試金石の作品で引き出しの広さをまざまざと見せ付けられた。名作。
絵は前作より格段にパワーアップ。まだ立ち絵などに不自然な部分があるが(特に唯緒)、個性を残しながら技術を上げた印象。また、ムービーにも非常に気合が入っていた。
音楽も、劇中のBGMは前作に引き続き内容は非常に良い。ただ、あの音痴なボーカルの2曲(世界が終わるまで,ただ、キミといるために)の存在がこの作品唯一の大きな欠点といえる。
シナリオだが、表に示した通り、引き出しの広さを十二分に感じることの出来る作品であった。
唯緒シナリオではファンタジックな世界を見せ、叶子シナリオでは鬱系(程度は軽い)シナリオを提示し、花シナリオで大いに笑え、明星シナリオで濃密なHを堪能できる。現代萌え系エロゲの主たる要素を網羅できる「おいしい作品」と言えよう。その内容の方も、CD2枚という容量ながら一切の妥協を許さない前作同様じっくりと描き出すテキスト、理にかなう素朴な展開で好印象。また、先程述べたように当作には様々な性癖に影響を及ぼしうる要素があるが、読ませるテキストのお陰もあってか、現に陵辱系の話は好きではなかった私にも拒絶反応は出なかった。
Basesonの方向性を示す上で重要な役割を担っていた当作だが、そこで彼らは何でも出来るゼネラリストであることを見せつけた。過去、ヒット作を出してそれに胡坐をかいたのであろうか、こちらを期待させた後の次の作品で駄作を出すという例は数多かった。しかし、このメーカーはそのような不安を払拭、最高の作品を再提示することに成功した。このことには最大級の賛辞を送りたい。
来年或いは再来年になるであろう次作が今から非常に楽しみだ。
(誤字修正)