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tamagosushiさんの嘘から始まる恋の夏の長文感想

ユーザー
tamagosushi
ゲーム
嘘から始まる恋の夏
ブランド
LYCORIS(あいうえおカンパニー)
得点
92
参照数
12

一言コメント

登場人物たちがとてもかわいい。百合要素も多くあり、その娘達の絡みを見ているだけでも眼福です。シナリオも完全燃焼で締めくくられており、非常に満足。物足りない人でもコミックスによる前日譚、ドラマCDによる後日譚などでフォローされています。

長文感想

シナリオの大まかな要素は、百合と家族と成長の3つ。
まず百合については言わずもがな。男性キャラは登場人物らの家族を除いてほとんど登場せず、純度の高い百合成分を楽しめる。
そして家族。主要な人物にはそれぞれ家族背景があり、作品の本筋に絡まってくる。物語が進むにつれてしっかりと深堀りがされるため、「???」となることもないはず。大きなフィクションを感じさせない範囲で多少のリアリティを残しつつ家族と、それに付随する問題を描いている。
最後に成長。子どもと大人の狭間という最も情緒が安定しないであろう時期に焦点を当てている。主人公が大人たちと衝突するたびに、反省し糧にし精神的な成長をしていく過程が良く描かれている。この大人というのも、完璧超人でもダメ人間でもなく、芯があるところは曲げず関心のないところは手を抜く、といったような現実味のある人物像をしているのも良い。それ故に共感や感情移入がしやすい。

絵について、まずこれだけは言わせてほしい。
「バリエーションが豊富すぎる!!」
キャラクターの衣装差分は十数種もあり(正確には数えてないが)、TPOに合わせたコーディネートを思案している様子が容易に想像できる。
そして、立ち絵やCGがぬるぬる動く!会話に合わせて立ち絵の口や目線、手が動く。例えば、キャラクターが何かを提案しているときには手が動き、気まずさを感じているときには目が泳ぐ。CGもエフェクトだけでなく、メインに据えられているキャラクターがしっかりと動くのだから驚嘆。
絵のタッチが好みであるならば、即買いしてほしいほどだ。他のビジュアルノベルに比べ、3000円強というお手頃な価格で、CGシーンの種類数は30を超える。進行につれCGの質が下がる、ということもなく、むしろ後半になるにつれて美麗になっているようにも錯覚しているかもしれない。

ここまではポジティブなことばかり書いたが、システム面で気になる点もいくつかあった。
1つめに、回想に入るたびにロード処理が入る点。たかが1,2秒であるが、テンポ感が失われてしまっている印象を受ける。
2つめに、日時の表示。本作は時間が飛ぶ度に、日時と場所が中央に表示される。この表示は数秒の間行われるが、箇所によっては短いスパンで表示されることもあったため、ちょっとしたストレスがあった。画面左上に数秒間表示し、その間も操作を受け付けるようにすればよいだろうと思ったが、これはまあ個人の好みの問題だろう。

最後に僅かながらネガティブなことも書いたが、裏を返せばこれぐらいしか書くことがなかったとも言える。
価格、シナリオ、CGと、ビジュアルノベルにおける個人的3大要素を、大いに満足の行き過ぎるところまでクリアした作品だ。「百合」と聞いて多少ハードルの高さを感じている人もいるだろうが、万民におすすめできるライトな作品であると断言できる。