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taiki_VAさんのニルハナの長文感想

ユーザー
taiki_VA
ゲーム
ニルハナ
ブランド
ゆにっとちーず
得点
85
参照数
1707

一言コメント

サークル最終作にふさわしい魂がこもった作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

サークル最終作とのことで集大成として大変力が入った作品だと感じた。
それはパッケージを見ても分かるだろう。
作品内容を知らなくても手にとってみたくなるほどの美麗なイラストと装丁。
DL販売も予定されているが、出来ればパッケージで入手して欲しいとも思う。

内容の要素を抜粋すれば
・館モノ
・近親相姦モノ
・死生観
・輪廻転生
・創作論
etc
となるだろうか。

過去作「パコられ」ほどキツイシーンが多い訳ではないので、
パコられが合わなかった方も楽しめる内容ではないかと思う。(それでも鬱な箇所はあるが


美麗なイラストで文句なし。
年齢によっての立ち絵の変化や服装差分も大変多い。
マユを笑わせる為にこそばしているCGが特に好き。

男キャラ含めて登場人物全員にボイスがあるのは大変素晴らしい。
特に本作は群像劇だからこそ。主人公=プレイヤーという内容ではないのだから。
群像劇作品には全員にボイスを付ける法律があって欲しいと思う…。

BGMも大変上質。聞き入る。
サントラゲット出来て良かった。

そんな大変完成度が高い本作だが、オススメする文章を考えるのが難しい…。
前述した要素が絡み合っており面白い内容に仕上がっているのだが、
どういった人に合うかと問われれば考えてしまう。
いろんな読み込み方を出来る濃い内容なので。

私個人としては「創作による(他者含めた)救い」の作品だという所感。


ネタバレありの部分で後述するが、あるシーンが自分にとって凄かった。
なので85点。

自分の中で84点と85点の境目は
「今までプレイした作品にはないシーンなどがあるかどうか」であり、本作にはそれがあったので。
それを未プレイの人に語って推したいが、語るとネタバレになるジレンマ。



以下、ネタバレ全開で適当に箇条書き。
ほんとはストーリーに沿って感想書けば良いのだけど、
キャラのバックボーンが濃いので私ごときが語っても的外れ&薄っぺらくなるのは目に見えているので無理と判断。
































●ニルハナというタイトルの意味がクリア後もよく分からなかったが、資料集読んで、Nill(否、嫌だ)Hana(花)とニルヴァーナの造語と分かってスッキリ。ニルヴァーナに掛けているのかとは考えていたが、Nillは想像外だった。



●サラッと資料集に書かれていたが、クレハルがサークル前作「ご主人さまにあ」のみつ希と知ってビックリ。山野さんバージョンのCGを見たらかなりまんまだったが、うみのさんバージョンになると髪の毛白くもなっているので分からないのでは。設定資料集読まずに「クレハル=みつ希」と分かる人いたらすごいな。自分はそもそも「ご主人さまにあ」自体が未プレイ。今回、コミケブースにて購入させて頂いたのでまたプレイしたいところ。



●作中で一番印象に残ったのが澄田さん死亡後のリュウヤとマユのSEXシーン。
はたから見たらリュウヤによる強姦シーンなので普通ならBGMは不穏なもののはずなのに、それが恋人同士の愛あるSEXのような穏やかなBGMでゾクゾクした。二人の今までの関係性も相まって間違いなくニルハナ作中で一番心を動かされた場面。SEXシーンがネタ的な意味以外で印象的な作品って自分のプレイするゲームの幅が狭いせいもあると思うがほとんど思い浮かばない。それがニルハナにはあった。これぞエロ無しでは語れない作品。

しかし、リュウヤも言っているが「良心からこの行為に及んでいる」ので別に穏やかなBGMがおかしい訳ではない。澄田さんが亡くなって狂乱しているマユにとっては強姦であるが、同時にリュウヤに支配されることで救われている。リュウヤが澄田さんとマユが付き合っていると知った時点で強姦していたら単なる陵辱で終わっているけど、失恋として自分なりに乗り越えようと失恋旅行をリュウヤは行っている。また、マユもリュウヤを憎んではいるものの殺人を犯してまで自分を救ってくれた兄としては信頼しており、そういった歪な兄妹関係が説得力を増す。強姦シーンを肯定的に描ける話を作りあげるのはほんと凄いなと。まあここらへんは私ののほほんとした浅い人生経験で語れるものではないと思うので深く言及できないが。

ニルハナはタツヤの物語でもあるが、リュウヤとマユの関係性が好きなせいであまり感情移入できなかった。カスリの死はタツヤだけに影響を及ぼしているのでなく、マユにも絶望を与えており、それにより更にマユの不幸っぷりに拍車をかけることになっているのでなおさらマユ✕リュウヤ推しとなってしまった。でも死が多くの人に影響を与えるという部分も描けている箇所でもあるので、カスリの死をタツヤだけのものにしなくて良かったのかとも思う。でもそれによりタツヤの存在感が薄れて、更にマユの不幸っぷりが強調されてしまいいかんともしがたい。



●サークル最終作と知っていたせいもあると思うが、序盤でユウが創作論について語ったところで作者の今までの創作活動の集大成な作品でもあるのだなと思った。

作中でマユが語っているが、
「書くことで救われた。いろんなことがあったけれど……書いて、外に発信して……それが誰かに受け入れられている。そう思うと…許せる気がしてくるの」
「書いている自分自身を認めてほしいって気持ちと、作品を愛する気持ちは…分けて考えないとだめだね」
「私は私を大切にするけれど……作品は、いろんな人に大切にしてもらいたい。それなら負の感情だけじゃだめ……愛さなきゃ。奉仕の気持ちになることよ、なんて…ふふっ」
「読んだ人を幸せにしたい。つらいことがあったとき、隣に寄り添ってあげられる物語にしたい…」

そういう部分が本作には色濃く出ていたかなと。

「パコられ」ほどインパクト的に記憶に残るラストでは無かったけど、「パコられ」というおもいっきりユーザーをぶん殴ってくる作品を制作したサークルが最終作としてニルハナを創作したことがなんか勝手に感慨深かった。


自分も少しでも明るいほうへ進めるように頑張りたい。