ベストオブ要オールクリアゲー
【総評】
このゲームの真価は長い共通から個別を経て到達するグランド(True)エンドにあり
そこに至るまでの焦らしプレイを楽しむ、焦らしプレイゲーである。
どんな点で焦らしプレイかというと、まず共通が長い。
そして妹の千波が序盤からやたら暴れまわるので余計に長く感じる。
とにかく、やたらテンションの高い声で「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」って叫びまくりながら
割りとどうでもいい話が続くので、ここでいきなりリタイアするプレイヤーが出るほど。
Trueルートのヒロインである(乙津)夢は、回想シーンなど物語序盤のキーとなるキャラとして存在感を見せるが
初回プレイでは(回想以外)一切姿をみせず、個別で他キャラ攻略にはいると
主人公と共にプレイヤーも徐々にその存在を忘れる。他キャラを攻略するごとに共通で新しいイベントが
少しずつ追加され一端忘れかけた真ヒロインの存在を再び思い出すが5人分攻略しないと
彼女のルートには到達しないという、かなり時間をかけた焦らしプレイが展開される。
しかし、この焦らしプレイを越えて夢の下へと到達したプレイヤーが
「展望台の彼女」を捜し求めていた主人公とシンクロする演出こそがこのゲームの真価である。
もしこれが初回から入れるルートだったら、全く同じシナリオでもその評価は半減するだろう。
物語の集大成となるTrueルートは、そのゲーム全体の評価を左右する為
ここにシナリオのピークを持ってくる優れた演出が、その他の欠点(序盤の千波ラッシュや超展開やご都合主義)を覆い隠している。
【夢(True)ルート感想】
グランドエンドである夢ルートには2つ特徴があって、共通から続けてきた焦らしプレイを更に
継続させていることと、変化球的な病弱キャラシナリオになっていることが挙げられる。
長い時間をかけてTrueまで来たら普通は感動の再会に至りそうだが、肝心の夢は主人公のことを
知らないふりをするので、そうはならない。
ただし、とぼけた感じのそよぎボイスのお姉さんは抜けているので、忘れたふりだというのはすぐばれるが
表面的には和やかに接する夢が、何故幼馴染として受け入れるのは拒否するのか分かりにくい為、まだ焦らしプレイが続いていく。
ここで夢シナリオのもう一つの特徴である病弱ヒロイン属性がポイントになるわけだが
病弱キャラのテンプレ的な展開として「自分はもう死ぬので諦めて欲しい」というパターンがある。
夢ルートも「自分のことは忘れろ」という意味ではそれに沿っているようだが、一方で自分は死ぬという
悲壮感は主人公に見せず、また恋人として接することは(どうみても好意はありそうなのに)拒否する為
何がしたいのか一見分かりにくい。
夢がこういう対応を取る原因は「自分のことは忘れろ」という表の顔と「本当は病気を治して洋を迎えたい」という真意が混ざって出てきているのが背景にある。
洋のことを突き放す理由は単にお姉さん役を演じる為というだけではなく、難病を諦めない動機を残すために
病気から快復するまでは洋とは幼馴染(恋人)として接しない、という自分への戒めにもなっている。
その為、友達としては接するが「将来再会して結婚する」という約束は果たせないというわけだ。
この本心はとこどころ出て来てはいるが、完全に夢の真意が把握ができるのはいよいよ最期が近づいてくる
危篤状態に陥った場面であり、ここまで焦らしておいてあの演出は反則。
病弱キャラの儚さに加えて、死期が近い状態でありながら完全に傍観して諦めたり、または主人公に依存するわけではなく、最後まで意地を貫く強さが夢の魅力でもある。
夢と主人公の洋の過去の思い出は、約1ヶ月という短い期間の関係であるが
ただの幼馴染とも言い切れない程、強固な依存関係にある。
この特別な関係の描き方が、幼馴染好きにとても刺さる素晴らしい幼馴染作品に仕立て上げてくれた。
幼馴染ヒロインにとって最も重要な要素は、年齢や期間といった表面的なことよりも
相互的関係性にあるということが分かった作品だった。
なお、夢ルートになっているが、実際には夢とメアの2人の√を兼ねたグランドエンドである。
長い焦らしプレイの果てに得られるグランドエンドの解放感もまたこの作品の醍醐味かもしれない。
以下夢さんの萌えポイント羅列
・柔らかそう
・そよぎさんのとぼけたお姉さんボイス
・病弱(病院)+銀髪(白髪)で色白設定が映える
・姉キャラだがテンプレ的な「お姉ちゃん」キャラではない絶妙なライン(洋からはほぼ対等に接される)
・病弱+世話焼き+ポンコツと本来相容れない属性を詰め込んだキャラの多様性
・年上だけど美人というよりは可愛い系お姉さんな顔立ち
・ムッとした時の表情
・微妙にクセッ毛でボサっとしている後ろ髪
・パジャマで堂々と街中を出歩く図太さ
・本人のキャラに反してファッションセンスが少女趣味っぽい
・病弱キャラなのに胸が結構ある