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taruさんの装甲悪鬼村正の長文感想

ユーザー
taru
ゲーム
装甲悪鬼村正
ブランド
NitroPlus
得点
98
参照数
6778

一言コメント

面白すぎて何度口から魂が出かけたか分からない。ニトロ10年の節目に全く不足ない名作であろう。(ネタバレ感想は後半に隔離)→

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

とんでもない代物だった。クオリティもある、パワーもある、大物にも程がある。
どこに文句をつければいいのか分からない程のクオリティーを全体を通して保持しつつ、プレイヤーを楽しませる工夫に余念なく、根幹をなすシナリオの素晴らしさと言ったらもう言葉もない。
エンターテイメントとしても、アートとしても、非常にレベルの高い作品だと思った。
こんな悪魔みたいな作品とはそうそう出会えまい。ニトロは神か。

どうでもいいような不満点を寄せ集めて-2点としたが、それこそ個々を四捨五入していけば100点出てた。



っていうか奈良原さん恐い、恐いです。なにこのシナリオすげーよ。
善悪を詰めていくってのは大難題ながらテンプレなワケだけど、善悪相殺っていうテーマ?を設けてこんな話にしちゃうなんて。

こんだけボリュームあんのに全編通して非常にクオリティ高いのがやばい。
無駄な箇所とか無いでしょこれ。こんだけやっといてテンポまでいいとか。
多少は個人的な好悪あれど、基本的に抜け目なく面白かったなと。



本当に万人にお勧めしたい作品。それくらい面白かったし、それくらい良く出来てた。
触ってダメな人は勿論いるだろうけど、どういう人から拒否られるか、正直まったく想像出来ないのだ。もうダメだこれ、完全に村正に脳みそやられてるわ。

諸手を挙げて喝采させて欲しい。
制作スタッフの皆さん万歳、よくぞこんな作品を世へ送り出してくれました。






以下暫く空けてネタバレ感想―――
























ネタバレ感想というか各章別感想ですか。
キャラ別感想とか書きたいけど、そんなんいつ終わるやら。


【オープニング】
第一幕の濃さが異常。
雰囲気で過ぎてて濡れます。
物語の取っ掛かりとしては、世界観を理解させる力が不足してたのが気になる所?
銀星号が出てくるからいけないんだけど、まぁ話の筋として出さないワケにもいくまいか。

全編終わって振り向いて見れば、このゲームの空気が濃縮されている感じもしますね。



【第一編 鮮紅騎】
体験版やらないで本当に良かったと思える第一章。
開幕のぶっ放しっぷりが酷いw理解出来るのは二周目以降だが。
細かい伏線が多くあるので、二周目やってみると、けっこう印象変わったりする。
というか雄飛の
「何もやりたい事がないんだ→俺は、ずっと六波羅に怒っていた!」
という成長っぷりが、復讐編の後だと心を締め付けて仕方ない。
この作品のifを妄想するなら、雄飛生存パターンと護氏生存パターンだと思う。

鈴川先生が怪しいのは割と分かりやすかったけど、公式サイト参照もせず誰が主人公か知らない状態で始めた俺をよくかく乱してくれました。

↓佳境に入った頃の俺の心理
「ってか主人公めっちゃ優良健康少年だよ?悪鬼・・・?」

↓ラスト
「あぁぁそーいう事かぁぁぁ!!!」

でも真面目にびっくりした




【第二編 双老騎】
好感度ゲージ発動。え?何これ好感度?なんかやけに凶々しいような……
好感バーストした時は心底びっくりしました。効果音強烈過ぎる。

双子も良かったけど、ここでの主役は爺さん方。非常に味のあるいいキャラ達でした。
爺さん三人いるけど双老騎?右京とあとどっちかなと。
しかし敵方が爺さん爺さん変人(緑川)とか最高でしたな。
一条が微妙に空気読めないのが憎い、だが仕方ないか。ギャグパートは良かったけど。
「芸術的な回答です。困り果てました。」

しかし右京殿はどうやって金神様の所まで行ったんでしょうね。
水脈に乗ってたどり着けるんかな。鎧ない人は劔冑になれなくて金神様に食われちゃう(語弊)のかな




【第三編 復讐騎】
復讐騎というサブタイトルからこんな話になるとは予想できん。
突然レース始まって困惑しましたが、何かこれはこれでやたら熱くてヤバかったです。モーターレースちょっとは齧った事あるからちょっとは専門用語も解読出来たしね!
てか自分アベンジ大好きなんすよ、もう登場シーンから震えてしょうがない。先を知ってると涙腺決壊しかけるほど。格好よすぎる死ぬ。

――翼を下さい、私は空も風も鳥も裏切りたいのです――

なになんで詠唱してんのとかツッコミを置いておいて、この詠唱も凄い好きだし。
様々な犠牲をかけて目的へと奔走すること、父≒兄なことなど、微妙に伏線かもしれない要素もあったり無かったり。
いやまあお姫のCGが伏線か。

しかしそれにしても悪魔のz(ry




【第四編 震天騎】
アラハバキより銀星号の方が震天してそうだがどっちの事やら。
激戦苦戦、大死闘。銀星号乱入してからは色々メチャクチャだけど、それもまた良しか。

所長といい、ガーゲット少佐といい、ここでも味ありまくりなキャラが頻発ですが、ここで輝いたのはやはり雪車町でしょう。
乱入時のセリフから大分艶がありましたがね、ここにきて実は剣技の達人とかアツ過ぎるぜ。
そして金翅鳥王剣!インメルマンターン!!なんだその捏造!!格好良過ぎるふざけんな!!
反転する瞬間の格好良さは異常でした。
ほんと二トロはグリーンリバーの使い方知ってやがんな…

少年一家が汚染波食らった時はさすがに精神ダメージ来ました。今回の犠牲者役かと思ってたらもっと惨いとか聞いてないっす。

ただ最後はもうちょっと書いて欲しかったかな。
署長、一条、香奈枝それぞれがそれぞれの状況にあったワケだから、顛末の説明くらいあるべきだったかなーとか。五編は過去話だしさ。




【第五編 宿星騎】
ニッカリのこと……か?
まぁサブタイトルはいいとして過去編です。
統のキャラが際立っているが、これは英雄の物語じゃないのでありました、無念。
むしろ本家が格好いいよねとか思ってしまう俺は一体。

瑞陽(首領殿)は非常にいい味出してるキャラだったけど、デレはいらなかったかなぁと思ってしまうのは我がままでしょうか。あの服装で処女とか言われてもちょっとチグハグ感がよう。

「教えた筈だぞ光!戈を止めると書いて武の一文字!」
「否!!戈にて止むと書いて武の一文字!!」

この問答、どっちに感情移入したって事もなく痺れた。

にしても疑問だったんだが、悪意も害意もなく人を殺したなら善悪相殺起きないの?
どうも二世の善悪相殺は三世のそれと違う気がしてならん。




【復讐編】
個人的に一番好きでした。
ちょっと景明が小さくまとまっちゃってるのが気になるけど、いや、他にも気になる所ちらほらあるけど。
何かに特化して壊れていった歪んだ人間同士が、完璧な心中を遂げる。これこそラブストーリーの極点でしょう。いや禁じ手だとも思うし、ラブストーリーって解釈も際どいけどさ!!
でもこんなに求め合う二人がいた、その奇跡こそこのルートの全てだと思ってます。
機械的とさえ言ってもいい矜持と信念によって、自壊していく運命が、矜持も信念もそのままに、つがいの誕生で終わるなら、これほどのハッピーエンドも無い、とか、思ってしまうのです。

ああ、もう、下らん、なんだこの厨二独白めいた感想は!!ええい、下らん!!(獅子吼)
まぁ実際一番ハッピーエンドっぽいかもしれない疑惑もあるんですが。

復讐姫様の厨二っぷりも良かったしね。
――アナタは、復讐を下らないと云う。
――本当に?

後そうそう花枝様。ものすごい傑物っぽい口ぶりでしたが実際どうなんすかね彼女。
歴史的に一暴れ出来そうな器に見えたけど、このルートだけのチョイ役とかマジかよって感じでした。
船内探検は昔懐かしい推理ADVで楽しかったです。たまにやると楽しいようん。
最後の選択肢はずるかったけど。無理ゲーなきますた。
でも正答が獅子吼の戦術というセンチメンタルには負けざるを得なかったとか。




【英雄編】
逆にあんまり好みでは無かったって噂。
登場人物の活躍には喝采を送りたいんだけどね、善悪の論議に終始してしまうのがどうにも、見てるだけのこっちにゃ歯痒いというかなんというか、最終的に微妙に納得出来ないというかなんというか。

エピローグはビックリしましたけどねん。てか武帝じゃねえのかよと。

印象深かったのはビックリスーサイドマシーン正宗と、童心坊閣下。
正宗色々と自重。どうしてこうなった過ぎて困りましたとも。
童心坊はもう、色々ヤバかったね。憧れるよこのDQN神。
いかにも!いかにも!いかにも!!




【魔王編】
いよいよ本番来たり。
まず感動したのが、復讐編・英雄編のシナリオ軸が絶妙に絡んでくる事。ADMSかよ!とか胡乱なツッコミ入れてしまった程でして、ええ。

てかいちいち佳境の嵐過ぎてやばかったですね。
特に戦争状態の間のボルテージの高さは異常。六波羅が格好良すぎた。四公
今まで中途半端な活躍しかしなかったキャラ達がしっかり活躍してるのは大吉。護氏とかね。

四郎邦氏の死に様も格好良く切なくて実に良かったし。殺し愛大好きですごめんね!ごめんね!!

そしてウォルフ教授が素敵でした。あなたを犯したのは私だああああああ!!このシーン痺れてましたとも。
てか突然飛び出るクリスタル・ナハトという現象やら、あなたは間違っていなかった総統!とか、この世界のアドルフは一体何をやったんでしょうやら。

んで金神様登場と。おい産土神黄輝之塊だろこれとかツッコミましたすみません。
人型になったらXIGAならぬ巨大右京でびっくり仰天なんでやねんと。

最後の魔剣も格好良かったし。
本当に面白かった魔王編でしたよ。
ただ、あっちこっち端折られるのは辛かったですけど……




【エピローグ?】
武帝エンドに若干消化不良を感じる身としては、ちょっと蛇足かなー…




【悪鬼編】
後日談……ではなく正真正銘の最終章。
銀星号との決着が着いたならば、次は己と、そして善悪相殺との決着であると。
前半は前半で面白かったけど、このままのんびり話が進むのかなと思った矢先の、あの雪車町登場ですよ。
思わず手を打って叫びましたよ。
「そうお前だよ!!お前が出てくれなきゃ(伏線的に)困るんだよ!!」
って。

最後まで期待を裏切らないでくれたって感じでした。




個人的に、結局のところ景明は極めて善良な人間と言えたんじゃないかなと思ってたりするので、最後に景明が悪鬼を是とするのが微妙に消化不良気味だったり。
ここだけでも解釈は色々出来るんですけどね。苦悶と嗚咽を心中で封殺し続ける道をハッキリ選んだっていう見方でもいいんですけども。
でも、正着はやっぱり「俺の邪悪を信じる!」かとも思うんですよね。

ここに、初代村正の「独善を断つべし」な思想が絡むといよいよ混乱してくるのですがががが

それが転んだ結果、「武帝」になるか?という疑問がちょっとねー……


まぁでもそんなこまけぇ事はいいんだよ!と言える程の作品ではありました。


ああ書いてる時間を確保出来ない
機を見て書き足せたらいいなと思いつつも、とりあえずさらばです。

雑な乱文、失礼致しました。