楽しい運ゲーバトル&マロンペースト並みにゆるふわな甘口ADVで、良い子たちに親御さんが安心して買い与えられるような優しいエロゲでした。
戦闘システムを運ゲー呼ばわりするとなんとなく印象悪いですが、あくまで褒め言葉です。
運に左右されつつそれほどストレスを感じないのは、一つにリトライが容易であること。参加キャラとそのレベルが戦闘ごとに固定なので、純粋に戦闘だけに専心できること。
勝った時あるいは評価でSSSやGODを出した時の快感が、それまでの敗北の悔しさを吹き飛ばすくらいデカいこと。
そして、運に大きく左右される部分は初期配置ぐらいなので、最初の数フレームさえ乗り切ってしまえば、あとは自分の読みと戦略にかかってくること。
ここらあたりに起因してるんじゃないかと思います。
また、運ゲーなのは難易度HARDに限った話で、EASYやNORMALなら定石通りプレイすれば運に左右されることなくクリア出来るという点も好ましいです。
とにかく、じゃんけん的発想をベースに、よくぞここまで楽しいバトルシステムを作ったもんだと感服しました。
たくさん用意された燃える戦闘曲も、楽しさ助長に一役買っていました。
ADVパートは、ゆるくて平板で、これといって起伏があるわけじゃないから眠くなるけど、かといってスキップせずついつい付き合ってしまうような、ぬるま湯の心地好さがあります。
その心地好さの源泉の一つは、「よいこの皆さん仲良くしましょうね」系の、まるで園児たちに話して聞かせてるような、
可愛らしく暖かな語り口にあるんじゃないかと思います。フォントも丸っこくて可愛いらしいですし。
勿論、それは稚拙という意味じゃなくって、昔の人が言ったような「物語は子供を騙すように語れ」的なやり口ってことで、
子供たちに優しく諭すある種の理想が、翻って自分の善性を支える根拠となるような作用をもたらすといった感じかなぁと。
だから、作中の人物が茶化すように言う「神様は言ったんです。『みんな仲良くね』って」といった台詞も、考えようによっちゃあ含蓄あるし、
また、主人公が「ああ。この人たちは子供なんだな、と思った。」と地の文で述べる対象が、おちゃらけて遊んでいる大人たちでなく、
シリアス調で独善を為す者たちであったりするあたりにも、全体を貫く意図とか主題みたいなものが見え隠れしているように思えます。
子供っぽい主人公サイドと、シリアスな一部敵キャラ勢との各々の児戯の相違、平たく言えば他人を慮るのが大事なんだよー、といった具合に。
キャラクターは、メインも好ましい人物ばかりだけど、サブが負けず劣らず魅力的。
さっちんやメリロットさん、さらに立ち絵の無いユミルやシナオバに至るまで個性的で、作中で標榜されるキラキラの日常生活を彩ってくれました。
ついでに言えば、背景に描かれてるモブキャラすら可愛かったです。
問題はゲーム全体のデザインというか、一周目に選べるヒロインが4人で、二周目以降に一人追加されて都合5人なわけですが、
5つもルートがあるわりには展開が似たりよったり過ぎて飽きるということ。
いや、ヒロインを中心に考えると、三角関係とか別離とかイチャラブとか、それぞれルートごとに異なるテイストが加えられてるんですが、
バトルを軸とする事件そのものは大枠が同じなため、一周目で各ボスキャラの行動の意図を知ってしまうと、二周目以降は驚きが一切無くなってしまうのです。
ぶっちゃけ、二周目以降に開放されるルートオンリーで構成されてても問題なかった気がする。このルートがバトル的には一番盛り上がるんで。
この古いゲームを今さら新規プレイしようとする人がいるかどうかは分かりませんが、もしいるとしたら、くるせいだーす4人全員のルートを攻略しようと無理しないことをお奨めします。
4人のうちのお気に入りの一人+二周目開放ルートの二周で打ち止めした方が、美しい記憶のまま終えることが出来る可能性は高いです。
(とくにお気に入りとかの拘りがない方にはナナカルートをお奨めしたいです。この二周をプレイすれば一通りのボスキャラと戦うことが出来ます。)
何しろこのゲーム、本当に丁寧に細部まで作りこまれてるけど、それはでっかいホールケーキみたいなもので、
二切れくらい食べるのが丁度良く、それ以上は胸焼けするばかり。食べ過ぎれば、だんだん嫌気がさしてきます。
しかも、上記で書いたように、なんかついついスキップせず付き合ってしまったりするので、プレイ時間がえらく嵩んでしまう結果に……。
それでも全クリ目指したい人は、筋トレとか部屋の掃除して気を紛らわしながらプレイしてみて下さい。私はそうやって乗り切りました。
エロは、一人あたりおおよそ2回で、一つ一つのシーンはそれなりの尺もあり、決して実用できないわけじゃないんだけど、挿入される位置が最悪。
エンディング直前とか、スタッフロール後のエピローグでとか、ビックリするぐらい余韻をぶち壊してくれました。
いずれにせよ、総じて楽しかったです。
もし中学生ぐらいの時期にプレイしておけば、自分ももう少し素直でいい子に育ったんじゃないかなと思えるくらい、優しく暖かいキラキラしたエロゲでした。