「本当に不幸なヤツはこんな顔してねぇよ」
※ネタバレあります
インストール容量は5.49GB(パッチ適応後)
御桜稟 CG25枚(通常CG18枚、HCG7枚) 回想4枠
鳥谷真琴 CG17枚(通常CG13枚、HCG4枚) 回想2枠
氷川里奈 CG16枚(通常CG10枚、HCG6枚) 回想2枠
川内野優美 CG9枚(通常CG6枚、HCG3枚) 回想1枠 (※非攻略キャラ)
夏目雫 CG13枚(通常CG6枚、HCG7枚) 回想4枠
夏目藍 CG20枚(通常CG17枚、HCG3枚) 回想1枠
その他 37枚
SD絵 4枚
CG合計137枚 回想14枠
BGM42曲 ボーカル曲は7曲
音楽鑑賞モードは全クリア後に開放。BGMのみ再生可能でボーカル曲は聞けません。
■■体験版
2GBもある体験版をプレイしてみました。(本編の2章までプレイできます)
最初は2004年発売予定だった『サクラノ詩』。
2004当時は4:3の800×600が主流、発売した2015年はワイド画面の1280×720が主流で本作もこっちです。
10年以上の制作で旧素材を使っているために、立ち絵がやけに細かったり、立ち絵とCG絵が全然違うように見えたりします。
まあケロQや枕のゲームは複数原画を採用し統一感の無いキャラ絵が並ぶので、それは覚悟していたことです。
コンフィグも2004年標準くらいで必要最小限の項目しか設定できません。
文字装飾機能がなく、ウィンドウを透明にすると文字が読みにくくなるため、泣く泣く不透明でプレイすることに。
音声の個別音量設定が出来ません。特に《圭》の声がうるさくてボリューム下げたかったのですが、叶いませんでした。
「男性キャラ全部」で音声ON/OFFの二択しかありません。
と開始直後から不満点がポツポツ出てくるわけですが、『サクラノ詩』はおそらくシナリオゲーに属し
お話が面白ければいくらでも挽回できます。の予定でしたが…
ADVゲーム向きのテキストではなく小説そのままのテキストという感じですね。
本編全部でテキスト3.7~3.8MB。体験版だけで約1MBという特大ボリュームのゲームです。しかし残念なことに1MBの内の大半は「引き伸ばし」でした。
すかぢのテキスト水増しテクニックの一部を紹介します。
○大したことじゃないのにとりあえず重要そうな口調で語る
○結論を最初に言わない。本題に入るまでダラダラと伸ばす
○無 駄 な 空 白 ス ペ ー ス(こんな感じのテキスト)を多用する
○朝の3点セットイベント
起床イベント、朝食イベント、登校イベントの3つです。昔のエロゲーはこの3つをしつこいくらい強調していました。今のエロゲーは適当に省略します。
『サクラノ詩』では起床も朝食も登校シーンもほぼ毎日しっかりと書かれています。
○鳥谷真琴の招集イベント
《真琴》が「大事な話があるから」と美術部員を美術室に呼ぶシーンが多いですね。朝起きてから登校途中から美術室までを書いてテキストを増やすことができます。
そして真琴の発表は物凄くどうでもいいことばかり。部員たちにメール1つ送れば済む話が大半です。
おそらく他にも技を使っているはずです。凄まじいまでの引き伸ばし、テキスト容量を増やすだけの目的にしか使われていません。
体験版は8時間くらいありますが、無駄会話を削れば3時間程度でいけるシナリオでした。中身が薄くなっていますね。
1章パートは丸々無くしてもいいくらいです。『春ノ雪』を残す為に構成に苦労してここまで長期の延期になったことが想像できます。
現代エロゲーはボリュームが増えています。それはエロ回数の増加と付き合う前後の描写(イチャラブ)の分を水増ししているからです。
キャラの魅力を高めるためのいい水増しですね。それでは『サクラノ詩』のキャラが魅力的なのかというと……
《圭》のホモネタが相当しつこいです。声も不快要素が強め。
《明石》や《トーマス》も変態性だけが高くヒロインよりも目立っています。美少女ゲームをプレイしているんだから野郎より女の子を見せてください。
《トーマス》は2章までだと存在理由すら殆ど無く、入部を認めた《鳥谷部長》の評価も同時に下げています。
キャラ同士の会話が全く絡み合っていません。会話のキャッチボールが出来ていません。
みんな自己主張が強すぎて、《里奈》&《優美》コンビですら会話が上手くいっているとは言えないほど。
エロゲーは会話劇がメインでありボケとツッコミが必要と思っているので、会話が成立していないテキストは読んでいて面白くはないですね。
《稟》に発情要素らしきものが一応ありますが、それ以外のキャラは萌えヒロインらしいところもないですね。
テキストは良くない。なら最後はシナリオ自体はどうなんだ?となります。
『サクラノ詩』には大量の伏線があります。思わせぶりな台詞が山盛りでちらちらと見せてプレイヤーの気を引こうとしていますね。
ただそのほとんどが主人公の過去に関係しています。プレイヤー視点でわからないだけで《直哉》がゲロっちゃえばすぐに判明します。
本編3章以降で伏線回収してみないとどうなるかはわかりませんが、
少なくとも2章の《明石》の伏線回収は、謎解き要素よりも人為的パズルに見えてあまり綺麗な回収じゃなかったような。
体験版のヤマ場は2章ラストの「櫻達の足跡」ですね。
これ自体はいい話。美術部員が退学覚悟でそこまで美術にのめり込むのか?という疑問はありましたが野暮というものでしょう。
やはりみんなで1つのことを成し遂げるシーンはいいものです。いいもののはずだったんですけどね。
台無しにしたのはその後の校長とのやり取り。
>【直哉】
>「おかしいのはお前らだ。
> 芸術を愚弄するのもいい加減にしろ!
> あれを作ったのは明石だ! 俺じゃない!」
>「そこを曲げられるか! ふざけるんじゃねぇよ!」
この譲歩案を出しているのは被害者側の校長の方です。この主人公は立場をわきまえていません。
オープニングの「直哉がノリで遺産放棄した(?)」と被せているシーンになります。
「何も考えずにその場の勢のみで動く主人公」とキャラクターの一貫性を重視したとも取れますし
「成長しない主人公」とも取れます。ただ遺産放棄は自分だけの問題ですが、今度は部員全員の退学がかかっています。
「何も考えず」に「頭悪い行動」を取り「他人に迷惑をかける」。私の大嫌いなパターンです。
この発言のせいで「櫻達の足跡」の感動は全て消し飛んでしまいましたとさ。
ついでに。このエロゲー『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』のシナリオを書いたのは本当に「すかぢ」なのでしょうか?
>【明石】
>「だからそこ、もう俺が作者である必要は無い。
> 俺の名前が残る必要は無い」
別に疑っているというわけでも、何か確証があるわけでもありませんよ???
2章まではこんな感想で、体験版の時点ではあまり楽しめなくて買うつもりはなかったのですが
1.最近プレイしたエロゲーが抜きゲーばかりなので、そろそろまとも(?)なシナリオゲーをプレイしたくなってきた
2.エロゲー批評空間で『サクラノ詩』が大変なことになっている
3.10月に買おうと思っていた別のエロゲーの期待していたメインヒロイン★が(別の意味で)大変なことになっている
の理由により手のひらを返して購入してみることに。お世話になっているサイトをたまには信じて(騙されて)みようと。
購入して最後までプレイし、それでも合わなかったらここに怒りをぶつければそれでいいのかもしれません。
《雫》ルートからが本番らしいですが、この水増しテキスト苦行を抜けた先には何が待っているのでしょうか?
↓ここから本編です。
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■■ⅠとⅡ
体験版から3ヶ月ぶりのリプレイ。2週目で気づいたこととか体験版直後に書いた事に付けたしとかを。
●やっぱりテキストが酷い
プレイしててしんどいですね。《圭》のウザい声もキツいッス。
●キャラクター性
トーマス入部イベントより
>【直哉】
>(《真琴》に)「らしくないぞ。そんな連中などお前がもっとも嫌いそうなタイプだろ」
1章2章では「お前らしくない」「あんたらしくない」の単語がちらほら見られます。
作中のキャラクターですら《直哉》《真琴》《明石》らがどんなキャラなのかを把握出来ていません。場面によって「らしくない」行動を取る、みんなブレブレのようです。
この理由を考えてみたのですが
1.伏線
2.あえてブレさせることにより人間性とリアリティを持たせている
3.芸術家たちの性格は色々おかしい、という表現
4.悪ノリ
5.実は何も考えていない、思いつきでシナリオを書いている、辻褄合わせ。
文学感受性に乏しい私には4か5のような気がしてきて、やっぱり『サクラノ詩』のすかぢの書くキャラクターはどこかおかしく好きになれないと感じました。
あと《明石》は2章後半にいい人を演じたかもしれませんが、
トータルで見ればマイナスでやや悪印象寄りなのは変わりません。1つのイベントだけで全ての罪が許されることはないです。
●首謀者
1章のデッサン会で《明石》が自分が首謀者だと罪を被ろうとした。2章の「櫻達の足跡」と被せています。重要なところなのでチェックしておきます。
●伏線回収
「謎解き要素よりも人為的パズル」と書いた部分。その理由がプレイ2週目で判明。
他は水増しだらけのテキストなのに、《明石》の謎解きだけは無駄がなさすぎるんですよ。最小限の事実だけを並べています。
1週目では《明石》の計画が予想できていないと???となる場面が多かったですが、2週目だとすんなり理解できて面白かったです。
■■Ⅲ(御桜稟ルート) 65点
恋ではなく性、おっぱい。すかぢには恋に落ちる過程は書けないようで適当にドキドキさせてくっつけます。告白までの順番もワザとおかしくしていますね。
もちろんテキストは面白くありませんし発情《稟》も可愛くありません。エロゲーであるがゆえの不必要なエロ描写だと割り切るしかないようです。
感動的なシーンになったと思いきやメイド服エッチ。そりゃ飲食店の制服Hは必須とは書きましたがタイミングを選びましょうよ。
推奨ルート1人目から断筆の理由の伏線回収ですか。もっとダラダラと引き伸ばすかと予想していたくらいなのでホッとしました。
《稟》の過去の事故はほぼ予想通り。
《吹》はハズレ。正体が登場してないキャラでは当たりませんね。服のタグがヒントになっていたくらいですか。
某所で話題になっていた《吹》は《稟》から分裂説は、《雫》ルートの答えを見ると大体当たっていたようです。
シナリオはまあ無難なところに落ち着いたかな、と。期待以上でもなく以下でもない、想定通りのものが出てきました。
嫉妬属性が強いことと病んでいることは方向性が一致しているかもしれませんね。少し自虐発言があったのも伏線だったのでしょうか?
「逃走するヒロインを捕まえることで和解する」は使いやすいネタです。ヒロインを逃がしたらエロゲー主人公失格ですからね★。
高いところから落ちそうになり主人公が手を掴むシーン。も の す ご く 既 視 感 が あ り ま す。
主人公の説得はどんなカードを用意しているのかと思いきや、残念なことに説得力皆無。吊り橋効果(?)で「絶対ハッピーエンド」が発動しましたとさ。
《稟》ルートでは(性欲以外の)《直哉》の感情をほとんど描写してないのでどんな言葉も響きません。後のルートのためにまだまだ隠す方向のようです。
>【香奈】
>バカじゃねぇの? そうやって自分に都合の良い解釈ばっかりして、あんたは罪人なんだよ。」
これ正論です。小悪党キャラに言わせることにより間違った理論のように見せかけていますが、これは正論です。
すかぢ文学には沢山の「罪」があります。しかし「罪」への回答がかなり薄いように感じました。《稟》は過去の罪に物凄い速さで向き合ってしまいます。
だらだらと精神内面を描いても面白くないので、無難に過去トリックのみで勝負したシナリオということでしょうかね。
ラストの2人《雫》と《吹》は特徴ある声なのでバレバレ。旧体験版『春ノ雪』から流用したらしい「Bright Pain」は作風と全然合ってないED曲でしたね。
■■Ⅲ(鳥谷真琴ルート) 30点
超高難易度。
「浅生詠」さんがシナリオ担当とのこと。エロゲーなのでパンツへのこだわりを入れたようですが正直無かったことにしたいですね。
パンツが面白くない!くどい!
それ以外は、すかぢと違い悪ノリギャグは無く全編《真琴》の内情を描いています。キャラはちゃんと書けています。
視点変更が多いのが特徴。会話中心なのにみんな言葉を選んで抽象的なことしか言わないのでわかりにくい。
シナリオの構成が良くないと感じました。
《圭》の血縁をいきなり言い当てたり、《圭》の母親をいきなり言い当てたりします。用意された伏線を全部結びつけるための結論にも見えなくもない。
何と言いますか、「浅生詠」さんのテキストは結論が唐突で簡潔すぎるんですよね。
道具は確かに揃っている。でも梯子もなく唐突に「兎は月に行きましたおしまい」のパターンなんですよ。伏線と結論を結びつける梯子が皆無だったと思います。
そしてその伏線には言葉遊びが多くて多くて……私には組み上がらないおしゃれパーツの羅列はかなりしんどかったです。
主人公は白ヤギさんと黒ヤギさんに手紙を渡す郵便屋さん。物語の傍観者でしかないのに、行ったり来たりするだけで結論にたどり着いてしまいます。
母と娘。《校長》との和解も「話し合ったら何となく」で解決。結論の弱さ、解決編に爽快さがないことも《真琴》シナリオの評価を下げています。
また次の2つ目のテーマと交わらなかった単独のテーマだったのも残念なところ。
「2人の天才のために」
このルートでは《圭》はほとんど出番はありません。喋らせるとウザキャラになって雰囲気が壊れてしまうので、絵に集中する芸術家にして台詞無しにしています。
その為《真琴》と《圭》の関係があまり見えてこない、さらに言えば《圭》の才能が見えてこないことがあります。
ホモキャラ=ギャグ要員をシナリオに組み込もうとした弊害が出ていますね。
《真琴》ルートはBAD END要素を含みます。当初の目的は2つとも達成できなかったのですから。
「それでも満足している」は作者の「大事なのは結果ではなく過程だ」のメッセージでしょうね。その過程が面白かったら良かったんですがね……
■■Ⅲ(川内野優美ルート) 80点
日常の普遍的な狂気。好きなものを嫌う破壊衝動を持つ《川内野優美》。
過去編では「歪んでいる性格」の点で一貫性があり、ギャグ要素がないことは重要。
同性愛と電波キャラを得意とするすかぢの持ち味が生かされたキャラがやっと出てきました。
これまでは皆無だった演出面も、背景・文字配置に凝っていて《優美》の狂気表現を増幅させていますね。
それに対し《里奈》は空気キャラです。
黒いインパクトある《優美》はヒロインポジションであり、《里奈》は聞き手側のキャラで主人公のような位置付けですね。
《伯奇》と違って心はある。あると言ってもごく普通の感情で、子供時代の《優美》への嫉妬も普通ですね。特徴をあえて出さないキャラ作りをしています。
なので「ZYPRESSEN」は《氷川里奈》の物語という感じではないですね。《川内野優美》の恋愛シナリオでした。表エンドは《優美》の失恋で締めですしね。
珍しい普通キャラですが、《直哉》との現代恋愛パートでは発情《稟》とキャラ丸被りだったのを見逃しませんよ。キャラの書き分けが最後までは出来ませんでしたね。
狂気の過去編にはオチも中々の出来。誰でも知っている「赤ずきん」の真の原作をすかぢなりにアレンジ。
文学からの引用がいくらなんでも多過ぎる『サクラノ詩』ですが、遠回しすぎたり的に当たっているかもわからないような使い方が大半です。
赤ずきんくらい直接的で分かりやすいと読んでいる方は楽です。
ところでこの子は何歳なのでしょうか?いや建前は18歳以上ですよ。
学園1年生なので15歳。《直哉》に会ったのは6年前だから小学4年生の9歳となります。立ち絵もお子様にしか見えません。
《優美》は裸にひん剥いて射精とか、《里奈》は宮沢賢治を語るとか、精神年齢がおかしすぎるでしょうに。中二病=14歳程度だったら丁度いい話になるんですがね。
《直哉》は2つ年上。9歳の女子(病弱)と11歳の男子(体力自慢)では体格に大きな差があるように思えますが、子供立ち絵は同じくらいです。発注ミスですね。
以降のシナリオでも年齢がおかしい子供立ち絵がちらほら見られます。
「過去編」「前世編」「現代の恋愛」が3つ同時進行し、3視点から語られる物語はちょっと構成に難あり。
でも構成より、過去編以外が先の話が全部読めてしまうつまらないものだったのが残念です。《伯奇》の話は最初に大体のオチを教えた状態なのでつまらないですし、
千年桜伝承は《直哉》がべらべらと設定を全部説明してくれます。後のシナリオのためにここに入れたのだと予想できますが、絡み合ってなく微妙だったかなと。
百合娘が主人公を嫌うが最後には認める、多分3作品以上のエロゲーでこれと似たようなシナリオを見てますね。
《稟》ルートの人形と間違えるトリックもそう、どこかのエロゲーで見たことあるようなトリックばかりなんですよ。
決して悪くはないのですが、既視感の集合体みたいなエロゲーかなぁと。
《直哉》の右手の怪我も全キャラがちゃんと認識しているじゃないですか。隠し切れるエロゲーシナリオには無理があります。
特に、芸術家が人物観察に優れている描写が多い本作で気づかない訳がないですよね?《稟》ルートの《稟》も気づくのは時間の問題だったでしょうね。
恋愛は「錠前制」。
《優美》も《里奈》も鍵を持っています。《優美》の許可がもらってから《直哉》の想いに答えることができます。
《里奈》は《優美》の鍵を持っています。レズですが《里奈》の許可なしでは最後の一線を越えれません。裏エンドでは《里奈》が攻めキャラでびっくり。
お互いを想っているからこそ、自分だけでは恋愛は前に進めないのです。
エロゲーの主人公の行動は「奉仕」。18年前のエロゲー革命以降、お節介ストーキング型が主流になりました。
お節介ではなく奉仕だと主人公自身のことを考えない印象がありますね。なのでちょっと極端かなとも感じますが、いや面白い解釈だと思いますよ。
ピンチの時に助けてくれるヒーロー。それってエロゲー主人公そのものですよね?大半のエロゲーの共通事項で特別でも何でもありません。
最後の筆。《稟》の事件が最後かと思ったら、《里奈》の為に最後の力を振り絞って絵を描いた設定が追加されました。
母親の死―「櫻日狂想」を描いた“最後の筆”。《明石》の協力で何かを描いた(?)らしい“最後の筆”。
最後はまだまだありますよ!最後の作品詐欺に騙されてはいけません。ヒロインに惚れるためならいくらでも最後を増やしてきます(笑)。
■■Ⅲ(夏目雫ルート) 80点
ネタバレ回です。
夢張の巫女が登場。夢を見ていた《里奈》が《伯奇》の血縁か何かと思ったら 全 く 関 係 な か っ た ようです。
ファンタジー設定だからって適当に済ませようと考えているようですね。
>【直哉】
>「違う、違う。人を好きになるっていうのは、身体だけの問題じゃないだろ。」
少なくとも《稟》ルートは身体目当てにしか見えなかったですね。
恋愛描写が書けないから突然デレキャラにしたり肉体に欲情するパターンしかなく、純愛主人公を謳っておきながら「そうなのか?」と疑問になる場面だらけです。
《雫》との恋愛?そんなものはありません。このルートは「《雫》と恋仲になる理由がない」シナリオになっています。
過去編3連発で種明かしです。大体は予想通りというか欠けたパズルがすんなり埋まったというか。
贋作制作について。「最後の作品は《葛》のため!」。《里奈》での私の予想が的中ですね。
下ネタしか言わない《葛》を助ける動機が弱く、戦うべき敵の中村家を小悪党と描いているのでさらに動機が弱い。
この辺はもう少し夏目家システムを掘り下げられるのを期待しましょう。
病室で《健一郎》が全部説明してくれるパートが多かったのと、贋作制作が高速で行われたためにシナリオ構成・バランスは悪い。
美術品の6割は贋作である。
エロゲーの何割が「贋作」なのでしょうか?『サクラノ詩』は真作?贋作?すかぢに騙されずにちゃんと見抜けた人はどれだけいるのでしょうか。
ただ1つ。《草薙健一郎》が落款を入れるシーンだけは圧巻でしたね。
芸術家が知識を披露したり才能があると連呼したところでプレイヤーには響かないんですよ。
真の天才にはグダグダなテキスト引き伸ばしなど必要なく、一筆入れることだけでプレイヤーを魅了すればいいだけです。
この落款シーンだけは間違いなく「真作」だったでしょう。他はよくわからないですけど。
《稟》の天性は「千年桜による記憶消去」でつじつま合わせてきました。千年桜は何でもアリですね。
>【健一郎】
>「まぁ、教訓として分かるのは、“奇跡”の後処理を“奇跡”で行うって言うの
> はあまり懸命なやり方ではない。って事だな。」
すかぢ自身も登場人物に言わせています。ファンタジーをファンタジーで埋め合わせ続けることをご都合展開と呼びます。
>【直哉】
>「記憶を? 消す?」
>【吹】
>「一応は、私は千年桜の力で生まれた者です。自分の足跡を消すぐらいは出来ます……」
千年桜は万能ですねぇ。
>【雫】
>「(櫻達の足跡は)特に、は直哉に対する想いが、いろいろ交差しすぎている……」
あれは《明石》が作ったものだ!だったはずなのにいつの間にか《直哉》が中心人物に。
想いって《稟》の発情とかその辺ですよね?恋愛描写が弱い本作で絵を介さない想いはとてもとても弱い。
2章の時点だと、自己主張が強い部員たちは交差していません。美術部員が退学覚悟でそこまで美術にのめり込むのか?を本気で考える必要も出てきたかもしれませんね。
「櫻達の足跡」事件が伝説となり勝手に肥大化しているようにも。《直哉》を持ち上げる材料に使われるほど本当の《明石》の想いがどうでもよくなってきます。
>【吹】
>「誰かのためであるならば、自分の名が残らないとしても、作品を作り上げようとする」
>【直哉】
>「当たり前だろ。俺にとって描くという事はそういう事だ。」
↓
>【直哉】
>「だからさ、俺はいつだって、また描き始めるさ」
>「誰かのためじゃない……。他ならぬ、自分のためにさ」
櫻の芸術家にとって絵を描くのは「誰かのため」か「自分のため」かどちらなんでしょうね?
もちろん単純な2択ではなく、両方を満たす答えがあるのかもしれませんが。私はこの言葉に説得力の弱さを感じました。
だからすかぢが書くキャラは好きになれません。
物語の裏側を見せるシナリオだっただけに表側との矛盾点・疑問点が沢山ありすぎて、突っ込み出すと止まらなくなるルートでした。
過去の話ばかりで現代ではほとんど何もしないので、ちょっとモヤモヤが残る終わりだったかもしれません。
まあ「親父の落款かっけー」で思考停止して《雫》ルートを楽しむのも1つの正解なのでしょうが。
■■Ⅳ(草薙健一郎の過去編) 83点
ショートシナリオ。短いと無駄なテキストも無くなります。
若い《草薙健一郎》は熱血馬鹿です。ブレる《直哉》との比較でよりストレートな感情が伝わってきますね。
《水菜》を娼婦にするのはシナリオ上必要なことです。でもよく考えると《藍》の処女膜(出血無し)を護るために用意されたキャラにも思えます。
左手を折られた《健一郎》がとった行動。教え子に「脱げ」と(笑)。
《中村章一》がオランピアの絵を破る計画―「敵キャラは馬鹿」があったからの行動ですが
冷静に考えると絵を描いて10億円を脅し取るというのも変な話ですよね。まあ《夏目琴子》なら他のやり方もあったでしょうが、
このゲームは絵画がテーマなので《健一郎》が主人公のシナリオで「痛みに耐えてよく頑張った。感動した!」をやりたかったようです。
オランピアの絵を除いて突っ込みどころもなく、熱い主人公を見れるいいシナリオでした。
《水菜》は2度裏切ります。1回目は腕を折られたとき、2回目は人身売買の時。でもそれも《水菜》のキャラクター性です。
3度目は許さないと誘拐して終わります。3回くり返すようなことはエロゲーでは許されないでしょう★。
■■Ⅴ(草薙直也ルート) 90点
5章は誰の話なのでしょうか?
Hシーンがある《藍》? 主人公に一番影響を与えた《圭》? ラスボス化しクレジットで一番上になった《稟》?
私はどれも違うと解釈。今まで絵を描かなかった主人公が絵と立ち向かうことが5章の最大のテーマでしょう。このシナリオは《直哉》のためのものです。
シナリオタイトルは「幸福な王子」。ツバメ役の《圭》がヒロインという見方もできるでしょうが、銅像役の《直哉》は本当に幸福だったのかを問うのがテーマです。
天才が与える影響。《真琴》ルートで「櫻日狂想」が《真琴》の世界を変え、《里奈》ルートで公園の絵が《里奈》の死を消し去ったように、天才の絵は人を変えます。
登場人物ほぼ全員が直哉の断筆理由や贋作などをほぼ完璧に見抜いてますね。
《圭》も贋作を見て遅れながらもようやく気づき、ホモトークでない普通の会話をすることで和解。
ネタに走らなければ《直哉》が再び絵を描く日はすぐに来たかもしれませんね
迷いが消え(というか今までの絵を描きたくないでござるモードは何だったか?)
熱血主人公モード一直線になった《直哉》は爽快であり、主人公が普通に活躍する物語は見てて気持ちいいものです。
《吹》との絵バトルやムーア展での《圭》とのバトルは楽しいですね。
私は3章の《長山》さんが嫌いで、5章の《長山》さんが好きで、6章の《長山》さんは嫌いです。同じような感想を持った人は結構いるみたいです。
凡人代表の《長山香奈》はプレイヤー視点の代言者ではないかと考えています。
3章でストーキングを続けた理由。能力はあるのに自虐的な《直哉》に対する怒りの行動。
絵に再び向かった5章では少しいいキャラに。自虐を止めやる気を出した主人公に好意的になります。
《稟》の再覚醒について。
《圭》の死→《雫》の再伯奇化→《稟》の記憶が戻るのちょっとわかりにくい流れ。
『サクラノ詩』はファンタジー要素を含むエロゲーです。でも「千年桜って《稟》の記憶と才能を消したかっただけの設定やん」となり
散々引っ張った「千年桜伝承」も「夢呑の巫女伯奇」も最後までプレイすると、特に要らなかった、他の何かに変更しても特に困らない設定でした。
ファンタジーは都合を合わせるだけの逃げではないですよ、と。使うならもう少し最後までシナリオに絡めてほしかったですね。
ラストの《稟》との会話。最後の知識披露会は拷問レベルですね。
文学からの大量の引用がある本作ですが、意味のある使われ方をしたのは「赤ずきん」「幸福な王子」の2つくらいです。
例えば何回も出てくる「春と修羅」「春日狂想」。主人公による解説は複数回あっても答え合わせはなし。
考察しようと思えば出来るかもしれませんが、そんな無理やりつじつま合わせまで付き合うつもりはないですね。
《中村章一》等のわかりやすい悪役が主人公のアゲアゲに繋がっています。
ただ悪役は必要だから役割を演じているんですよ。踏み台は使い続けないと上がれないキャラにも問題があり。
私は裸の王様よりは愚かな人間でありたい、ですね。まあ一応はお店で購入したんで言いたいことくらいは全部書きます。踏み台になる気はないですよ。
5章まで物語は完成しているように見えるのですが最終6章は何をやるのでしょうか?バットエンド要素を含んでいたので「絶対ハッピーエンド」発動なのでしょうか?
■■Ⅵ(蛇足) 0点
最終章まで来て2章と同じことをやってどうするのでしょうか?
2章の「櫻達の足音」を台無しにするアート。《草薙健一郎》を過去の人とする破壊行動。
約10年後のシナリオを描いた理由として考えられるのは、本作『サクラノ詩』が11年前に発売予定だったことがあります。
2004年の芸術と2015年の違い。古い/新しいではなく「楽しむ」が答え。
エロゲーは面白ければ何でもいいんですよね。最後の最後まで来て11年前の亡霊を見ても面白くないんですよ。やることは2章と変わってないですし。
よくある「《圭》の死」「《稟》の発言の真相」「《雫》の伯奇化」「新キャラエロ無し」「分割商法で未完成品」……等の批判はここでは最小限に。
続編ありきのゲームなのは事前情報で分かっていたことですし。《圭》《稟》《雫》の話はストーリー上必要なものです。
6章が「蛇足」である理由は
●●●『サクラノ詩』はテーマを書き切っていない●●●
「幸福の先への物語」
幸福な王子はその才能を削りヒロインたちを救済していく。
「奉仕」表現は面白い解釈ですが、エロゲーは「主人公がヒロインの悩みを解決する」がスタンダードなので特に目新しいところはないです。
むしろ5章の藍Hシーンへの分岐「ヒロイン救済は正しかったのか」に答えを出せたら面白くなったかもしれませんね。
ツバメが死に幸福な王子もボロボロになる。5章で物語は終わっています。
みすぼらしい銅像になった《直哉》は本当に幸せだったのか?を見せる為のシナリオが6章だったと解釈は一応可能です。
でも6章《直哉》は本当に「最悪」だったのでしょうか?よく考えてみましょう。
旧美術部員のメンバーは去りました。でもその代わりに『サクラノ刻』用新ヒロイン達にモテモテです。
《直哉》はステンドグラスのトリックを思いつけるくらい、まだ超天才のままです。《フリッドマン》も大人《直哉》の才能を認めています。
10年前から何も変わっていません。
2章との差別化が出来ていません。一見、大人《直哉》が成長して《明石》のポジションになったように見えますが、違います。
何故なら10年前に《明石》は制作者権利を放棄した後、《明石》は持ち上げられずに《直哉》が人気者になりました。《明石》は主人公でないからです。
では6章はどうでしょう?制作者権利は放棄しましたが、それなら《長山》さん達が世間に評価されたのでしょうか?そうではないですよね。
逆に大人《直哉》が《桜子》《フリッドマン》《稟》からの評価が大幅アップしています。
2章 実質制作→明石 名目制作→直哉 ヒーロー→直哉
6章 実質制作→直哉 名目制作→直哉 ヒーロー→直哉
つまり《直哉》に「主人公補正」が大きく掛かっていて、学生でも大人でも同じように主人公マンセー展開にしているから、何も変わってないのです。
サブタイトル「櫻の森の下を歩む」だったはずなのに、学生時代と全く変わらずに《直哉》が大活躍したら、また「櫻の森の上を舞う」になってしまいます。
こうなった理由は「すかぢが恋愛を書けない」ことが関係してくると思われます。恋愛をうまく書けないから無難に「主人公補正」に頼ろうとする。
過去の栄光を失い「最悪」のはずなのに、「主人公補正」のせいで10年後も変わらず輝きまくっています。
「幸福」のテーマで10年後のどん底《直哉》を描きたいなら、「主人公補正」のコントロールは必須事項。それが出来ていません。
「エロゲーなんだから主人公が大活躍するのは当然」は普通のエロゲーテーマなら成り立ちますが、『サクラノ詩』の幸福テーマでは大活躍してはいけないのです。
「才能」について少し。このゲームでは《草薙健一郎》や《御桜稟》のような超天才がいます。でも《草薙直也》は凡才ではなく天才です。
5章で《吹》と引き分けているのだから、例え『サクラノ刻』で完全体《稟》と対決してもいい勝負ができるでしょう。決して凡人エンドではありませんよ。
才能をテーマにしたエロゲーがいくつかありますが、才能No.1キャラのみが天才ということはなくNo.2やNo.3のキャラもまず天才です。
《直哉》は「弱い神」という表現はそのままの意味ではなく、才能の方向性です。《凛》と《直哉》は別タイプの天才なだけです
「弱い」神と書いてあるからといって《直哉》が天才ではないと勘違いしてはいけません
本作では比較用の凡才キャラ(《長山香奈》)はちゃんと用意されています。
超天才 草薙健一郎
超天才 御桜凛
超天才 夏目圭
超天才 草薙直也
凡才 長山香奈
《草薙直也》は自己評価が低いキャラです。いつも自虐的に自分を語ります。それに対し、ヒロイン達や《圭》はそんなことはないと主人公の強さを信じています。
3章ではヒロイン達を救い、6章ではセロファンのトリック。まあヒロイン達の《直哉》評価のほうが正解ですよね。
《直哉》はまだまだ恵まれているんですよ。それなのに最悪が最高と言われても
「お 前 が そ う 思 う な ら そ う な ん だ ろ お 前 の 中 で は な」としか。
もし本当に「幸福の先への物語」を書きたいのなら、
「櫻達の足跡」事件そのものをカット、もしくは《桜子》達に解決させ大人《直哉》はサポート役にするべきだったでしょう。
「幸福の王子」は全てを失い真の意味で最悪にならなければテーマにならないのです。(その状況を描いたとして、面白いかどうかは保証できませんが)
そうではない「主人公補正」がすかぢの計算通りだとしたら、
(本当は輝いているのに)「俺は輝いてないぜwww苦しんでるぜwww(プゲラ」のような自虐自慢が真のテーマってことなんですかね。
自分自身を理解できず、周りの人が教えてくれているのに耳を傾けず、自分を攻め続け自虐ネタをくり返す主人公。
もしこうなら、私には《草薙直也》に共感するのは到底無理ですね。このゲームはキャラクターが駄目だと言うしかないです。
例の嘔吐シーンから引用します。
【藍】 「どうした、直哉、つらそうだけど、嫌な事でもあったのか?」
【直哉】「嫌な事なんて無かったさ。良い事ばかりだ」
【藍】 「そうか、良い事ばかりでも、直哉はつらそうなのだな」
【直哉】「良い事ばかりでもつらそう?ああ、そうなのかもしれないな」
【藍】 「何故だ? 良い事ばかりなら、人はつらくなんかならないだろう?それでも直哉はつらいのか?」
【直哉】「人間はさ。人はさ」
【直哉】「上手くいっている時に、ちゃんと生きている時に」
【直哉】「一番調子にのっているんだ」
【直哉】「一番うまくやっている時、一番まともな時が、一番クソなんだよ」
【藍】 「一番うまくいってる時に、一番ダメなのか? それは不思議だな。なんで、一番うまくやっているのに、一番ダメなんだ?」
【直哉】「だって、うまくいってる事に気がつかないからさ」
【直哉】「これが普通だと思ってしまうから」
【直哉】「でも、それは普通じゃないんだよ」
【直哉】「人生が輝くなんて事」
【直哉】「きらきらとした人生が普通なんて」
【直哉】「まともじゃない」
【直哉】「でも、まともじゃない事に気がつかない」
【直哉】「すべてが光っているから」
【直哉】「まぶしすぎるから、見る事が出来ない」
【直哉】「見る事が出来ないから、人は気がつかない」
【直哉】「俺たちは気がつかない」
【直哉】「でも、それはまぶしさが故なんだろうか?」
【藍】 「どうなんだ?」
【直哉】「分からない……」
【藍】 「分からないのか……」
【藍】 「だから直哉はつらそうなのか?」
【藍】 「今、うまくいっているから。輝いてるからこそ。直哉はつらいのか?」
【直哉】「違う、そうじゃないんだ……」
【藍】 「違うのか?」
【直哉】「今の俺は輝いてなんていない。うまくなんていってないさ。最悪だ」
【藍】 「直哉は、今が最悪だと思っているから、そんなに荒れているのか?」
【直哉】「そうさ……そうさ、人間はさ。俺たちはさ」
【直哉】「うまくいってない時、すべてがデタラメな時に」
【直哉】「鬱になって、酒飲んで、ゲロ吐いて、血吐いて」
【直哉】「一番うまくいってない時、一番クソな時が、一番生きてる時なんだよ」
【藍】 「うまくいってないのに、一番ダメなのに、一番生きているのか?」
【直哉】「いいや、言い方がまずいな。それだと……」
【直哉】「うまくいってないわけじゃない」
【直哉】「ダメなわけじゃない」
【直哉】「ダメだったら、苦しむわけがない」
【直哉】「全然ダメじゃないから、俺たちは苦しむんだ」
【直哉】「イケてるから苦しむんだよ」
【藍】 「イケてるから苦しむのか……逆説的だな」
【直哉】「ああ、逆説的だ。全然あべこべだ。最高は最悪で、最悪は最高」
【直哉】「すべての最高には、最悪がべっとりはりついている」
【直哉】「もちろん逆も然り」
【直哉】「最高は最悪で、最悪は最高なんだ……」
【藍】 「最高は最悪で、最悪は最高か……なんだか良く分かるよ。直哉」
【直哉】「ああ、他人からみたらクソみたいな人生で」
【直哉】「クソみたいにどうでもいい時」
【直哉】「たぶん、俺たちは一番生きているんだよ」
【直哉】「楽しんでいるんだよ」
【直哉】「俺は、そう思うんだ」
【直哉】「だからさ、それが無くなったら終わりだ」
【直哉】「苦しみは大事だ」
【直哉】「悔しさは大事だ」
【直哉】「世の中のクソみたいなものは大事だ」
【直哉】「それが感じていられるのなら」
【直哉】「それは最高の生き方だ」
【直哉】「何も感じる事が出来ないなら」
【直哉】「生きているのか死んでいるのかわからない」
【直哉】「苦しみを感じられれば」
【直哉】「それだけでも生きていける」
【直哉】「生きていこうとするから、苦しい」
【直哉】「身体が生きたいから、苦しい」
【直哉】「そういえば、親父は死ぬ前にそんな事を言っていた」
【直哉】「苦しい事は正しい」
【直哉】「抗っているのだから」
【直哉】「消滅から抗っているのだから」
【直哉】「だから苦しい」
【直哉】「身体の痛みを受け入れろよ」
【直哉】「それが生きるって事だ」
【直哉】「今だと、親父の言葉がよく分かる」
【直哉】「輝く時だけが生きている時じゃない」
【直哉】「うまくいっている時だけが、生きている時じゃない」
【藍】 「直哉は今苦しいのか?」
【直哉】「ああ、苦しい」
【藍】 「直哉は今つらいのか?」
【直哉】「酒飲みすぎて……ゲロ吐いて、吐いて、吐きまくって」
【直哉】「吐きすぎて食道が破けて血がまざっても」
【直哉】「それでも吐き続ける」
【直哉】「吐いて、吐いて、吐いて」
【直哉】「苦しい」
【直哉】「でもさ、それって当たり前の事でさ」
【直哉】「酒を飲み過ぎたんだから、そりゃ苦しいよ」
【藍】 「くすくす、そうだな。酒を飲み過ぎたのなら、当たり前だ」
【直哉】「でも、同じなんだよ」
【藍】 「同じ? 何が同じなんだ?」
【直哉】「生きるって事がさ」
【直哉】「なんだって分量を誤れば、吐き気がするぐらい、気分が悪いもんだ」
【直哉】「それが最高にきらきら光ったもので、最高に幸せなものだって、分量を誤れば血を出してでも吐き出したくなる」
【直哉】「最高に輝いた瞬間だって、度が過ぎれば苦痛以外の何物でもない」
【直哉】「度が過ぎれば何だって同じだよ」
【藍】 「そうだな。度が過ぎれば快楽は苦痛になる。なんだってそうだ。でも、お前は浴びるほどに酒を飲んだ」
【直哉】「ああ、そうだな」
【藍】 「なんで、気持ちが悪くなると分かっていて酒をそんなに飲んだんだ?」
【直哉】「そりゃ、人が幸福を望むのと同じ事だよ」
【直哉】「幸福だって、酒と同じで、度合いが過ぎれば吐き気がする。そんなクソったれなもんが、幸福なんてもんなのに……なのに」
【直哉】「人は幸福を望む」
【直哉】「人には許容量以上の幸福なんて、吐き気でしか無いのに、それでもその幸福を手に入れようとする。呑み込もうとする」
【直哉】「でも、度が過ぎた幸福に人は耐えられない」
【直哉】「幸福に耐えられずに、気分が悪くなってトイレですべて流してしまう」
【直哉】「そんな光景が、週末じゃ、そこいらの場末の酒場でみかける」
【直哉】「ありふれた出来事だ」
【直哉】「人にとって、度が過ぎた幸福は、苦痛でしか無く」
【直哉】「また、苦痛自体も幸福と背中合わせのものでしかない」
【直哉】「不幸なんて苦痛は、幸福と背中合わせでしかない」
【直哉】「不幸もまた、幸福の変わった風景でしかない」
【藍】 「直哉が幸福か?」
【直哉】「だから苦しんでるんだろ?」
【直哉】「本当に不幸なヤツはこんな顔してねぇよ」
【藍】 「そうか……」
【直哉A】 10年前
一番うまくやっている時、輝いている
でも普通でないことに気づいていない
【直哉B】 10年後(最近)
一番クソな時
苦しんでいない、だから一番生きていることに気づいていない
【直哉C】 嘔吐
つらい、苦しい
良い事ばかり、イケてる(ただし輝いていない)、「度が過ぎた幸福」状態
直哉B(落ちぶれ)を経験し、壁画を作って再び直哉Aに近づいたことで
直哉Aが普通でないことと、直哉Bが一番生きていることに気づけた(ただし直哉Aのことはわからない完全に理解はしていない)
嘔吐している直哉Cは「一番クソな時」「一番生きてる時」ではないようです。イケているとはっきり書いています。
直哉Bでは「ダメだったら、苦しむわけがない」。直哉Bと「苦しんでいる直哉C」は別物であるとして進めます。
でも直哉Cが苦しんで幸福になるためには「クソみたいにどうでもいい時」「一番生きている時」に近づかないといけません。
直哉A>>>>>>直哉C>直哉Bの状況なら幸福のテーマを書くことができるます。
それで直哉Cの状況を見ると
完全復活しモテモテの主人公です。直哉Aに近い(イコール扱いでもいいくらいです)
「輝いてなんていない」と言ってますが私には輝きまくっているようにしか見えませんでした。
直哉Aについて「分からない……」と言っているのでこの辺は直哉Cがまだ整理しきれてない部分かもしれませんね。
直哉Cは「うまくいってないわけじゃない」「ダメなわけじゃない」「イケてる」とはっきりと書いています。
直哉A>直哉C>>>>>>直哉Bでは幸福のテーマになりません。
すかぢが落ちぶれたままのエロゲー主人公を書くことができず、テーマを無視してエロゲー主人公を大活躍させたのが原因と推測できます。
やりたかったのは直哉A>>>>>>直哉C>直哉Bのはずですが、こうは出来なかったこともすかぢは自覚している?ようです。
そこでこの矛盾を解消するためにすかぢは、「最高は最悪で、最悪は最高なんだ」ルールを追加しました(笑)。
反転ルールを追加したことでイケイケだった直哉Cだけを反転させて落ちぶれている状況に近づけた。
直哉A>直哉C>>>>>>直哉B
↓反転ルール↑
直哉A>>>>>>直哉C>直哉B
直哉Cが「イケてるから苦しむのか……逆説的だな」なのに、
直哉Aは「輝いていている(イケている)」のに反転していません。輝いていて普通じゃないことに気づいていないからですね。気づいたら反転OKのようです。
これががすかぢの詐欺トリック。すかぢはプロットをあまり作らないででシナリオを書いているという話を聞きます。
その為シナリオに矛盾点が出たり構成がおかしくなったりします。その修正作業を【こっそりと】行なっているのです。
「いいや、言い方がまずいな。それだと……」からの12行が矛盾解消のルール追加です。
大半の人は贋作に気がつかないことが真のテーマかもしれませんね。
本来の幸福のテーマを書くにはどうすればよかったのか?
直哉Aと直哉Bの状況(幸福に繋がること)に気づくために直哉Cは必要です。
直哉Cを復活させない活躍させない。主人公を辞めて傍観者にすることが求められます。(それでこそ明石になれる)
直哉B=直哉Cの場合
イケているのに一番クソな時。完全復活し学園のヒーローに再びなったのに「他人からみたらクソみたいな人生で」とまた自虐的なことを言っています。
普通の人生でそんなにクソな人生には見えないのですが。さらに言えば輝いていたはずの直哉Aも貧乏生活でしたよね。(←春ノ雪の名残かもしれませんが)
そもそも直哉Bは本当に落ちぶれていたのか?芸大に入っておいて就活しなかったのは次回作への伏線なのでは?という疑問もあります。
そして直哉Bは10年間で幸福に気づけたのでしょうか?おそらく壁画を作って始めて気づけたということは「ダメだったら、苦しむわけがない」状態だったのでしょう。
やはり直哉Cは別の存在説を推したいところです。
まあこの場合はますます大活躍して直哉Aに近づけてはいけないわけで、直哉Bには本当にダメダメな人生を送ってもらうことになります。当然できていません。
これが超天才の櫻の芸術家様にとっての「クソみたいにどうでもいい時」だとするなら、私には共感するのは無理です。
>【直哉】
>「作品は見る人によって、はじめて完成される……。いや更新されるのかもしれません」
エロゲーは制作者のエゴではなく、購入しプレイする人がいるからこそ成り立つということですね。
>【直哉】
>「でもさ、終わりって、そうやって区切るものなのかね?」
>【直哉】
>「案外、終わりだと思った、その先もあったりするかもしれないぜ」
完結した物語の続きを描くリスクはとても大きく「5章で終わりでよかった」の声を跳ね飛ばすパワーが必要。
区切らずに6章を書いても、テーマを書き切れなかったことは失敗でしたね。
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■■総評
「長かった割には普通のエロゲーだったかな?」がクリア直後の感想でした。まあそれ以上に「6章ふざけんな!」の思いが強かったんですが(笑)。
テキストは駄目、キャラは《優美》《健一郎》など一部の例外を除いて全然ダメです。恋愛描写は無かったほうが良かったくらい。
完成度は高くなくマイナス要素や不必要な要素が山ほどありました。
でもひねくれて見なければ《雫》ルート→4章→5章の流れは素直に楽しかったです。神ゲー級ではないですけどね。
シナリオトリックはあまり綺麗じゃないんですが、まあそれなりにまとめてきたかな?という印象です。
少なくともテーマがすごいとか文学として完成しているものでないのは確実。
70点台つくかな?と思って計算したところ63点という点数が出ました。
「そんなに酷かったっけ?」と「いや楽しめなかったから当たり前だ」の2つの感想があります。
不満点を全部吹き飛ばしてくれる神展開は残念ながら無かったですね。あと6章の終わり方が納得いってないので締めが悪いと印象は悪くなります。
まあエロゲーはエンターテイメントということでこの数字で。見方を変えても多分70点台止まりです。
大量の不満点を我慢でき、「そこそこ」のシナリオゲーを求めている人に向いています。
天才という名前だけに騙されないようにしましょう。
■■あとがき
買うつもり無かったものを購入し ご ら ん の 有 様 でした(いや楽しめた部分もたくさんありましたよ)
実は購入動機に4番目があります。
枕の前作「向日葵の教会と長い夏休み」はエロゲー批評空間にたくさんの長文感想と考察が投稿されました。
現代にもシナリオゲームはいくつかありますが、昔と比べて内容を深く考察する人がほとんど居なくなってしまいました。
そんな時代に考察する人が残っている貴重なメーカーがケロQや枕のようです。私の超駄文を参考にしてくれた人もいるようです(有難いことです)
プレイ後に他の人の感想を読むことで視野が広がり、物語をより楽しめるのでは?そういう期待で本作を購入しました。
『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』は発売1ヶ月経って、気合の入った長文感想と考察がいくつか投稿されています。
私のひねくれた超駄文などよりずっとずっと素晴らしい考察を読むことで、もっともっとエロゲーを楽しんでいければいいと考えています。