〝主人公〟の成長のお話であるから、こうも面白い。ノベルゲームでなければ表現できなかった作品。序盤でめげずに最後までプレイしてほしい。
キャラクターに声無し、ということがここまで刺さるとは。
小説を読んでいるような、でもBGMがありキャラクターの表情がころころ変わるので、飽きずに読み進めることが出来る。
心がしんどくなってしまって、この作品をクリアするのに三か月以上かかってしまった。
決してグロテスクなシーンがあるわけでも、主要人物が死んでしまうわけでもないけれど(一部例外だが)、
でもとてつもなく悲しくて苦しくてやりきれない、誰を責めることもできないような文章を描けることが凄い。
物語の過程でヒロインたちももちろん成長していくものの、
なんといっても一番は主人公の成長だと思う。
可憐と桜、どちらを選ぶのか。
紅葉との関係をどう築いていくのか。
桜とどう向き合っていくのか。
特に桜√とそれ以外を比べると、もちろん桜も成長しているけれど、主人公の変わりようが凄い。
桜は「お兄ちゃんがいないと生きていけなかった」かもしれないけれど、
桜に頼られることによって、信頼され好かれることによって、主人公のほうが強くそう思っていたのだなとじわじわ思う。
桜よりも主人公のほうがよっぽど重症。だからあのバッドエンドになるわけで。
でもそれがあったからこそ、桜ハッピーエンドやそれ以外で桜を見ると「成長したなあ・・・」と泣けてくるわけです。
この物語で一番好きだったところは可憐と桜が言い合うシーン。
あと桜が「せっくすして!」と懇願するシーン。と、実際の初体験。痛々しくて何度吐きそうになったことか・・・。
トノイケさんの描く優しい中の絶望が癖になってしまう。
彼がまたどこかで文章を書いてくれることを祈って、私はさくらむすびをこれから何度も読むのだろうなと思いました。