IFの世界を描ける美少女ゲームというものでこれを描いてしまうのは、とんでもなく苦しい。なんて皮肉だろう。この世界に生まれてきたことを後悔してしまうような内容だった。物語としては100億点くらいつけたい。が・・・しかし。
「人生をやり直せるとしても、私は風俗嬢になるよ」
彼女は、この言葉を、この言葉に辿り着くまでに、どれだけの葛藤をし、たくさんのものを飲み込み、決断したのだろう。
主人公視点、秋乃視点と続けて読んでいき、
もしも秋乃が、高橋なんていう男に引っかからなければ・・・、と思ってプレイした自暴自棄√。
この√の高橋の存在なんて、秋乃にとってはちっぽけなものだったんだと思い知らされた。
自暴自棄√と名付けられてはいるけれど、この物語は本当に「自暴自棄」の結果だったのかな。
秋乃は高木と確かに愛し合って、たくさんのものをわかちあって生きてはいたけれど、
それはただ様々なことが重なり合って成り立っていた「仕合わせ」であっただけなんだと思うと・・・。
プレイ中、いっぱいいろんなことを考えていた気もするんだけど、
やっぱり「人生をやり直せるとしても、私は風俗嬢になるよ」が、強すぎるんだよ。
幼少期から他人と比べて不自由で苦しい生活を送ってきた秋乃、男たちに心身ともに汚され本来ならばこんな思いをしてまで得ることのなかった快楽を知ってしまった秋乃、その対価として大金を手に入れて・・・、自分を愛してくれた高木と結ばれずとも、風俗嬢という道を選ぶといわれてしまったら。
もう、私なんかが言えることなんてない・・・。
きっと彼女の人生で、それだけ高木や遥と出会えたことが幸せだったんだなって・・・思えばいいのかな・・・。
たぶん、もう少し若い時にこの物語に出会っていたら、もっともっと感傷的になったり、共感できる部分が多くあったのだと思う。
でも、つらすぎてそんな思いしたくないから、今この物語を読めたことに感謝するしかない・・・かも。
秋乃とは送ってきた人生が違いすぎて、私なんかが秋乃の何かを決めつけたり、これで良かったのだろうかと疑問視するのはあまりに烏滸がましい。
それほどまでに、この物語は、秋乃というひとりの人間の人生どころか、高木や遥、聡の人生の大切な部分に触れてしまったようで、またひとりの人間である私も、何も言えなくなるような出来だった。
まあここまで色々書いてしまったけど。
美少女ゲームとして、この物語を発表されたことは、本当に皮肉・・・だし、魂が込められている作品だなと感じました。