羅睺が最高!
まずは最初に一言。この作品は間違いなく面白い。
ただし次に言えるのは、面白いのは間違いないが……細かい不満もまた多いということ。一番大きなところで言えば、なんでswitchで出したのとか。途中までエロゲとして作ってたせいで、「ああ、ここ本来はHシーン挿んでたんだろうな」ってシーンでぶつ切りが入るから凄く違和感が残ってしまってるし、序盤の過剰な下ネタも「これで全年齢かあ…」と思ってしまう。特に男子のおかずにされる翼とか、TSネタ的には美味しいんだけどそれよりもなんか普通に可哀想という印象が勝ってしまうし、しおん√終盤のクラスメイト達が関わるとある展開でも「でもこいつら翼で○○ってたんだよなぁ…」って感想が出かねないのはちょっとまずいと思う。女子はしおんと普通に仲良くしてたから普通に納得できるんだけど。
総じてそこまでエロゲとして作ってたなら最後までエロゲとして作れよと。声優さんもエロゲ声優としての名義だから、声優のネームで一般層のお客さんを引っ張って来るとかもできないし。これは声優さんの実力等に不満があるとかではなく、単純に全年齢方面への知名度の大きさの問題。むしろしおんや羅睺とか、はまり役と思える声優さんも多くいてそこに不満は全然ない。
翼のTSも、あれってTSか…? スワンプマンの一種じゃん…。TSですって事前に宣言しといて作中で「これってTSなのか? まあいいか細かいことは!」ってキャラに言い訳言わせるのは詐欺の一種では…?
まあ翼の性自認は男だったわけだし、広義ではTSと言えるのだろうけど…。それはまあ良いとしても、もう死んだはずの兄妹が横から悟った風な口であれこれ言ってくるのはTSとしても物語としても台無しでは。あれのせいで広義としてのTSともなんか言い難くなってるし。
主人公への不満もある。隼人にバッグボーンが存在しないのは彼が最初から最後までそういう人であって、そういう人だからこそ周りの人たちを笑顔に変えて遂には十三魔将である祀怨を調伏できた…のはわかるんだけど、バックボーンが存在しないせいで“そういう役割”という型に嵌ってる感じが強まっちゃっているというか。正しすぎる言動の数々も、正しすぎるのと羅睺のキャラが面白すぎるのもあって面白みに欠けていたようにも思える。過去作品の主人公にはバックボーンが存在しないことに意味がある主人公もいたけど、今回はそういうんじゃなさげでしたし。
羅睺とのレスバも、正しいのは隼人で羅睺はどこまで行ってもド屑なので同意できるのは隼人の方なんだけど、それだけに羅睺の面白さが際立っちゃってるのは、こう、変なバランスだ…(正しさの隼人←→面白さの羅睺)。でもこれはある意味面白いから良いかな。でも最後いきなり「神様は敬わなきゃそっぽ向かれるんだ」って言い出したのは「七大森羅ってそういう存在だったっけ…」ってならないか?(前シリーズやってれば納得は、まあ…いやでもなあ。前シリーズの名前を冠していない以上はなあ)
羅睺の敗因が調子に乗り過ぎたからなのも、敗因としては納得しかないし実際それ以外で勝ち目はなかったとはいえ、勝ちを拾わせてもらったという感じがしていまいち爽快感もない。まあこれはオリガが羅睺ぶん殴るシーンが爽快感あったからいいんだけど。
ただ、誰かを助けに向かう時の隼人は最高に輝いてると思うのでそこは超好きです。
前シリーズであるシルヴァリオとアナウンスもなく世界観や設定を繋げたのは、神咒神威神楽と同じ過ちを繰り返してどうすんのよ。シリーズと直接繋げてるつもりはないんだろうし、実際知らなくても問題ない(マガツバライの設定として受け入れれば良い話)とは思うけど、間接的には繋がっちゃってるせいで…と思ったら前作主人公の最終的な異名が出ちゃってるせいでやっぱり直接繋がってた。直接繋げるなら、やり過ぎなくらい多かったシルヴァリオネタは控えるべきだったんじゃないかなあ。お隣のチームも過剰な前作ネタはやってたけど、あれは神座とは繋げません、神咒の失敗はもうしませんっていう意思表明だし。
他にも色々、色々と細かい不満はあるんだけど……それだけだと「そんなに不満があるってことはこの作品はやっぱりつまらないんじゃないか?」と思われそうなんですけど、それでもこの作品は面白いんですよ。最終ルートに特化した面白さなので、正直他二人のルートは特定のバトル等を除いてそこまで…という感じではあるんですが。(翼ルートの羅睺vs彌瑞璃は特に面白い。作中ベストバウトの一つ。鏡観て言えやロリババアがとかいう最高に笑える羅睺の煽りから始まる実力者同士の戦いはシンプルに見ごたえもあり笑いもありで大変面白かった)
へいタクシー!
一丁上がり!
けれどそれでも、それでも……プレイして良かったと、そう思える圧倒的面白さがここにある。
やっぱこの人に素直に熱い展開を書かせたら右に出る者はいねえわ。(個人の感想です)
いや、しおんルートが本当に面白すぎる。物語が佳境に入ってからの面白さは本当に群を抜いている。やっぱこの人に素直に熱い展開を書かせたら略。
本当にボロボロと泣いてしまったし今思い出しても泣ける。そんな泣けるポイントが最低でも三つ以上はあったもんだから、細かい不満の数々があったとしてもそれでも「やって良かった…!」って本当にそう思える仕上がり。というか泣けるシーンの数で言えば過去最多じゃないかもしかしたら。
最後の一也の笑った顔とか、こっちも釣られて笑顔になれるもん。あれだけでこの作品のテーマがズシンと響いてくるよ。
しおん・一也・ディラン、この三人は本当に感動させられた。物語の大筋そのものはありきたりなもの(VC先割れスプーン)だけど、だからこそそれで感動させられるということはそれだけ物語にパワーがあるってコトだよねと。王道を王道として書けるってやっぱり凄いよね。
お気に入りキャラも上から三人並べると当然、羅睺・一也・しおん。……ん?
・羅睺
こいつおもしれーわwwwwwww
ブッチギリで良いキャラしてる。こいつもこいつでバックボーン大してないのにこんなに好きになれたのは、やっぱり圧倒的に面白かったからですね。作中で披露した煽りの数々、本当に癖になる。鏡見て言えやロリババアがとか、復讐するとか意味わからんムシャクシャを発散するならその辺の雑魚をいびってストレスを発散するに限るぜとか。マジで最低過ぎて笑ったし、それを聞いた一也が「こんな奴みたいにはなれないし、なりたくもないな…」って改心するのも笑う。
前作までのボスキャラと言えば、最終的には迷惑なのでぶっ飛ばさなきゃならないんだけどそれはそれとして言ってることには一理あるよな…なボスだったり、どっちかと言うと主人公よりこっちの方が人々の支持を集めるんじゃないか?なボスだったりしたけど、羅睺はそういうものがないシンプルな腐れ外道。殴るのに一切の躊躇いが要らないカス野郎なので死んでも誰も困らない。むしろ死んでくれた方が良い。流石の隼人も「大人しくしんみりもさせてくれねえなこいつ!?」と完全にお手上げだったのほんまこいつ。
でも死んでほしいけど死んでほしくなかった……。
誰かが笑っているとつられて他の誰かも笑顔になれる。って作中テーマをプレイヤーに対しては主人公よりも体現してたのは笑うしかねえよほんまに。
・一也
羅睺から秘術の本当の使い方を聞いてドン引きするシーンは笑った。でもその後に隼人からようやく優しさという物を受け取るシーンは涙なしでは見られませんでしたね…。しおんとの関連性も強いキャラしているのもあって、しおんが初めてありがとうを言う相手が一也なのも良かったし、そんな一也がしおんを救うための最後の一押しになるのも本当に良い。最高。
最後に一也が笑う瞬間は、地味ながらも思わずこっちも笑顔になれる名シーンだと思う。
惜しむらくは隼人との関係性がどちらかというと救う者と救われる者って感じで、例えば少年漫画のようにお互いに高め合えるようなそんなライバル関係ではあんまりなかったなという部分。体験版で隼人が創造した強さの象徴が一也の槍だったことから熱い組み合わせを期待してたので、そういう意味で言うと期待には応えてくれなかったんだけど、でも別の方向で素晴らしいものを見せてくれたので全然良かった。
・しおん
しおんが救われるシーンは涙なしでは見られませんでしたね…。うちの末っ子が泣いてんだ、うちら家族が受け止めてあげなくてどうするよ! いやあ、最高。しおんの術が家族やクラスメイトに対して全く通じないの良いよね…良い…。末っ子の涙を止めなきゃいけないことに比べればうちらの個人的な悩みとか些細な事ですわと言わんばかりに個別ルートでの葛藤は消失していたが実際家族の涙を止めることに比べたらね、そりゃあ放り投げられるよね。クラスメイトたちが「しおんちゃんってマガツだったんだ」「でも関係ないよね」「それじゃあ助けに行こう!」って何の躊躇いもなく助けに行こうとするの…ほんとに泣ける…思い出すだけでも泣ける。というかこれ書いてて泣いてる。強さとは、優しさとは、そういい続けてきた隼人くんの影響はここにもあって、それが巡ってしおんの心を照らす光になるのあまりにも良すぎる。シンプルだけど、だからこそストレートに心に感動が刺さる。好き。最初イメージしてたより声が可愛い系だなと思ったけど、後になればなるほど嵌り役だなと思えた。嵌ってると感じた声優さんも上位三名は羅睺・しおん・一也の三人かなあ。
日常シーンを多めに取っていたのもあって、しおんが家族になっていく過程や救われることに説得力があったのも良かったです。
・ディラン
ディランが救われるシーンは涙なしには以下略。役に立たないと思われてた浩太郎の秘術をここでこう使うか~~! ここも感動。浩太郎がヒーローに到達するするのも熱いし、これまで苦しみ続けてきたディランがようやく報われるのも良い…似合わぬ仮面を脱ぎ捨てるのやっぱり良いよね。あまね√のあの結末は…何…!?(確かに前作の時にバッドエンド用意するべきだったとは言ったけども!)
・先生
誰だよ女版ゼファーとか言った奴。いや女版ゼファーではあるんだけど、ゼファーさんと比べるのは先生に失礼過ぎるレベルでまともな大人。玄之丞さんもそうだけど、大人枠がまともに大人してるのは好みです。彼らはもう既に地に足付けてしっかり前向いて生きてるから今更隼人の光で救われるような部分はなくて、彼の青臭さに目を細めて眩しく思うところはあっても、それで隼人のおかげで救われたみたいになることはない。むしろ隼人たち少年少女をサポートしてくれるのが大人としての役割って感じで、この辺のバランスはすごい好きでした。子供たちを戦わせるのは本心じゃないんだってのも描写されてたしね。
・オリガ
なんか地味に好き。可愛い。実はゴ○○なのも好き。天与呪縛だこれ!
野心に燃える噛ませ犬かなーと最初は思ってたんだけど、普通に正義の味方的なポジションでしたね…野心に燃えてるのも嘘ではないんだけど、それ以上に一般市民を助けるのは当然のことではとか普通に考えてそうな善良さが隠しきれてなくて可愛い。翼ルートで困惑しながら最終的には「良いと思います!」してるシーンとか可愛い。
あとはこれらに加えて彌瑞璃様が特に好きだったキャラかな。
これまでの高濱氏の作品って、どこか説教臭い部分や独特のくどさがあって、そこは特徴の一つでもあったんですけどやっぱり人によって合う合わないはあったと思うので、そこがいつもより薄くなっていたのは目に見える大きな変化だったかなと。過剰な前作ネタを除けば新規さんにもお薦めしやすくなってたと思う。
色々細かい不満も多かったけれど、それでも最後までプレイしてみれば満足感のある作品に仕上がってたのは流石の一言。
回収してない設定は今後もマガツバライをシリーズとして展開していってそこで回収するのか、次こそは前作関係ない作品を出すのかはわかりませんけど、今後も熱い作品を期待したいです。