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tglさんのハルキスの長文感想

ユーザー
tgl
ゲーム
ハルキス
ブランド
戯画
得点
96
参照数
2170

一言コメント

魂のふれあいを描いた類まれなる秀作

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作「キスアト」が漫画風とすれば、今作「ハルキス」は小説風といえる作品といえる。
思いやり、心の葛藤、すれ違いなどの内面を深く掘り下げて表した優秀な作品である。

漫画風な作品と比べると、小説風な作品はプレイヤーの好き嫌いが激しく別れる傾向が強い。
この「キスアト」も同様の様子である。
そのため、本作「キスアト」は、小説を読み慣れない(長文を読むのが苦手な)プレイヤーは、
ゲームの良さを理解できるまえに脱落してしまうリスクが高い。

しかし、長文を読むのに慣れているプレイヤーは、シナリオに描写されている物語の奥深さ、
ヒロインの優しさ、魅力、嫉妬心を含めた可愛らしさ、などを発見し、感心し、満足することができると思う。

昨今の「イチャラブ」といえば、極めて表現力の浅いコミュニケーションしか描けていない作品が多い。
また、「イチャラブ≒身体的にベタベタする」としか理解していない者も多いようである。

「ハルキス」で描写されている主人公とヒロインたちのコミュニケーションは、
「心のふれあい」とでもいうべき内容であり、非常に微笑ましい内容となっている。
「身体的にベタベタする」シーンは少ないが、「想い人に対して甘えたいのに甘えられない」もどかしさ、
「普段は気高いのに、甘えることが許される環境になったら、子供のように変貌する可愛らしさ」などが丁寧に描かれている。
これも形を変えた「イチャラブ」と表現できるであろう。

別の表現をすれば「キスアトは学生生活を楽しむ作品」であるとすれば、
「ハルキスは人間模様に感心する作品」とでも言えるであろうか。

ゲームという娯楽作品では、今作「ハルキス」のシナリオは好き嫌いが分かれやすいため、
リスキーな代物であったかもしれない。しかし、良くぞ、シナリオに良くぞGOサインを出したものだと感心している。

また、このシナリオの魅力度を極限まで引き出している声優さんの力量にも脱帽したものだ。
「八住 伊月」役の有栖川みや美さん、「白石 葵」役の真中海さんの掛け合いは大変楽しめたものだ。


もちろん、残念な点も2点ある。
まず、妹ルートの内容は、個人的に肌に合わないので、最初はオールスキップで終了させ、
その後、イベントモードで、楽しめそうなシーンだけピックアップしてプレイした。

次に、ゲームをプレイしている楽しさの大きな要因の一つに「主人公の魅力」があるのだが、
本作の主人公は劣等感のカタマリで、魅力を感じられなかったことにある。
戯画の作品では、主人公が「勉強できない」「いつも追試」などの劣等生であることが多いが、
「秀才」や「凡人ではあるが予習、復習を行っている優等生」なども多用しても良いと思う。


前作「キスアト」と今作「ハルキス」の比較すると、総合評価では「キスアト」に軍配があがると思う。
しかし、「ハルキス」は食わず嫌いで避けるのは勿体無い作品である。