キャラクターの魅力とシナリオを両立した素晴らしいゲーム。
錦あすみの言葉に対する過敏性。それをふまえた上での「言葉では追いつかない気持ちは」。ほんとはなんだって言葉にしたいのに、言葉に出来るのに。言葉の持つ意味を誰よりも分かってしまう事と自身の気の弱さ故の「やりたいこと」と「出来たこと」のわずかな乖離。それを無理に近づけようとすることもなくて良かった。またげっちゅ屋特典のボイスドラマでの「泣き」がヤバい。紬雪乃さんの今後に期待。
常磐華乃は逃げる事をやめた成長物語。性欲魔神。ミリさんが親族であることを加味しても良い先生過ぎるんだよ。先生の職務はハミダシすぎだけど。先輩がいなくなって残される後輩2人の心情も言及される。こう言うのですよ。隙のないシナリオって言うのは。
鎌倉詩桜は全ての元凶。最初は血も涙もない女かと思っていたけど痛みも感じるし、罪の意識も感じる。それこそ他ルートでは「人の気持ちを無視するから」と描写されてたところも、ちゃんとしっくりくる理由を提供してくれる。こういう女は割とギャップで攻めてくるパターンを見るが、鎌倉詩桜は弱さを分かった上でそれでも強くあった。いい。
全ては和泉妃愛のための前座。和泉妃愛がどうしてその行動をしたのかがきっちり語られる。『兄妹ぼっち』は一文一文をキッチリ噛みしめて欲しい。「色んな人への罪の意識はあるけれども、諦めていた幸せに手が届くのなら、私は自分の幸せを選びたい」この文章が素晴らしい。ザビ子役として小泉妃愛(和泉妃愛)が歌うReal IntentionもOPのUnreal Creationと対比になっていて良い。Real Intentionは歌詞も秀逸。普通に考えて「大人に近づいた2人は」なら「いつの間にかすれ違ってしまった」と思うところを「いつまでも変わらないね」であり、「この感情に名前をつけて伝えた瞬間に」「2人は変わらずにいられない」ではなく「変わらずにいれるかな」である。読んで次の文が分かる文が一流、分かった文を裏切ってくるのが超一流である。満点をつけられるゲーム。
でも5点減点したのは錦あすみ、常磐華乃、鎌倉詩桜ルートで妃愛が幸せにならないから。