「だったら、質問を変えるよ。--自分の犯した罪は科学によって贖われるのかな」
批評空間にてデータ数が少ないながら中央値90点を維持しており、相当前から気になっていた作品だった。KIDのインフニティシリーズも大好きだったし、同じようなSF設定であり気になった。また、シンフォニック=レインのライター西川氏も参加していることからも、いつか絶対にプレイしたいと思っていた。しかし、PS2かPSPでしか出ておらず、PSPは音質が悪いとのことでPS2で進めていたが、毎回PS2起動するのが億劫でクリアまでに1年費やしてしまった。
とりあえずの感想としては「クソ長過ぎる…」の一言に尽きる。
「My Merry May」と続編の「My Merry Maybe」の2作品の同梱版ということで大変お得感はある。しかし、選択肢が多いくせにスキップが遅く、それぞれのヒロイン√に入るのにスキップを利用しても1時間くらい必要。それでヒロイン数も多いときたら必然ダレる。ヒロインの√を楽しんでいる時間よりスキップ時間の方が長い印象が強く残った。大変もったいない。Mayはギャルゲー色が強いのでヒロイン数5人は適当だと思うが、Maybeの7人はちょっと多い。
Maybeではそれぞれのヒロインでテーマはしっかりと散りばめられているのでやりたいことは十二分に分かった。シリアスシーンも大変引き込まれる。しかし、ゲームの大半を占める日常は退屈極まりない。その「日常」の崩壊との対比も確かにあるのだが、それでも大きなマイナスになってしまう。スキップ速度を早くして選択肢数を最小限にし、ヒロイン√でのヒロイン描写を増せば間違いなく「万人に薦める超名作」になったと思う。
メインのストーリー、テーマは大変練られており一見の価値は大いにある。特にMayのみさお√、Maybeの穂乃香√、◯◯◯√、エピローグのメインストーリーで総括するなら100点は与えても良いとさえ思う。それくらい圧巻なシナリオ構成。大作をプレイしたからこその達成感もありクリア後に余韻に浸れた。しかし、メインストーリーを補強するための枝葉の√によるプレイ時間の増加がキツイ。枝葉√も無駄などとは絶対に言わないが。「ロボット」「クローン」「心」「死生観」「魂」「自我」「罪」「贖罪」などのキーワードで気になる人には薦めたいと思いつつ、やはり膨大なプレイ時間がネック。無印のMayだけでそれなりに面白ければ良いのだが、そんなに面白い訳でなくMaybeまでやらないと意味がない。プレイ時間に対する効果で考えれば、Fateや村正などの方が大変優秀。なので埋もれるのは必然だよなぁ…。
本作はテーマ性を自分で考えてこそ面白さが発揮される。
そういった考察が好きな人にはたまらない作品と思う。
各√でA、B、Cエンドといった形であり、
Aエンド=ハッピー
B、Cエンド=ベター、バッド
という位置付けだとは思うが、そういった表記にせずA、B、Cとしていることからも、それぞれの√に正解はなく一つの結果を示しているだけに過ぎないことが分かる。
某エロゲで感想も書いたし、他作でもよく思うことなのだが「記憶も体も完全なコピーを行えばそれは本人なのだろうか?それを本人扱いするのはおかしくないか?」という疑問にこれ以上ないほど真正面から取り組んで描いており大変心に残った。しかも、それを少しでも前向きに捉える√もあれば逆に後悔に恐ろしいほど苛まれる√もあり、様々な考え方が出来るなと。
Maybe作中での例え話
↓
「オレが……あと一日で死ぬとしよう。偉大なる科学者である恋人が、そのクローンを作ると言い出した。今回は、記憶もそのままにできるとしよう。でもね…」
「それはオレではないんだよ。死んだ後にそのクローンが完成したとするから、話がわかりにくくなっているんだ」
「もしオレが生きているうちにそのクローンが完成したとしたら?」
「オレは、確かに死んでしまうんだ。魂、自我、言い方は何でもいい。でも確かにそこに存在していたオレは、死ぬんだよ」
以下ネタバレあり。
いやー。まじか。
恭介のその後があんなことになっていたとは。
あんな重苦しい話をエピローグにもってくるのが本当に凄い。
これだけ大作になるとえてして綺麗なハッピーエンド的なものにしがちだが、テーマに真摯に向き合ったらそりゃそんなご都合主義にはならんわな…。
結局は渡良瀬一族の狂気と恭介の贖罪の話。
安定させる為だからって、全てのレプリスに「恭介」と「レウ」の因子を入れ込むとか最高に狂ってますね!!!
それがたとえ贖罪だったとしても、全てのレプリス内で現実では達成できなかった恋物語が実現しているとかロマンよりも気持ち悪さが先行する。でも、そういった設定メッチャ好きです。
恭介=セキュリティプログラム
レウ=システムプログラム
なんで人間である恭介がセキュリティプログラムになれるの?とか思っていたが、レプリスと人間のハーフなのか。Mayで目が赤いとかいう描写があったのでレプリスなのかとも邪推していたが。そう考えればレプリス関係でMay内で明かされない伏線はかなりあったのだなと。
箇条書き
・Maybeで恭介さんメガネ変えました?と思っていたらやはり別人だった。
しかし、まさかおじいちゃんがMayの恭介だったとは。やられた。
・そういや5月なのに蝉が鳴いているおかしいよね。クリア後に気付いた。温暖化の影響か。
・レウのデータがライカという機体に存在していると思っていたら違った。
上手いシナリオ運び。しかし、リースは多重人格でなくMayのデータだったのかな?
鏡がリースのデータを指摘しているから間違いないか。
自分が本作で一番心に残ったシーン
↓
レウが涙を流し大樹の根本を掘りながら
「ねえ、なんでもいい、どっちでもいいから答えて。あたしそれに従う。あたしレプリスだもん。あたしを見てくれる人の好みになるのなんか簡単だよ…だから…お願い」
1人3役を演じ分けた松岡由貴さんは神。