テキストを読んでいて、あまりの空虚さとそれを包み込む優しさに心が痛くなった。
何もない・何も変わらないと人生に諦念している22歳の大学生と、既に壊れている18歳少女とのボーイ・ミーツ・ガールな物語であり、2人が出会ったことで2人に変化が訪れたような、何も変わっていないような、曖昧な物語。
自分は本作を全編に渡って覆う、強い虚無感とそれを肯定する優しさがとても好きだ。「自分には何もない」という自己肯定感の低さ、「セックスできれば相手がどう思っているのかどうでも良い」という無関心さ、「壊れたものを借りて、壊れたまま返しただけ」という無責任さ、「今この瞬間に相手が・自分が満たされればその後どうなってもいい」という捨て鉢さ。このセックスに意味はないと考える虚無感と、そう感じてもセックスを止められない主人公を優しく描写するporori氏のテキスト。「自分を含めたこの世界のあらゆるものが空虚である」という諦念を、主人公からもヒロインからも感じた。一方で、無価値であると認識しつつもそれにすがるしか満たされない、矛盾する人間を優しく見守る眼差しを本作からは自分は感じた。ヒロインの持つ、求められると与えたくなる献身さと、自分が壊れていることに無自覚なほどの純朴さは、人を堕落させる泥沼のよう。空虚さを抱えることを肯定しゆっくり堕ちていく感覚は、プレイしていてとても愉悦だった。
数年前から「“静かなエロゲ”をプレイしたい」と思っていました。何をもって静かとするか自分でも分かっていませんが、本作は自分の中では間違いなく「静かなエロゲ」です。再プレイするたびに、お気に入りの静かな小説を読み返すような心地よさが味わえる、稀有で大切なエロゲです。