シリアスゲーとしては全然悪くない。むしろ良い方だと思うが、どうしてもライターの過去作と比較してしまう。エロはメチャクチャ良かった。
呉シナリオは「D.C. ~ダ・カーポ~」「水夏」「あした出逢った少女」「何処へ行くの、あの日」しかプレイしていないが、キャラ達が持つ心の闇や設定に惹かれていた。今回シリアス寄りとのことで期待はしていた。
結論としては素材・設定はかなり良かったが、私にとっては凡作+程度だった。先が気になる展開ではあるけど、そこに至る説得力が感じれなくて不満が残った。
以下購入参考にどうぞ。後半ネタバレあり感想。
【良点】
・エロ、圧倒的なエロ。全キャラ5回以上のシーン。主人公が時々1シーンで3回射精。HCGの表情差分、またパンツ脱いだり、手の位置が変わったりで細かい。普段あんまり抜きゲはしないので、他の抜きゲのレベルが分からないが本当にエロシーンが凄いなと思った。
・イチャラブあり。シナリオゲーといいつつ個別に入るとヒロインと2人の世界を構築する。他キャラがあんまり出ないし緊張感ないとは思ったが、絵だけで惹かれた人もそれなりに楽しめるとは思う。
・尾を引く謎。先が単純に気になる。あからさまな伏線がそこら中にあるので、それがどういった意味を持つのか想像するのは楽しい。
【欠点】
・過去作のような複雑な設定などを期待すると肩透かしを喰らう可能性大。あくまで萌え絵の割にはシナリオ重視といった感じ。
・心理描写不足。イマイチ感情移入ができない。回想絵が多い割にはそこの描写も少なすぎて駄目。
・祥子ゲーとも言える。別にグランドENDを用意して欲しかった。
以下ネタバレ感想
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・共通√とか他もろもろ
文句なく面白かった。「謎の死体とそばにいる祥子」「繰り返すエデン」「乱暴された祥子」「思わせぶりな態度のヒロイン」などなど伏線がいっぱいで否応なしに期待が高まる。川遊びではヒロイン全員の裸CGで目を引かせ、祭りで浴衣立ち絵を全員に用意したことで一気に引き込まれた。グループ崩壊後の祭りの背景が消えるのも良かった。逆に言えばここまでがある意味私にとってピークだった。個別に入ると祥子√以外はほとんど1対1になり他キャラが出ない。私はグループによる絆のような作品が好きなのだが、それが全然なくて残念だった。みさき√とか個別に入った途端文音が全然出てこなくて笑った。もうちょっと他キャラも出してワイワイさせて、その上問題解決にも全員の力で向かって欲しかった。
章仕立てなのは良いけどそれを選択させる形式は好きじゃない。ノベルゲーの良いところは映画や小説と違って残りの尺が分からないというところだと思っているのだけど、目に見えて今自分が物語のどの位置にいるのか分かってしまって入り込めなかった。顕著だったのが「幕間」。全キャラでエロが3回あり、選ぶたびにエロ3回超えたら4章と思ってしまった。その上ヒロイン全員と川遊び+動物園+祭りに行くし。共通√で惜しげもなく素材を出していて素直に感心していたら使い回しでテンション落ちる。まああんだけ気合入った立ち絵を一回で終わりは勿体無いとは思うけどさあ…。流石に全員同じは本当に面白くない。
・みさき√(時間を停止したい願望は「兄に会い真実を知りたくなかった」から。
一番初めに攻略したので途中で幼いころに悪戯されていたと判明した時は黒い展開にワクワクしたが、結局は触られていただけという肩透かしっぷり。親父が連続幼女悪戯事件の犯人なわけだけど、そんだけアクティブに行動した上に娘にまで手を出しているのに、その娘がチンコ見たことないとか親父どんな性癖だよ。と思って進めていたら兄から別に憐憫とかでなくてモノが馬並で相手の内蔵がヤバイ為とか言われてまた「ハア?」だった。それなら手コキ、フェラとかさせていると余計思うのだが…。別にみさきが過去に犯されておいて欲しかったという訳ではないけど、性的虐待のようなデリケートな問題を持ち出すならそれに対して違和感を覚えないような展開にするべき。処女じゃないと駄目と配慮しているのが透けて見える。これのせいで冷めた。一応、祥子も暴行されていたから実はこちらは最後までかもと思ったがそんなことなかったし、性的虐待を本気で取り上げる気もなくキャッチャーな展開で売りたいだけだった。
でもエデンを出るまではそれなりに楽しんでいたのだが、出た後に会った兄の小物っぷりにうんざり。悪役ではなく実は善人でした展開の方が絶対綺麗に終ったはず。ロリコンでないけど、親父の所有物であるみさきを奪いたいという気持ちで暴行したとか言っていてその心情が理解不能。親父が悪戯している時にドサクサに紛れて暴行したらしいが、それなら親父も兄が共犯という認識のはずなのに、何故か兄に悪戯事件の犯人と指摘されたら親父だけ逃げたのも良く分からん。その上、みさきも兄をぶちのめしたらすっきりして「もう関わらないで」で終わるし。その暴力的な兄と結婚した女性のことは良いんですか。そうですか。結局、自分がすっきりすれば良いという自己中。母親も悪戯を見てみぬふりしていたし、後味悪いったらありゃしない。
良かったところは、情報の提示の仕方などかな。
・目が悪い(コンタクトしない)=嫌なものを見ない
・剣道・正義感=強い自分を演出したかった
・序盤で結婚式に行くところだった
とか一応綺麗に伏線は回収してくれてはいたので楽しめはした。
・文音√(時間を停止したい願望は「事故で意識不明となった」から。
立ち絵が私にとって奇乳の為、その時点でテンション低かった。共通でエデンを壊さないようにする敵的なポジションだったし、割食ったキャラのように思う。麻由紀を発見してから通報までの遅れに自己嫌悪していたけどこれもなんだか納得出来ない。もっと明確な悪意or直接的な原因でないとそこまでにならない気もするので。後半に主人公も一応事故の遠因で、それを誤魔化す為に美羽が為に靴を履かせたという展開で余計に文音の存在が薄まってしまった。
一番エデンにとどまりたいという思いは共感出来た。そりゃ自分がどんな状態になっているかも分からないしなあ。事故にあった日が5/4でみさきの兄の結婚式も同日っていうのもご都合主義を感じるが、これで駅前での伏線は回収。ホラー展開も中々良かった。キャラに魅力を感じなかった分、あのおかげで先は気になった。結局はそこまでドロドロしておらずあっさりしたものだったのは残念だったけど。もっと人間の負の部分の心理描写が欲しかった。エデンに出る前の展開がみさき√と完全に同じでがっかり。門の前で待ち受ける最後の試練とかもうちょい変えて欲しかった。麻由紀の方が絵的に好きだった。
・美羽√(時間を停止したい願望は「双子の片割れが異性であることを否定したかった」から。
一番楽しめた√だった。特にすごい大きな障害とか禍根があるわけではなかったが、美羽というキャラの内面を掘り下げた内容で、双子の片割れを自分と同一視するというのは中々面白い。初潮報告の時にわざわざ1枚絵を用意するとかすごいなと思ったが、それがこのキャラにとって自信が女性と認識するという重要なシーンだった訳だ。単純に興奮していた私の心は汚れていたようだ…。美羽のみビロートーク用CGがあるし、一番優遇されていたように感じた。他√でもかなり重要な役割を成すことが多いし、主人公を恋愛抜きでも一番考えているキャラだった。
父親の心中の最後の一押しが美羽の一言だったのは皮肉が効いている。美羽自身は世界に主人公だけいれば満足だったからこその一言だったが、それが主人公の世界の崩壊をもたらした。
・祥子√(時間を停止したい願望は「母親と共に居たかった」から。
グランドエンドも兼ねた√。祥子の「おーす」とかの気安い感じは好き。抱きつきながら「愛している」とか本当に気持ち悪いなみさき父。全てが明かされるわけだがその全ての真相が微妙で残念。真相自体が単純だったりしても良いが、それならそこに至る葛藤・心理描写が圧倒的に足りなかった。
【序盤の死体→よく知らんおっさんの自殺体】
あれだけ序盤で重要な死体がどっかのおっさんとか…。その死体利用の発想に行き着く祥子の精神がヤバイのは分かるが、その心理描写が薄すぎてまったく共感も嫌悪もできないまま物語が終ってしまった。
【祥子の母親→体験版部分で明らかに死んでいると分かる】
予想どうり死亡済だった。祥子が母親を生きていると信じており、真実を知った時に取り乱すとかあったら面白かったかもだけど、死を既に受け止めている為終始淡々としていて残念。
【エデンの存在→想いによる奇跡?向日葵が咲いたから?】
ここも丸投げかよ…
【逃げた男の子→祥子の母親の死体を見たから】
案外単純だったな。
【主人公の物語→実は人の感情の色は見れなかった。母親のファイティングポーズ勘違い。】
もうね。あんだけ煽っておいてそれかよと…。実は誰か死亡済だったとか主人公の体の一部が欠損しているとかそういう衝撃が欲しかったのだけど、なんかショボイ真相だった。結局、感情の色とか言いつつ分かってなかったという。あんまり作中で有用に活用もされてないし意味が分からない設定だった。なので驚きも少ない。その思い込みに至る親の心中への自責の念が重要だとは思うけど、ここでも感情移入出来るほどの心理描写も無く、家族が幸せだった回想もないので共感できない。焼死体のファイティングポーズは知っていたので「はあ。そうでしたか。」という感想しか沸かない。本当にあれだけ実はヒロインだけでなく主人公にも隠された自分だけの物語があると匂わせておいて、それがこれとか蛇足にしか感じなかった。題名にも「色」とあるしグランドED曲にも「色」が重要なワードとしてあるのに全然「色」が活用されていないのが本当に残念。
作品テーマとしては
「人は誰しもが自身の弱さに起因する主観による物語を構築している。しかしその物語を突き崩すのは他人であり、その弱さを乗り越える原動力も他人である。」
といった感じだろうか。
好みな設定で作品素材も良かったからこそ酷評になったかもしれないが、先が気になる展開であり物語は単純に楽しめた。出来ればもっと鬱々とした内容も今後お願いしたいところである。