苦しくてもいつかは虹が見つけられるのかもしれない。
ひたすらに雨、雨、雨です。
それによって生み出される独特の暗さが、
作品の持つ暗さにいっそう拍車をかけています。
よくここまで雨を貫いたなと、感心させられます。
肝心のストーリーはどうかというと、
ルートによって救いようのないどん底のものから、
虹が架かりそうなハッピーエンドまでだいぶ性格が異なります。
一番印象に残るのが、悠紀ルートですね。特にバッドエンドが堪えます。
もともと母子家庭で悠紀一人で家計をやりくりするなか、
最愛の母親が死去し、その上ペットのハムスターまで死んでしまいます。
助けてくれる親族もおらず、失意の中迎えた結末は・・・悠紀自身の死。
境医師の命の話があっても乗り越えられなかった壁、
「死」とは一体何なのでしょうか。
死生観について考えさせられました。
その他このルートでは晴香とのどろどろの三角関係もしっかり描かれているので、
いっそう完成度の高いものとなっています。
スイルートについてですが、
スイ自身過去の出来事が原因で心に深い傷を負っていて、
そのため突然失踪したり、レイプされたり、最悪自殺してしまったりと、
かなりハードになっています。
が、ハッピーエンドの結末はかなりあっけないのでかなり拍子抜けします。
でも、雨のあとには虹が見つかるのだと実感したルートでもありました。
最後に晴香と音海ルートですが、
どちらも前者二人に比べるとインパクトは小さいです。
描いていることもほぼ似通っていて、父親との葛藤・対立がテーマになっています。
ハッピーエンドもバッドエンドも落としどころは妥当なところで落ち着いています。
ところで、主人公が優柔不断で構わずSEXするので
節操がないとか批判されていますが、
自分はそうは思いません。彼は人間らしい人間です。
目の前の欲求に逆らえず、流され、そして後悔する。人間らしいですねえ。
そういった弱さも持ち合わせているのが人間だと思うのです。
以上書いたとおり、「死」というものが結構出てきます。
暗いテーマから目を背けずにしっかり描ききった点は高評価に値するでしょう。
確かにルートごとに差がありますが、それでもです。
また、止まない雨の描写もいいですね。
欝にはなってしまいますが、物語を引き立てる重要な役割を果たしています。
こだわりを持った作品ということで、個人的には魂の作品です。
最後に、グラフィックは脆弱ですが、それ以外は高水準。
OP曲「Dancing Love!」とBGMは秀逸でした。ぜひ聞いてみてください。
あと、攻略はかなり難しいので、プレイする人は覚悟をして望みましょう。