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takashimazさんの絶対階級学園 ~Eden with roses and phantasm~の長文感想

ユーザー
takashimaz
ゲーム
絶対階級学園 ~Eden with roses and phantasm~
ブランド
Daisy2
得点
91
参照数
46

一言コメント

初乙女ゲーがこの作品なので、このさき一生忘れることはないと思う。それを抜きにしても主人公の心情の移り変わり、階級によって変わる境遇・人間関係が丁寧に描かれていてよかった。ただ合わなかった点が、地の文章と声優さんかも。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最初は七瀬十矢が一番気になっていたが、全てを終えてみたら、五十嵐ハル・・・良すぎだよ・・・。あまりのダークホース具合に目玉飛び出た。

ここからプレイ中に殴り書きしていたメモに修正加えた感想。



◎七瀬 
・薔薇Bad
この√のネリにイライライライラ。
薔薇の立場にい続けたいのはわかるし、一度手にした地位を捨てることが簡単なわけがないこともわかる。
でも、10地区で楽しく暮らしていて、萌花と楽しく学校生活を送り、
そもそも七瀬だっているのに、不仲になってまで薔薇の地位を捨てられないのか・・・って。
「薔薇の地位も十矢くんもほしい」ってよく言えたよなそんな言葉!!!!ってプンプンしながらプレイしてた。

いやわかるよーわかるよ。理解はできるけど、あんまりにも・・・すぎるよ。

「私を愛してくれない十矢くんが悪いんだ」←鳥肌。嫌いすぎる。


でもそれらを経て、石ころに「3回まわってワン」させる、堕ちるところまで堕ちたネリは嫌いじゃない。
お前はずっとその地位を持ちつつ不幸であれ、と思う。
七瀬にそうでもしないとかまってもらえないネリちゃん、みじめでかわいそうで可愛すぎるよ。

七瀬薔薇Badはこの作品のなかでトップクラスに好きです。
ネリの堕ち具合が半端なく性癖。苦しそうな十矢の顔が忘れられない。


・薔薇Happy
これはこれで、したたかで自分の意見をはっきり言えるネリちゃんで最高だった。
「なんでこんな女に惚れちまったんだか」「あふれ出る気品と魅力じゃないかなあ」
のやりとり最高すぎる。

どっちも選べない、どっちも欲しいなら、それくらいの強い気持ちでいないとな、を体現してくれるネリちゃんで大変良かった。
このままの関係がいつまで続くかわからないけど、それでも「どっちも選べない」から「どっちも捨てない」に変わったネリちゃんに好感が持てた。


でも結局、目に見えた「ハッピーエンド」は石ころでしか得られないんだなと。
持っていないものはそのまま持たずに、知らずに、石ころとして、愛だけで生きていく二人もそれはそれで好きだった。



◎壱波 
壱波のことも好きになれなかったし、どのエンドも別段面白くはなかった。
薔薇Happyもたぶん好みの部類ではあるんだけど、壱波のことが本当に好きじゃなさすぎてマジで無。
ごめん。マジで何も書くことがない。

〝階級〟学園なので仕方がないのはわかってるんだけど、可もなく不可もなく、なミツバチ同士の恋愛が描かれなかったのは残念だった。
ミツバチ同士、特別大きなことが起きるわけでもないけれど、薔薇を目指して二人で高め合っていく壱波とネリが見たかったな。


でも壱波は真相√のおかげでだいぶ印象がよくなったかも。
愛してもまた裏切られるかも、またいなくなるかも、そう心の底で思っていたのなら、今までの彼の言動もまあ納得のいくものでもある。が、ほかに比べるとやっぱり印象が弱いのも事実。



◎陸
・石ころHappy
力の入れ具合の差が、すごい・・・。CGでくるくる表情変わるの、すごい・・・。
ツンデレ王子、可愛いな。
ただただ高飛車でプライドが高いだけの陸は序盤で消え去り、最後は自ら石ころへ降格するのも恐れない強さで本当によかった。
ただまっすぐネリのことを想う陸と、それについていくネリもかっこいい。最高。


・薔薇
陸もなかなかだけど、三宮に姫って呼ばれて満更でもなさそうにするネリとか、
だんだんと「陸の隣にいるならこれくらい普通」って基準で考えてしまうようになるネリ、イタすぎて大好き。
このゲームのこういう危ういバランスで描かれる人間が良すぎる。

勉強するかゲームで遊ぶか、そんな何気ない選択肢から派生していくこのBad、なかなか読み応えがあってよかった。
しかもHappyのほうもこれはこれで気持ち悪いほど残酷なエンドを迎えるし。



◎ハル
・石ころHappy
尊い・・・尊いとしか言えない。
お風呂でおじいちゃんとおばあちゃんになっても~のくだり、尊すぎて頭抱えた。もう真実とか一旦おいといて二人で幸せになってくれ。
同じ立場の二人がささやかな幸せを手にして笑顔でいることがどれだけ幸せか・・・。

・薔薇Happy
お互いを助けるために結果的にお互いを傷つけあう二人、見ていて本当につらかった。
「愛してる」と言いたいのに、言ってしまえばもっとつらい状況になることがわかっていたから言えないもどかしさ。

ハルのため、と言いつつも、結果的には薔薇での体裁や地位を守るためとなってしまっていた自分の言動に気付いた時にはもう遅かった。
ネリが良かれと思ってやったことが全て裏目に出てしまい、ハルが憔悴しきっていく過程がえぐい。
ネリに悪気がないことが、いちばん残酷。

・ハル真相
ハルくん√だけBadの過酷さが異常じゃないですか・・・?
ネリがハルを想うたびにハルは惨めさで狂っていくのがもう・・・。
今までも学園で惨めな思いをしてきて、ネリに出会ってネリにはそんな自分を見せたくないと必死だったのに、
いちばん好きな女の子に世話されることしか出来ない彼の気持ちを考えるとこっちも死にたくなるよ。


最初から最後まで、一貫した態度でいてくれたのは安心感があったし、そういう男の子好きなんだなと。
そういう子がネリちゃんにデレる姿可愛すぎるし、伝えるところはしっかり伝えられるの、イイ。

別にちょっと背が小さくてきれいな顔立ちをしているからって、そういういじめに遭っていた明確な描写はないけど(ネリがそう思ってそうな描写はあるが)、
それでも好きな女の子に自分の惨めな姿を見られたくないとか、そのへんがしっかりと描かれていて本当に助かった。(私の心が)
ちゃんと〝男の子〟で、好きな子に弱く見られたくないとか、好きな子は自分の手で守りたいとか、そういう意志をあの容姿でやられてしまったらもう・・・もう・・・。好きです・・・。
その思いから派生するBadもとんでもなくて、心ぐちゃぐちゃになったけど。



◎レイ
壱波に嫉妬するレイ様かわいすぎる。
ネリの前でだけ格好つけてるんだよって言えちゃうレイ様が格好いい。
「嫉妬深いんだな」って十矢に言われて、「彼女のことはいつだって余裕はないよ」って言い返せるところがもうかっこいい。




そもそも真相√、みんな流れがおなじなので正直スキップさせてくれよ…の気持ちが強かった。(レイは例外だけど)
ただ攻略対象それぞれの個性があって、真相に辿り着くまでの過程がちゃんとそれぞれ描かれていたのは◎

地の文章があんまり好きじゃない。読みにくいわけではないが、別に面白くはない。
あと攻略対象の声が全体的にイメージと違って、半分くらいボイス聞かずにやったかも。ハルの声は好きだった。

レイ様の感想が少なすぎるのは、一番最後に攻略して、もうほぼすべての全貌が明らかになっていたので、若干飽きてしまっていたからかも・・・。
でもレイ様大好き。ショウも大好き。

各キャラそれぞれ結構ボリュームがあって読み応えがあった。でも薔薇・石ころをクリアしてから、最後にまとめて全員分の真相を読むのはちょっとつらかったな・・・。
上でも書いたけど、それぞれに個性があった展開なのは制作側からキャラクターへの愛が感じられて最高に良かったけど、結果的に明かされるべき謎はひとつしかなくて、それを五回も読むのはちょっとだけ面倒くさかったかも。


あとは、〝階級〟学園なので、もっともっと掘り下げてほしいところがあったけど、真相がね、あるのでね・・・仕方ないとは思う。

でもほんっっっっとうにやってよかったと思える作品。
五十嵐ハルくんとネリちゃんに最大の幸せを。この先幸せなことしか訪れなくていいです。お願いします。