主観的に魅せられるのではなく、客観的に魅せられたゲームだと思います。
感情移入して泣いてしまうようなゲームでは無いと思いました。
あくまで一つの物語として、一つの事象として、問いかけられているようが感じがしました。
「眩しかった日の事・・・・そんな冬の日の事」
人生に諦めてしまった少女と、特に目的も無くただ日常を過ごしていた主人公。
もう終わってしまう人生なのだから、これから先に期待した所で悲しくなるだけと思っていた少女。
もうこのまま生を終えてしまうつもりだった少女。
ずっと前から病院で生活し、どこか味気のない色褪せたような世界。
これからずっと付き合って行くのは、目を閉じた世界であって、今ここにいる世界ではない。
と、自分に言い聞かせて殻に閉じこもって閉まった少女。
そんな少女が主人公と共に、もう残り時間が少ない人生を堪能する物語。私はそう思いました。
後一歩が踏み出せないセツミ。
なぜなら、今の自分が知っている以外の世界を知ってしまうと、この世界に未練が残ってしまうから。
とてももどかしかったんだと思います。このまま死に逝く自分に。行動に移せない自分に。
そんな時に主人公と出逢います。無愛想ながらも、伝えたかったんだと思います。
「私を外の世界に連れて行って」と。
このまま7Fか家で死ぬのは嫌だし、諦めきれなかったんでしょう。
セツミにとって主人公は7Fという籠の中から開放してくれる希望でした。
最初は目的のない旅でした。でも、それだけでも十分だった。なぜならセツミにとっては"未知"だったから。
そんな旅の中で、花を見つける。テレビで見た、7Fで見たナルキッソス。
沢山の人が恋をしたナルキッソス。とても美しいナルキッソス。
主人公もセツミもナルキッソスに魅せられた一人だと思います。
そして惹かれるべく、名産地である淡路島を目標に走ります。
犯罪行為に走る事もありました。
その度に失敗し、追い詰められて行きます。
ここの描写は、主人公も7Fの住人である事を知らしめる為にも重要なシーンだったと思います。
免許を取ってからの初運転が今回の旅だった主人公はセツミに道案内をして貰います。
とても些細な事。でも二人にはその些細な事が、大きい事だと感じました。
最初はまともに口も聞いてくれなかった、話をすることが無駄な事だと思ってたセツミが主人公に対して積極的に話しかけてくれる。
これだけでも凄い進歩だと思うんです。
殻に閉じこもってた少女が、心を開いてるという事ですから。
犯罪行為、病気の進行などで追い詰められて行けば行くほど、二人の距離が近くなって行きます。
セツミの様々な一面を見ていくうちに、主人公も惹かれて行ったんだと思います。
明石大橋で写真を取って貰うシーンは、初めて二人に出来たカタチ。
見えない部分ではカタチがあったのかも知れない。でもこの世界で物質としての初めてのカタチ。
この世界に残せた、二人がいたと言う証明―。
初めての車の運転。初めてのナルキッソスが沢山咲いた花畑。初めての海。初めてのグラビアごっこ。
どれもこれもが初めて尽くしで、とても楽しくて、暖かくて、世界はとっても広くて。
主人公はセツミに免許証を―。
セツミは主人公にビニールの白い指輪を―。
お互いがお互いを忘れない為に。短い時間でも一緒の時間を過ごした証。絆。
「お前、今…引きとめてほしいか?」
「………………」
「それとも…背中を押して欲しいか?」
引き止めることには、責任が付いてきます。
背中を押すことにも、責任が付いてきます。
赤の他人ならこんな事は決めません。
相手を想っているから、相手の意志の尊重したいからこそ出てくる台詞ではないでしょうか。
「それじゃあ…さよなら…」
結局セツミは自殺を選んでしまいます。
でも、生きる事を諦めなくて良かったなって。7Fでも家でもない未知の場所に一歩足を踏み出して良かったなって。主人公に出会えて良かったなって。
きっとセツミは思ってたんじゃないんでしょうか。
死ぬことが必ずしも悪いことではありません。
セツミはこの旅で様々な事を知り、色んな経験をしました。
憧れていた事も出来ました。
彼と逢えなくなるのは、寂しいかも知れない。でも、後悔のない人生を送ることが出来たのではないんでしょうか。
このままもう後どれくらい残り時間があるかわからない。7Fか家で苦しみながら息絶えるかも知れない。
だったら、楽しかった・生きてて良かったと思える時に死ぬと言う事は、幸せな死に方なのではないんでしょうか。
自殺は必ずしも悪い事ではない。時間が止まったまま生きるのは、死んでいるのと同じ。
死にゆく運命ならば、幸せに笑って死んだほうが良い。
そういうメッセージを感じ取りました。
そう考えると、このゲームは"純愛物語"じゃないでしょうか。
自殺と聞くと悪いイメージを抱きがちですが、それは私の偏見だったのかも知れません。
客観的に見れるからこそ、自分の考えとは違った一面が見れた。そんなゲームでした。
拙い文章ですが読んでいただきありがとうございました><