前2作と比べると軽い話。親等が離れたから禁忌を犯す根拠の必要性の減少によるのだろう
「不機嫌な姉」と比べて技量が同等ですから、プロモーションという役割が無く作品単体に力を注がれた今作の完成度は前作を上回ります。
みやま零さんは長編も悪くありませんが、短編の巧さは目を見張るものが有ると思います。話は作中でしっかり完結しているのに余韻でその過去や未来が気になるようになっているというのはポイントが高いです。短編は短い話ではなく、短くても広がりの有る話であるべきだと私は思うので。
普通に結婚出来る従妹に不機嫌シリーズの持ち味である禁忌をいかに持たせるかが見所の一つですが、ありきたりなようで一味効かせているのが良いです。
主人公が彼女持ちで彼女を鳩子の友達だという三角関係というだけならば珍しくもないでしょう。(エロゲーでは珍しいかもしれませんが)しかし、彼女は鳩子の地元から主人公のいる東京へ引っ越してきた人物という運命性を加える事で2人の絆はより深く感じられるようになり、そこへ割り込むことへの禁忌性が増します。
ただ、やはり禁忌性という味が前作と比べてどうしても薄くなってしまうし、それ故に禁忌を犯す為に必要な覚悟が軽くて済むので話の面白さは前作に及ばなくなってしまうのでしょう。
話は比較的軽いという面白さへのマイナス要素も、不機嫌シリーズへの入口役としては効果的に働くでしょう。短編ですが安いのでオススメです。