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tanukickさんの甘夏アドゥレセンスの長文感想

ユーザー
tanukick
ゲーム
甘夏アドゥレセンス
ブランド
コンフィチュールソフト
得点
60
参照数
2758

一言コメント

ロックという魔法の言葉だけが虚しく響き続ける。中身のない水増しゲー

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

バンド活動を通して、ロックに青春を謳歌するバカ共の物語!と思わせるのは序盤だけ。
ほんの少しのバンド要素に水増し展開を重ねに重ねた中身のない作品。そこにはロックもアドゥレセンスもなかった。

・中身のないバンド活動
序盤のバンドメンバーを集める流れまではそれなりだったが、天音のドラムから雲行きが怪しくなる。
初心者なのにセンスの良さだけで、いきなりドラムが叩けるのだ。
これの何が問題かというと、バンド物なのにライターが練習している様子を省こうとしている点。

その後も、まともにバンドとして練習してる様子を書く気はなく
バンドを楽しんでるウェーイな雰囲気を伝えようという意思すら感じられない。

・でも主人公達は頑張ってます
そんなバンド活動をひたすら端折っている甘夏アドゥレセンス。
しかしながら物語は一生懸命バンドに打ち込んでるという体で進み
何やかんやで色んな壁にぶち当たる主人公達。

それらの壁に対し主人公達は、ロックの精神性を掲げて乗り越えようとするが
実際は糞みたいな萌えゲーにありがちな水増し展開に、ロックという魔法の言葉を付け足してるだけ。
そして努力してきた体で、共通の山場であるフェスで演奏して、プロの心を揺さぶり優勝する。

ナツとサーシャの個別も、音を伝える事で人の心を動かし問題解決と言う流れだが
バンドとして努力する描写を省いてしまってるせいで
主人公達が音楽で人の心を救おうが何しようが、何の感動もない。

とは言え、ここまでは一応はバンドや音楽の話という形にはなっている。
しかしリョウと天音の個別は、おかしな方向へとシフトしていく。

・ロックの精神性
リョウにとってのロックとは「常識を打ち破る力」であり、ロックで世界を変えるのが彼女の夢。
そんな彼女の個別は、経営者としての手腕を発揮して、金の力で常識を打ち破り夢を叶える話だった。

そして天音の個別は、何故かリョウへのアンチテーゼとなっている。
実は天音は、世界を変える力を持つ超天才科学者であったが
彼女は世界を変える事よりも、主人公との平凡で幸せな日常を選ぶのであった。

と、何かロックの精神性をそれっぽく扱おうとした結果、色々と間違えちゃった感がある。

・結局は何ゲーだったのか
シナリオのコンセプトはロックを通して思春期から一歩踏み出す成長物語っぽいが
何か色々と水増し展開を重ねた結果、その辺りがボヤけてしまったという印象。

・萌えゲーとして
「萌えゲーなんだし女の子達が可愛けりゃいいじゃん」的なノリで楽しもうにも厳しい。
確かに絵は可愛いし声も良いが、全体を通してヒロインの魅力に焦点が当たることが少なく
そういう楽しみ方をするのも難しい。大抵はどうでもいい水増し展開に逸れてしまう。