新選組はただのゲストキャラです。赤穂浪士のその後。この物語はおっぱいと天才で出来ている。
※前作『ChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1-』についても触れます。
※『幕末尽忠報国烈士伝 -MIBURO-』についても少し触れます。
『忠臣蔵46+1』の5章ラストバトルは私にとって絶対に受け入れられないものでした。
前回の感想でFDは買わないと書いておきながら、何で私は買っているんですかね……。
『武士の鼓動』を購入したのは2017年の12月。まあ『MIBURO』対策で“うっかり”買っちゃったんですが、その後すぐに再版しましたね。
何でこのタイミングで崩したのか?そう言えば忠臣蔵シリーズからまた新作出るらしいですよ。
※無印プレイから5年以上経っているので内容はあまり覚えていないです。私は5章完全否定派なので時々酷い発言になることがあります。
Q.赤穂浪士はどうやって切腹を免れたの?
A.《綱吉》をレイプ♪
となかなかふざけた回答からスタートし、
赤穂浪士が幕末に飛ぶ理由を「バタフライ・エフェクト」の一言で片付け、どういう経緯で《桂小五郎》の歴史が改変されたのかの説明は一切無し!
しかし誰もが思いつく「《浅野内匠頭》が《吉良》を斬る前にタイムスリップ」は出来ない、もっと大きな「バタフライ・エフェクト」の一言で説明終了。
2年以上幕末にいる赤穂浪士46人が《ご城代》の言う事を何でも聞く完全一枚岩だったり(江戸急進派とは何だったのか?)
赤穂浪士が新選組と戦う理由はかなりどうでもいい「ですです」(CV:遥そら)の4文字しかなく、歴史を大幅に改変しておいてラストバトル前の腕慣らしに使うだけ。
《ご城代》が《近藤》に説教を始めたときは何を言っているんだ?と思いました。
まあ大体悪いのは《甲佐一魅》です。こいつが出てくると話がつまらなくなります。
1~3章までとは別のゲーム、別の魂を持つキャラでコスプレした赤穂浪士そっくりさんだと割り切ってプレイしました。前作から時間を置かなきゃ無理です。
太平洋戦争前と戦後では日本人思想に2つの大きな違いがあるようです。いや3つかな。
1つ目は忠義、信念と言った概念です。忠臣蔵では「《吉良》を討つ」ですね。
主君への忠誠心は現代視点から見れば非合理的で、最大実益を考慮した思想に柔軟に変化するのが普通です。でもこのゲームは時代劇ですからね。
歴史をテーマにしているのに、登場人物の思考パターンが現代的に柔軟に変化する。ここにメタファクターを感じて世界観をブチ壊しにしています。
『武士の鼓動』で激動の幕末を出したのはそういう意味で正解でした。今までの徳川将軍家が絶対の価値観から尊王攘夷の主張が生まれるわけですから。
薩長同盟も長州藩の薩摩への怨恨から、実益考慮の柔軟性へと変化した史実を使っているのはポイントが高いです。
しかし《ご城代》の「真の敵は《吉良》にあらず」発言は5章のタイムスリップ前なので残念でした。
せめて激動の幕末を経験したこと、会津への忠誠心と出生欲が強調された新選組を反面教師として赤穂浪士の思想が変化した、なら整合が取れたんですけどね。
元禄キャラから見た幕末と、平成視点から見た幕末の、過去未来2つの視点は最初は機能していて良かったのですが、《ご城代》はすぐに現代思想に慣れます。
2つ目は切腹です。ハラキリです。カミカゼです。
命を粗末にしろというわけではなく、命を懸けた信念は実際の死と背中合わせの関係で無くてはいけません。日本人はスーサイド民族です(酷いこと書いている笑)。
しかしこの手の萌え萌えな創作物は味方サイドがあまり死ななく切腹がほぼ無い。
腹を切りそうになると必死に言い訳をして場を切り抜けようとします。私は自殺までは行かなくても「落とし前をつける」の概念が足りていないと感じています。
逆に仲間が死ぬと可哀想の人情噺の流れになります。この人たちは人殺し集団ですよね?テロリストですよね?という指摘はスルーして。
「いのちをだいじに」は現代視点では当たり前のことですが、時代劇では異なるのです。
さらにこのFDはただの暇潰しなので、命を懸けて戦う理由などないのです。
そして追加の3つ目は1つ目に関連した怨恨の概念です。
毛利家は徳川への怨恨があるなど、江戸時代では祖先の恨みを藩の集団理念としています。元禄時代を生きた赤穂浪士も幕末の長州藩士も同じです。
ところが現代日本では怨恨の概念がかなり薄くなっているんですよね。1つ目で書いた通り柔軟性が基本ですから。
元禄キャラと幕末世界の条件ならば、《大高又次郎》の敵討ち「ですです」(CV:遥そら)も一応動機としてナシではないのかなあとも感じてきました。
ただ4章の《甲佐一魅》と5章の《丹羽赫夜》(FDには名前が出てきません)は現代人ですから、怨恨のみ動機にするには弱いです。
怨恨重視ならそれこそ5章で元禄キャラの赤穂浪士が《吉良》を討たないのは絶対にありえないです。
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ちなみに私の新選組の知識は「フタエノキワミアー」くらいしかありません(それ新選組とちゃうわ)。もっと日本史を勉強しましょう。
戦国時代と幕末を題材にした創作は数多く作られていて、かじった程度の知識では全く対応できないんですよね。
忠臣蔵は絶妙な知名度と、敵討ちの主題がわかりやすいのが成功しました。
同人から商業デビューが大成功した『インレ』さんは、忠臣蔵の次に新選組女体化を主題にした『幕末尽忠報国烈士伝 -MIBURO-』を発売しました。
2017年に『MIBURO』の体験版をプレイしてまず感じたのは「全然わからない……」でした。
新選組はプレイヤーに予備知識がある前提で作られるからハードルが高いのです。私は《斎藤一》以外知らないわけですからね。
そして私は「うっかり『武士の鼓動』のパッケージを手に取っちゃったよ……悔しい(ビクンビクン)」となるわけです。商売が上手ですね。そしてプレイせず積むと。
『忠臣蔵46+1』シリーズはかなりわかりやすく歴史を書いています。現代人の《深海直刃》と同じ視点で歴史を学べますから。
『武士の鼓動』は新選組の人気キャラ4人に絞り、「池田屋事件」など知名度の高いものをざっくりと紹介しているので
ハードルはそこまで高くないです。いや私にはこれくらいの敷居の高さで限界なのですけどね。
おそらく、次回作の新選組(仮)のプロトタイプとして新選組を先行で出したと予想しています(インタビューなどで否定されていたらごめんなさい)。
《土方》は《安兵衛》さんと《不破》の中間のような性格でわかりやすくて良いのですが、
《沖田》と《斉藤》が不思議ちゃんでキャラ被りしていて感情がよくわからない。
局長の《近藤勇》の似非お嬢様キャラはリーダー向きではなくキャラ付けに失敗しているような。《大石内蔵助》はすごくリーダー向きなのでその差は大きいです。
『MIBURO』でどうなったかは知りません。キャラ付けが上手くいったかもしれません。
本作では名前しか出てこない芹沢鴨と山南敬助がどう活躍するかは興味あります。いや2人の結末は『武士の鼓動』にも書かれているので知っていますが。
さて、本作は赤穂浪士そっくりさんによる「忠臣蔵」ではない何か別物。「新選組」もやられ役でしかありません。
では『武士の鼓動』は何のゲームなのか?答えは幕末「長州」の歴史の勉強です。長州も幕末モノの人気題材ですね。
本作の実質メインヒロイン枠ではある《桂小五郎》ちゃんは
「上原あおい」さんによるキュートボイスと、 ロリおっぱいのビジュアル、飲みたくなる黄金水。この3つはパーフェクトでした。
しかしキャラがイマイチで「行くなよ池田屋に絶対に行くなよ」のダ●ョウ倶楽部コントをやらかしてくれます。
まあ主人公の説得が悪かったのもありますが、《ご城代》の話も聞いてくれません。
「池田屋事件」以降はデレデレになってくれますが、しかし《小五郎》の活躍はイマイチ目立ちません。
歴史を知っているメタ視点を持つ《直刃》と、判断力最強の《ご城代》がいますからね。あくまで赤穂浪士そっくりさんをメインに持っていきたいようです。
彼女の攘夷への想いがもう少し描かれていればよかったのですけどね。
しかし他に魅力的なキャラはいました。《高杉晋作》です。
その軍師としての能力はすさまじく第二次長州討伐(四境戦争)の下剋上バトルはこのゲームで最も熱いシーンでした。
出番は後半になりますが、短い出番でも行動力と理念は素晴らしい。あまりの《高杉》ちゃん無双ぷりに《小五郎》が完全に食われていますね。
幕末史が詳しくない人から見ると「よく長州が潰されずに済んだなあ」と感心します。
「葉山こよーて」さんは1対1のバトルだけでなく集団バトル(軍師)の描写も行けるような気がします。
(現在『インレ』は源平合戦をメインにした新作エロゲーを制作中とのこと。)
《小五郎》は主人公に惚れますが残念ながらえちえちシーンは存在しません。
肉体関係を持ってしまうと、2014年時点では次回作の新選組(仮)の内容が縛られる可能性があったのでしょう。新選組はキャラ見せだけにしていますからね。
結果として『MIBURO』に《桂小五郎》と《高杉晋作》を登場させなかった?ようですが。
本作『武士の鼓動』は《桂小五郎》と《高杉晋作》の幕末のお話。
(1~3章の)赤穂浪士たちが未来に残したもの、影響力を語り継ぐのがこの『FD』の目的です。
忠臣蔵の4章に近い性質を持つような気がします。どこかメタ視点の主人公や、人情噺が多いのも含めて。
忠臣蔵しているのは《堀部安兵衛》の過去エピソード30分と、各個別ルートだけ。
現代恋愛編を忠臣蔵の名所巡りにしたのは大成功でした。きっと「葉山こよーて」さんが実際に行って取材したのでしょう。
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大人気の《山吉新八郎》。忠臣蔵と直接関係ないので本編の出番はないですが、彼女は特別にオマケシナリオで主役となりました。
3章はオリジナル要素が強めで《新八》もほぼオリキャラですが、ここまで人気出た理由をでっちあげてみます。
このゲームは大半がババアキャラ、元ネタはオッサン侍たちですからね。
年頃のオナゴは《主税》と《新八》だけです。この2人との恋愛感情を描いた3章は学園エロゲー慣れしたユーザーには丁度いいのです。
主人公にべったり過ぎるヒロインもいいものです。
上のほうで切腹について書きましたが、「葉山こよーて」さんの生死観はヌルめです。みんないい子ちゃんです。
《新八》は狂戦士で自分の想いのままに人を殺します。つまり現代思想による制限が唯一かかってないキャラなので、キャラクター性が魅力に感じるのです。
単純な悪ではなく純粋な悪。こういうバトルものでは悪をちゃんと描くことも重要です。
また(3章までの)赤穂浪士たちは信念を持っていますが、理屈で動かない《新八》は説教臭くないのもあるでしょう。
「鏡花水月編」は殺戮バトルが多く《新八》無双が見られてテンポがいいこと、FDで唯一の討ち入りシーンがあります。
『忠臣蔵46+1 武士の鼓動』は5章の続きです。信念などはない赤穂浪士そっくりさん達によるキャラ重視のFDです。
メインは新選組ではなく幕末長州の《桂小五郎》と《高杉晋作》。幕末の歴史の勉強になります。池田屋事件以降は一気に引き込む魅力がありました。
忠臣蔵への愛は感じますが。忠臣蔵そのものではなく、忠臣蔵が後世に与えた影響、幕末に語り継がれる伝説の物語を描いています。
1~3章のようなものを期待してはいけません。4章や5章(ラスト以外)に近い少しメタっぽい話です。
114枚もあるCG、立ち絵の豊富さ、モブキャラにも立ち絵ありなど、「質より量を重視」の制作スタイルは変わっていません。
肌色は多くストーリー中に微エロと本番ありエロシーンが挿入されます。エロシーンにアニメーションがあります。
実質2人で制作しているのはすごいことです。
なんかんだ言って勢いと魅力は十分にあるゲームです。《甲佐一魅》さえ出てこなければいいゲームなんだけど。う~ん。
さて『MIBURO』はどうしましょうか。前哨戦をプレイしたことで前提条件は満たしたので、気が向いたらいつかやるかもしれません(すぐにやる予定はないです)。
新選組編は敷居が一気に上がるのでやるとしても楽しめるか不安です。