ひたすら「恋」を丁寧に描いた作品。
「年頃の女の子としての普通の生活」こそがみくりにとってのファンタジーだったのだ。という読み方をされたweb上のレビューがあったような気がしたのですが、見つかりませんでした。自分もこの意見に賛成なところがあり、こちらに感想を一筆したためにきた次第です。
まず、マイフェイバリットケモミミADVということで、本作は獣人のヒロインと引っ越してきた人間の男の子との出会いから、生活を共にするお話です。※1
獣人という現実にありえないファンタジーな要素と、喫茶店のアルバイトをするという現実にもありそうなシチュエーションをほどよくブレンドした世界観がとても良いと思います。
我々にとっては獣人というファンタジー要素との出会い・交流という側面から物語を読んでいきますが、登場ヒロインのうちの一人、天宮みくりは獣人の里の生活しか知らなかったため、「現在の人間世界の生活様式こそがファンタジー」となります。
そのため、このあまいろショコラータの物語は「我々がファンタジーに出会う物語」であると同時に、天宮みくりの視点でも「ファンタジーに出会う物語」ということでした。そして、ファンタジーとファンタジーの出会いは異文化交流に他なりません。登場人物たちもまたお互いの文化を尊重し合いながら、深い関係を築きあげます。その各々の描写が非常に丁寧に進行するので、シナリオ全体を読んでいて、とてもゆったりとした優しい空気を感じました。
他、作品全体として。絵は間違いなく抜群に良いです。キャラクターのかわいさは勿論のこと、背景もかなり綺麗なものだと感じます。また、BGMもどれ一つとってもずっと聴いてられる素敵な楽曲群が揃っています。お気に入りは「シリウスを見つけて」です。
惜しむらくは「テキスト量が少ない」でしょうか。もっと読みたいんですよ、このゆったりと甘い関係の時間を紡ぐ物語を。ただ、これはただのおかわり要求なので、ネガティブな意見ではないかも。
あと、これは本作だけに絡むことではないのですが、男の子と女の子が出会って恋に落ちれば、それだけで当人達にとって人生を左右する大事件だと思っています。なので、これをおさえている作品に関して自分は「シナリオがない」と思うことはないですね。
※1:本文章内では次回作の2については言及しません。