智ちんゲー
【総評】
女装主人公作品はメジャーとまでは言わないまでも、それなりに人気作が出回るようになったジャンルとなり
本作はその代表作といってもいいのだが、その中でも他の女装モノとは違う特徴がある。
それは何といっても、主人公でありメインヒロインである智ちんの設定である。
女装ゲーの多くは理由がなんであれ、女子校に入るタイプの潜入女装系がほとんどだ。
しかしるい智には潜入女装要素はほとんどないし、まず学校自体が割とどうでもいい扱いだが
その代わりに本作で女装する理由付けとなっているのが「呪い」である。
この「呪い」の影響により主人公の智ちんは真の性別を隠さなければならない為に、幼少期から女性として育てられてきた
というのが他の女装ゲーにはない特殊な設定と言えるだろう。
その為、女装主人公の女性らしい仕草や反応に若干のリアリティが加えられることになる。
そしてより重要なのが、「呪い」のせいで女装に生死がかかっているので、女装がやめられないという点である。
この特殊な設定により、女装がばれてはいけないという切迫感と皆を騙している罪悪感から生じるジレンマが際立っている。
女装につきまとう葛藤は女装主人公ゲーの見所の1つであり、それに悩まされる主人公に萌えるのが女装ゲーの基本だが
本作は「女装が恥ずかしい」というところだけでなく、女装バレの恐怖を重視した作品になっている。
数ある女装作品の主人公の中でも、ここまで女装に重大な意味を持たせたのは智ちんだけと言っても過言ではない。
その為、智ちんはただのファッションとしての女装主人公を超えた、天然ものの女装主人公のような存在である。
長々と本作の女装主人公ゲーとしての特殊性を説明したが一言でいうと、智ちんかわいい、で済む話だった。
【姉さん】
智ちん以外に最も印象に残ったキャラが双子の姉の真耶さんだ。
智ちんと同じ顔だが、かわいいというより怖い。色が白すぎるし、声優が若干棒気味なのが
逆に病んでる感じを際立たせている。呪いよりぶっちゃけ真耶さんの方が怖い。
和服を着ているヤンデレで怖い夢を見せ付けてくるもんだから姉さん関連が一番ホラーだった。
それでいて終わってみると姉さんに一番肩入れしたくなるくらい不憫なので、トゥルールートで
姉さんを攻略できない(というか攻略される)のが残念なくらいだった。
【まとめ】
主人公の魅力が突出しているが、単なるキャラゲーに留まらない完成度があり
適度に悪役も配置しつつ、きれいごとになり過ぎない程度に上手くまとめている。
ただし、共通ルート時の会話が異常にテンポが悪いというか、会話というより講談を聞いている気分になる
独特な調子なので、この点はかなり賛否が分かれるだろう。
特にゲーム序盤はプレイヤーの作品に対する印象を大きく左右する重要なポイントなので
本作品の数少ない残念なところと言える。
また、メンバー間の不信→バラバラ→再結成、の流れが複数ルートで繰り返されたのは若干食傷気味な感じは否めないが
最終ルートを重要人物である恵の話を織り交ぜることによって、ご都合主義で終わらせなかったのは良い点である。