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tanisigeさんの星空のメモリア Eternal Heartの長文感想

ユーザー
tanisige
ゲーム
星空のメモリア Eternal Heart
ブランド
FAVORITE
得点
95
参照数
366

一言コメント

補完系正統派FD

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【総評】
ほとんどの内容が夢とメアのアフターに絞った正統派FD。
二人の内どちらか一人でも好きなら十分やる価値があるだろう。
他キャラのアフターが非常に短いのはしょうがない。

夢は本編のTrue(グランドエンド)ルートのヒロインであり、メアも星メモを象徴するキャラであるが
その一方で攻略キャラが多すぎる副作用か、どちらもボリュームにおいては不足している感じがあった。
夢はシナリオの都合上、共通や他キャラルートでは回想など非常に限定的な機会でしか登場しないし
逆にメアは共通や他ルートでは比較的出番が多いが、自分のルートは実質おまけ程度と
作中の重要さに反してどちらも消化不良感が否めなかったのは事実である。
その為、両キャラの話を補完するという意味でアフターのFDは、他の作品と比べて重要であり
それだけでもある程度の価値があるが、とりわけ夢アフターで退院後の夢の姿が見られるというのが本作の最大の長所であり評価点である。


【メアアフター】
本編のメアルートは、前述の通りおまけみたいなものだと言ったが、それは単純に尺が短いというだけでなく
話の都合上おまけにならざるをえない、というところもある。
というのは、星メモ本編の攻略でメアルートが開放されるのが全キャラ中最後だが、その一歩前の
夢ルートは明らかにTrue(グランド)エンド扱いであり、そこで星メモの話は実質的に終わっている。
このことはシナリオの流れに加えて、全攻略ヒロインの中で唯一共通エンディング曲でなく、「星空のメモリア」という作品タイトルを冠した特別なエンディング曲と演出が夢EDに使われていることからもわかる。
このグランドエンドである夢ルートが終わった後に、別キャラのルートが追加されるというのは
控えめにみても、メアとのエロシーンがないと満足できないロリコンの為に設けられたおまけとしか言いようがない。

実際、メアルートの話の展開は、星メモ本編の流れを考えても不自然という他ない。
洋は(そして夢も)口では恋愛感情ではないといいつつも、実質的には昔から惹かれていたというのは、夢ルートをやればわかる事だし
だからこそ夢とのまばらな邂逅を経たことで、明日歩の告白を拒否して夢ルートに来たはずなのだが
メアルートに入るとそんなことはなかったかのような感じで、ロリに傾倒していく。
いくら洋がロリコンだといっても、さすがにこの流れは唐突かつ不自然だといわざるを得ない。
大体夢よりロリがいいなら、最初からメアとくっつけばいいわけであって、何のためにあそこまで夢を探し求めていたのか、星メモの話の根幹から揺らぐことになってしまう。

もしこの話の流れに何らかの整合性を求めるなら、夢に(表面上は)ふられたので諦めて
慰めてくれたメアに転んだということにするしかない。
しかし、幼馴染の19歳に振られたので、その幼馴染の12歳の容姿をもつ生後7歳の人外少女に
慰めてもらうというのはあまりに主人公として情けない姿なのかそこら辺は曖昧なままメアルートは終わる。
この不整合をどうするのかがEHでは一番気になったが、どうもそこには手を入れずに
夢のことは有耶無耶にして何となく友人として接する方向みたいな感じで終わってしまった。
本編ルートがおまけなだけに、アフターもおまけの豪華版という印象である。まあ夢エンドで綺麗に終わったのに
無理に話をひっかき回すのも如何なものかと思うので、これはこれでいいのかもしれない。



【夢アフター】
本編の夢ルート自体は、星メモのストーリー全体を総括する素晴らしい出来であるが
その一方、メア消失のところで話が終わって、エピローグまで飛んでいるのが問題だ。
本編の感想でも書いたが星メモの夢ルートは基本的に焦らしプレイの連続だ。
そして焦らして焦らした末に、ようやく夢エンドにたどり着き、ED曲である「星空のメモリア」を聴き終わって
エピローグに入ると、夢は子持ち人妻になってしまっていた。
これについては夢さんとのイチャラブや昏睡から復活した夢さんと喜ぶシーンがないことに
義憤に駆られた夢信者も多いだろう。
そんな夢さんルートを補完してくれるというだけで思わず95点をつけてしまう程だが
内容もメアの隕石を中心に退院~結婚まで手堅くまとめてくれており、アフターなので話自体は特筆するものは
ないけれども、FDとしては十分な内容である。

あえていうならば、FDの開始が夢の退院直後だったのが不満点として挙げられる。
前述のとおり本編は夢の昏睡時で終わっており一気にエピローグまで飛んでいるので
昏睡から復活して洋と再会して喜ぶという重要なシーンが飛ばされており、これについてはFDでも描かれていない。
しかし、回復から退院するまでの時期は、本編では頑なに洋に向かって好きだと明言しない夢さんが、自分の気持ちに向き合ってとうとう素直になり始めるという
夢ルートにおいて非常に重要な時期にもかかわらず、これを省略しているのは一体どういうことだろうか。
たしかに、話のテンポを考えれば退院から始めるのも悪くはないし、あえてそこを描かずに想像に任せるというのも分からなくはないが
回想でもいいから入れて欲しかったというのが率直な感想である。ここだけ解消されれば99点はつけるところだった。

あとは細かい点だが、ほぼ婚約者に近い立場で洋の恋人として小河坂家に住んでいる状態な為、当然洋の妹の千波と同居するだけでなく
実質的に義理の妹⇔姉関係になるわけだが、2人の会話シーンはないことはないが少なかったように思われる。
本編時点で夢のことを洋をたぶらかす魔性の女であると、千波は記憶していたようだが、EHでは特に文句を言っている様子はなかったので素直に夢のことを受け入れたと想像はできるものの
この2人の掛け合いがどうなるかは割りと気になっていただけに、ほとんど絡みがないのは残念というか少々不自然な感じが否めなかった。

以上のように若干不満なところはあるが、可愛い夢さんが沢山見られるというだけで実質100点といっても過言ではない。特に退院直後に泣いて喜ぶシーンや、自分の気持ちに素直になり、甘やかし専から甘えるようになったシーンは、夢さん信者には必見である。
そもそも前回はシナリオ上病室がメインだった為か、必然的に夢さんが活躍できる幅が限定されていたが
病気から回復した今作ではあちこち歩き回ったり、洋君以外のキャラとの絡みが増えただけでも感慨深い。
病弱キャラから病気が抜けて一転して特徴がなくなってしまうのではないかという懸念は杞憂であり
むしろ元気な夢さんは一層可愛くなっている。


もうこれ以上言うことはない
夢さんは最高だ。これだけははっきり真実を伝えたかった。