシリアスを避ける事に腐心した印象しか無いんよね。で、逆に春馬君と二人で悩んで等身大の結論出したルートの方が(個人的には)良い話運びに感じられる。そう考えるとシリアスを怖がり過ぎない方が良いのかもね。作る側からすると、お前らがうるさいから、こう作ったんだろうって反論があるかもだけど。萌えゲーでどこまで受容してくれるかは人によるし、受容してくれる人でも、そのシリアスに説得力が無かったり、解決が雑だったり、カタルシスが無い場合は「クソシリアス」として批難する人も居て、もう面倒だし全部なくそうって気持ちもわかるけど……まあ難しいね。


エロ(16/20)
 各5回。卑語は壊滅的。体位は悪くない。服装もバラけていて嬉しい。おっぱいが美味しそう。中出しオンリーなのも嬉しい。それなりに使えた。何かにつけお菓子に例えようとするテキストが読みにくかった。エロシーン中にやられても上手い事言えてるか判定とか出来ないから。そういうターンじゃないから。


音楽(8/10)
 まあまあ。ボーカル曲はEDのロックバラード調のヤツが好き。BGMは全体的に可愛い。「ほいっぷほいっぷ!」と美絵瑠の専用BGMが特に可愛い。本当BGMまで可愛いんだよね。ストーリーは言いたい放題書いたけど、良いゲームだよ。とにかく可愛いゲームって総評かな。


合計(74/100)