智代に幸あれ...
とにかく智代の強さ・弱さを垣間見ることのできる作品だった。
智代は河南子や鷹文、ともなどの自分の身近な者を守ろうとし、実際に守ることができる一方で智也やともが自分から離れていくことを強く忌避している嫌いがある。両親の仲が冷え切っていた坂上家で生活していたのだから、ともが本当の母親のもとで暮らすことがプラスになることは理解しているはずなのに智也に何度も諭され"お前のわがまま"だとまで言われている。智也が入院した際も手術させることを決断できず3年の歳月を要している。これらのはた目から見ると異常としか見えない智代の様子はCLANAD本編にて鷹文が自ら車道に出てしまったことに起因するのだろう。大切な者との別離を強く拒否する時として幼児のごとき智代の弱さと、かつてのように暴力に訴えず道に迷った者の背中をただただ押す慈母のような強さ。それら全てが智代の魅力である。
ラストシーンは智也が無事に治ったのか、それとも智代の妄想なのかは判然としない(永い眠りについたとあるが死んだとは明確に言われていない。EDでは智代が智也のリハビリに付き添っている描写がある)が後者であることを願いたい。