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takekinokoさんの不機嫌な姉の長文感想

ユーザー
takekinoko
ゲーム
不機嫌な姉
ブランド
StrayMoon
得点
75
参照数
591

一言コメント

短い中にも込められたものが沢山あり、かなりの良作ではないかと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 この作品は悠里とその姉の硝子のそれぞれが主人公の2 章仕立てになっています。かなりの短編ですから、短編や詩集等を読み慣れていないと付いていけないかもしれません。短編というのは直接描かれていない部分を予測したり、空白の時間の意味(この作品では1章と2章の間や、初体験からの時間差など)を読み取ったり必要が有りますから。

作品の批判に恋に落ちる過程が描かれていないというものをよく目にしますが、そういう意見の有る作品でも私から見たら特におかしくないと思うものも沢山あります。主人公の一般的なパターンであるルックスが良くて少なくとも作中の期間はヒロインの近くにいるというのは、それだけで十分な要素だと思いますが。まして、何かを一緒にやり遂げたら更に大きな存在になるでしょうし。(特に強豪で顕著ですが、学生時代に部活やサークル内での恋愛がその他での恋愛より割合が多かったりするのは上記の後ろ2つの理由が大きいと思います。)このような要素からわかることだけではなく実際に描かれていないと満足出来ないという人は短編を読むのには向いていないでしょう。そういう人には、恋愛をメインで描くような少女漫画がベストなのではないかと思います。

話がそれたので作品に戻して、以下各章について。



 悠里が主役の1章「不機嫌な姉」は、姉弟の関係とエッチを描いたもの。硝子の悠里に対するスタイルはエッチシーンにもしっかり表れています。ここまでは萌えゲーとして楽しむべきでしょう。



 数日後の話である硝子が主役の2章「ガラスのセカイ」では、1章で説明されていなかった周囲の環境についてと、硝子の流儀について、エピローグが描かれています。こちらは些細な部分にまで重要な意味が有るのでしっかり読み込む必要が有ります。短い中でどんでん返しまで有りますから。

エピローグには作中での深い意味は有りません。硝子が自分の流儀を自覚した事で周囲への対応も確立された事が読み取れますが、そこは本題ではないでしょう。ここで重要なのはそれまで未登場だった「彼女たちの流儀」の鳥羽莉が登場すること。公式HP での紹介でもカノギのサブテキストとか書かれていましたが、ここまであからさまだとは思っていませんでした。そんな人は少ないでしょうが、予備知識0でプレイするとエピローグで新キャラが登場することに驚いてしまうことでしょう。しかも、それまでは細かい所まで意味が込められていたのに、それが無い普通の話に見えますから。鳥羽莉視点ではそれまでと同レベルの意味の込められたエピソードではあるのですが。そんなわけで、「不機嫌な姉」も「彼女たちの流儀」もプレイする人は、先に不機嫌な姉をプレイして、カノギをプレイした後で不機嫌な姉のエピローグを読み直すのがベストな順番ではないかと思います。