時代物の雰囲気が心地よく、キャラも生き生きとしているので、読んでいて楽しかったです。シナリオ自体も大きな失点なくまとまっていたので普通に良作判定ですね。一途な世話焼き恋女房の逆裟が健気で可愛い。短編に言っても詮無いけど、もう少し彼らの過ごす日々を見たかった。
グラフィック(18/20)
キャラデザは凄く良かったですね。逆裟の髪の毛の描き込みは素人目にも大変そう。着物デザインも中々に凝っていましたが。水澄も妖怪っぽさを強調しながら女の子のフォルムも残しつつという絶妙な匙加減のキャラデザ。河童右衛門の盗賊衣装にも細部までこだわりが感じられる。そんな彼女たちの一枚絵はどれも美麗で印象に残るものでした。背景絵も悪くはないです。
ストーリー(35/50)
大江戸浪漫にドップリ浸れるほどの深みはない(そもそも短編の尺では厳しい)ですが、時代劇×妖怪奇譚という純和風の組み合わせだけで個人的に丼3杯くらいはいけますね。ていうか意外と少ないんですよね、こういうヤツ。あっても妖怪が絡んでくると凌辱モノになったりするので、純愛かつ妖怪の方がヒロインというのは更に珍しいのかなと思います。新鮮で魅力的でしたね。というワケで、そんな彼女たちに焦点を当てる形で、久しぶりにキャラごとに分けて感想を書いてみます。
・水澄
ブランド自体がモン娘推しということで、この子の方がメイン格になるんでしょうかね。まあ如何にも妖怪って見目形ですからね。中身の方も(元人間の逆裟と違って)生粋の妖怪として描かれていました。人間とは付かず離れず、というスタンスで、河童右衛門として彼女なりの勧善懲悪を実行しています。人の法や決まり事には我関せず、で行けるのは妖怪の立場だからこそですが、改も内心では羨ましく思う事もしばしば。
個別ルートでは殺人の汚名を着せられた河童右衛門の為に奔走してくれる改に(元々骨のある人間として好いていたが)惹かれていくという展開。ここら辺の機微は改だけが水澄=河童右衛門と気付いていないからこそ、彼の本音が響いた感じでしたね。そして何やかんや(逆裟のアシストなんかも)あって恋仲になった二人。水澄はこれまで無理だと決めつけていた妖怪と人間の共生について真剣に向き合う事になります。話の内容的にもやはり本作のメインヒロインは水澄の方かなって思います。そして彼女の一族の過去と町の秘密が明かされ、その力を悪用しようとする不逞の輩を懲らしめて一件落着。水澄の祖先を騙したのも人間なら、河童右衛門の為に手を貸してくれたのも人間で。油断も不信もしないで、上手く調和を取りながら、今度こそ町の創設理念(妖怪と人間が共に暮らせる町)を叶えて欲しいですね。
恋愛方面に関しては、一応は処女な感じには設定しているようでした。何年生きているのかは明記されていませんでしたが、恋人は居なかったようですね。ただアナル舐めや足コキなどのシーンでは手慣れているような描写が多く、また妖怪の設定(人間の精気が活力になる的な)も鑑みると、非本番は経験豊富なのかなといった感じです。ケツ舐めたことあんのかよ? 誰かのよ(嫉妬)。ていうか奔放を旨とする性格なのだし、無理に処女にする必要もなかった気がしますけどね。
・逆裟
彼女は水澄とは逆にピュアピュアな感じでしたね。共通ルート内で改から搾精する際も男性器を見るのは初めてだと照れていましたし、あざといっすね。生前は病気がちだったそうで、恋愛はおろか友人すら真面に作れなかったでしょうし、そんな彼女が死後、自分の簪(これが精気の代替になる動力源らしいです)を取り戻すために奔走してくれ、あまつさえ父との絆も繋ぎ直してくれた優しい家主に惚れ込むのは必然ですよね。そこからの共同生活は、振り向いてくれるまで一途に待ち続け、水澄に掻っ攫われないか冷や冷やしながら、甲斐甲斐しく改の世話を焼く日々。乙女全開でとても可愛かったです。
個別ルートは主人公がポンコツ化して徒に逆裟を傷つける展開に少々減点しつつも、水澄のアシスト(というか喝入れ)で溜飲を下げ、最後はキチンと謝罪と告白を決めてくれたので、許容範囲内。ただデートのやり直しはキチンと入れて欲しかったですね。それ含めイチャイチャの尺がもう少しあれば嬉しかったですが、物語はすぐに終盤へ。例の悪役さんのショボい目論見を打ち破ったまでは良かったものの、主人公の家に火を放たれ、家に憑く妖怪である逆裟は万事休す。建物自体はすぐに建て直しましたが、逆裟は中々宿ってくれません。ここら辺は、ちょうど彼女が恋焦がれていた時間を改も体感するような、忍び待つ恋に身をやつすような、巧い構成になっていたかと思います。
一応、悪役相手の立ち回りもあり、河童右衛門のルートで明かされる真相の伏線も張っていましたが、まあ主題は思いっきり恋愛でしたね。妖怪と人間の共生というテーマ表現の面でも、ストーリー上の真相担当という面から言っても、やはり水澄の方がメインヒロインなんでしょうが、そういう面倒なの全て放っぽり出してゴリゴリに恋心一本槍で貫いてしまう一途な女の子って大好きなんですよ。「超電撃ストライカー」のヒルコとかね。つまり僕個人の嗜好が大いに関係していて、贔屓目で点数を上げてしまっている部分は否めないんだけど。しょうがないね、好きな物は好きなんだし。やっぱ男は家を女に守ってもらって居てこそ安心して外へ狩りに行けるんだな、とか書くと前時代的だなって思われるかもだけど、前時代のお話だからね、しょうがないね。一言でも書いたけど、もう少し見ていたいなと思える世界でした。続編とか出ないかね。
エロ(17/20)
水澄8枠(うち挿入が4)、逆裟8枠(うち挿入が3)という振り分けで、3Pは無し。共通内はどちらからも非本番のアプローチ(という名の搾精)があり、個別に分岐すると当該ヒロインとの本番が解禁されるという格好。まあ量的には(4000円足らずの売値から言って)コスパは十分でしょう。プレイ内容も思ったほどはアブノーマルではないので、それでも人は選ぶとは思うけど、僕は大丈夫でした。ただ逆裟の方は構図的にどうしてもアクロバティックな体位が多く、難しかったですね。従って水澄の方が興奮度は高かったです。メス亀に挿入しているような心地でした。
音楽(10/10)
ボーカル曲二つが尋常じゃないクオリティです。亀とセックスするのは嫌だというシャイな方にも、歌だけは聞いて欲しいと思ってしまうくらいには。「秋月華」はゴリゴリの和ロック。雰囲気もリズムも大好物。「いたづらな恋」もED曲とは思えないくらい攻め攻めのロックバラード。歌詞も強いですね。「想い遂げられてなお熱く」というフレーズが、逆裟と改の再会を謡っているようで、グッと来ました。BGMも作風から外れたものは無かったと思います。
合計(80/100)