ミドルってやっぱ難しいよね。ローなら短編と割り切れるんだけど、ミドルはそこそこの規模のお話できちゃうから、読んでる側もついフルプラの感覚になって相応の描写量を求めがちだけど、でもやっぱりそこまでの尺は無いんだよね
グラフィック(18/20)
それにしても血飛沫CG多かったすねえ。ここぞの場面ではキチンと印象的な絵を入れてくれるので、逆に言ったら一つ一つがネタバレ満載なのでOPムービーに入れるのはやめて欲しかったですねw背景に関しても値段を考慮すれば質・量とも十分でしょう。
ストーリー(40/50)
※がっつりネタバレしています。未プレイの方はバック推奨です。
※黄昏のシンセミアに関しても少し触れます。
まあ現代人の忙しさを鑑みれば、恐らくはこういうミドルやローは今後増えていくでしょうから、こっちもそういう尺を読むのに慣れなきゃいけないなあと思う今日この頃。実際、桐月さんもかなりそこらへん意識して書いていると思われるのが、静と動を繰り返して染み入るような恐怖や妖しさを表現するのではなく、動的な展開を矢継ぎ早に見せて、常に緊張を孕んだサスペンス調に近い書き方をしている所ですね。前者の代表例がシンセミアで(夏の何でもない田舎の一日を見せるフラグメントとかもあったよね確か)いわば余白、アソビの部分が秀逸だったわけですが、勿論あんな超長尺と同じ書き方が出来るわけが無いですから、当然のシフトですよね。
ただどうにも一言いいたくなるレベルの削減も多々ありました。それは何か?ここまで読んでくれたら分かりますよね。そう。桜乃ひよ成分です。
桜乃ひよ(天才)という声優さんですが、甘く掠れた優しい声音で、独特のポヤポヤ時空を生み出す彼女を、屋敷外に属する、いわば日常の象徴を期待される美優ちゃんにキャストするのはファインプレーとしか言いようがないですよね。美優ちゃん自身もちょっとオトボケた所のある癒し系で、主人公も彼女の仕草に和まされるというような主旨のモノローグを吐いたりしています。正直、描写を重ねたら相当可愛らしいキャラに仕上がったでしょう。だというのに……なんですか?あのエンドは?「この作品に安全地帯とか無いから」というのを知らしめる為だけに配された役なんですか?まあ実際のところは、紅から見て一番手ごわい相手で、だからこそ容赦のないやり口になってたのかなとは思います。悪感情を抱いてくれない、言ったら一番主人公に近い精神性の娘で、バランスブレイカーにも成り得るという所で早期退場だったのでしょう。
その他のヒロインに関しても、やはり日常の中で見せてくれる可愛らしさが足りず(零なんかも良いキャラの片鱗が随所にあったけど)勿体無いなあと思わされる。
それに付随して、恋愛描写もやはり弱くなってしまったのも残念な所でしょうかね。
他に気になった描写不足ですが、一番はやはり紅に関してですね。数百年の孤独をもう少し丁寧に書いて欲しい。鏡の役割を果たしながらも、少しずつ疑問が蓄積し、良心の呵責が芽生える様を描写して欲しい。和葉ちゃんのバッドあたりで、罪悪感を覚えるような独白がありましたが、弱い、少ない。またシンセミアの話して恐縮ですが、ここらへんフラグメントとして外出しして書く隙の無さも、どうしてもないものねだりしてしまいます。
現状、紅が非常に簡単にしおらしくなったように見えてしまいますよね。しおらしいも何も、主人公の心根の優しさをそのまま写しただけでしょ?って言われたらそうなんですが、頭ではそうとわかっても、感情的に許しにくいと感じる人も居ると思います。やっぱり敵対ヒロインって難しくて、ヘイト散らさないと可愛さに昇格しないんですよね。前述のような苦しい過去や良心の呵責を納得できるレベルで書いてくれれば素直に溜飲を下げれるんですが。
正直途中まで零を救済するストーリーだと思っていたし、実際その方がノッた気がします。
だいぶ書きましたが、一体どこまで描写出来たのにしなかったのか、コストや諸々の事情から書けなくて削ったのかが、読み手側からは伺い知れないので、難しいところですね。
総括すると、不満は上の通りですが、でも普通に面白かったですよ。良い所も沢山ある。「未来の羽」で主人公に紅の追体験をさせ、キチンと零ちゃんに仕留められるまで描いたのは流石だな(メッチャ上から目線すんません)って思いました。これ以外にもビターエンドの上手さは随所に感じました。(美優ちゃんの出番が少なすぎる以外は)実際のプレイ満足度は高いです。
エロ(14/20)
美優ちゃんだけ一回(半ギレ)で他のヒロインが二~三回。尺は短め。まあ見所としてはお人形さんに逆レイプされるところくらいか。Mシチュ好き以外は実用度は高くないと思います。
音楽(10/10)
BGMも作風に合わせ、穏やかなものは少なく、焦燥や不安を煽るような曲調のものが多くて印象的でした。楽曲もあざといくらいに作品の象徴的な場面やキャラの心情などを綴った歌詞で、あかべえらしさだよね。できないわたしが~とかもそうだったけど、ここら辺は本当に上手いなって思う。後から聞いてゲーム内容思い出せるもんね。
合計(82/100)