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tkktさんのまいてつの長文感想

ユーザー
tkkt
ゲーム
まいてつ
ブランド
Lose
得点
84
参照数
740

一言コメント

演出やグラフィック面は素晴らしいの一言。シナリオは対比で妥協や粗が目立つが、主題は概ね書けていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

グラフィック(20/20)
 ヒロインたちが可愛いのは勿論、背景だったり、口頭説明でわかりにくい箇所に図など、そこまで描いてくれるんだってくらいの熱量。ただ一点だけ、グランドの路子たちはCGが欲しかった。


ストーリー(39/50)
 まずOPムービーにもあったけど、この作品が目指したのは癒しの物語らしい。いわゆる日常ゆるふわ系の癒しじゃなくて、カタルシスを伴うそれなんだと思われる。
 共通では優しい空気感の基礎を丁寧に作っていました。迷いながらも前を向く子供たちと、時折厳しくも優しく見守る大人たち。こういう優しさは物語の最後まで底流にあり続けた。ライターさんは前作ものべの(無印のみコンプ済)でも雰囲気作りの技巧に感心させられた記憶があります。主人公に関しては、とにかくうるさいロリコン眼鏡から、落ち着き払ったロリコンインポへと改善されており読みやすかった。
 悪かった点を挙げると、共通に限らず全体通して言えるんだけど、政治経済系の話になると途端に妥協が見られたのが痛かった。解決策らしきものを見つけると、暗転を挟んだ後、すべて上手く行った後の世界になっているという具合で「え!?」ってなること数度。そりゃまあ全部克明に書けば「プロジェクトX」の領域になってしまうんで程度モノだけど…。まあスケール大きくしすぎたのかね。ちんまり機関車だけの話でも十分癒しは書けたんじゃないのかと思わなくもない。
 その論拠としては、ハチロクルートの出来が素晴らしかったのがあります。加害者と被害者が、或いは被害者と加害者が互いのキズをさらけ出し、支えあい、宿業のあの日の橋を乗り越え、二人のカタルシスを完全に同期させた様は素直に胸を打たれました。結局このルートが作品のハイライトとなってしまった点を鑑みれば、大正浪漫ゴリ押しで良かったんではと。
 雛衣(ポ)ルートに関しては、何とか及第。少しの勘違いもあったが、二人の出会いは互いに救済となっていた構成は癒しの観点から見ると、ハチロクほどの感動はなくとも一応は納得できるものがあった。
 が、ヒビキちゃんルートは厳しい評価をせざるを得ない感じです。彼女だけは大きな傷を持たず、主人公のカタルシスにも寄与しませんでした。寧ろ抜け殻同然だった幼少の主人公に甘え頼るのみの存在であり、ルートを通しても成長は見られず、最後の回想列車の辺りなんて「みちこ勝手にどこ行くん?」状態でした。
 まあまずもって、話の展開も良くなかった。本当は(ポ)でやったような御一夜の資源を地道に探訪しようってヤツは一般人かつジモティー(死語)のヒビキちゃんこそ適役だったかと。ただそれを雛衣さんで使ってしまったものだから、かなり無理筋の展開へ。共通あたりから政治経済方面へは期待できないのはわかっていたけど、にしても酷いよ。女学生ふたりが市長選の最有力候補って…。しかも最後の直接対決の答弁で彼女はキサキちゃんの具体的なビジョンを示せという言に、さんざ詰まった末に、すごくふわっとした性善説めいた答えを返します。「御一夜の人たちを信じます」うーん。実はここに至るまでも彼女の不覚悟って目立ってて、そもそも立候補時点でも「一度ゼロにして誘致反対か賛成か考えます」て話だったんだよね。ポーちゃんの地盤を引き継いで、今更なに言ってんの状態で、しかも特にイベントもなく、気付いたら何となく反対派になってたっていう。ルートをまとめると、何となく主人公の傷は癒されていて、何となくヒビキちゃんは市長になってた。主題は弱すぎ、成長物語としても難しく、勿論政治モノとしても見れず。
 まあ色々書きましたが、なんだかんだハチロクルートは王道だったし、スタッフの愛を存分に感じる演出面(愛が重すぎてちょくちょくバグ落ちしましたがw)や目新しい題材など、総括としては「やって損は無い」かなと思います。


エロ(15/20)
 メーカー側も無乳から巨乳を取り揃えた辺り、どっかの層の満点より、万人の70点くらいを狙ってたのかな。エモートに関しては(比較対象は「春風センセーション」)乳揺れが弱かったり、ヒロインの体や双鉄くんの連結棒が不自然に痙攣してるような動きを見せたり。まあ十分すごいんですけどね。


音楽(10/10)
 鉄道関連のBGMは荘厳。楽曲に関しても、これだけあればどれかは琴線に触れるものがあるかと。個人的にはレイルロマネスクとヒビキEDが好き。


合計(84/100)