本編の補完とも続編とも言えるFD
FDに期待される要素というのは大別すると、本編のアフター、本編で攻略できなかった(あるいは新規)キャラのルート、それ以外のストーリー的な補完、の3つになるだろうが
本FDでは、アフター要素がほぼない(本当に少しだけのおまけ程度)代わりに、本編のサブキャラ攻略とストーリー的な補完が充実している。
基本的な構成は、未来視の能力により智と真耶が意識を共有できる夢の中で、サブキャラ3人のifルートを挟みながら
多様なルートを体験して起こりうる未来を探り、最終的に真耶との対決を経て前回果たせなかった姉との和解に至る、という流れである。
基本的には、最初から5章で夢から覚めるまでのシナリオは全て夢の中と解釈するのが妥当だろう。
ここで疑問点として湧き上がるのが、実はFDの前作である本編も真耶が見せていた夢の世界だったんではないかということである。
つまり、本編の時点で「プレイヤーの視点」=「未来視で選択肢を探っている真耶(とそれを共有可能な智)の視点」というメタ的な構図が成り立ちうる。
もしそうだとしたら、本編も含めて未来を見てきた智がようやく夢から覚めた本FD最終章こそが真のグランドエンドとなる。
実際夢の中で本編のルートも経験してきたような描写もあるので、FDだけみたらそちらの解釈の方が自然ではある。
ただし、本編自体にはそのようなことを仄めかす描写はないし、あっちはあっちで完結していると考えることもできる。
いずれにせよ、本編では姉さんの問題が消化不良気味だったので、姉弟を和解させることがFDで一番やりたかったことだろう。
その経験を経て、姉と弟で共に歩む未来がある・・・かは不明だが、そんな可能性もあり得るという前向きなエンドになっている。
ただせっかく夢の中が大半なので、本編で実現できなかった姉弟でもっと和やかに過ごすシーンを盛り込んでくれたほうがよかった。
世間から隔離されて、外界の情報のほとんどを智の未来ビジョンを通して得ることにより、双子の智に偏執的な感情を抱いていく様は紛い物ではないかなり本物の「ヤンデレ」的なヒロインとしての魅力を真耶さんから感じる。
幼少期以来ほとんど会っていない弟が存在意義の全てになっているというこの歪んだ姉弟の描き方は見事である。
かわいい系の智ちんとは対照的に、ダーク智ちん的な怪しさを振りまく姉さんこそ真のるい智のメインヒロインだった。