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t-mさんのもしも明日が晴れならばの長文感想

ユーザー
t-m
ゲーム
もしも明日が晴れならば
ブランド
ぱれっと
得点
98
参照数
984

一言コメント

幽霊とHができてしまう稀有な作品です♪ …それはともかく、名作です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

何か、最近市場ではすさまじい高騰っぷりを見せているこの作品。あまり話題にも上がっておらず、普通に中古ショップに埋もれていた安かりし頃のを自然に購入して、プレイ後すぐに売却してたんですが…。久しぶりに値段とか調べてみると、原油相場もびっくりの凄まじい高騰っぷり!すぐに売るんじゃなかったよ…w

そういや、幽霊系のラブストーリーと言えば、あの有名な「ニューヨークの幻ゴースト」を思い浮かばせますね♪でも私は同じような設定の「オールウェイズ」(スピルバーグが監督だったりしていい映画です♪何気にヘプバーンの最後の作品だったりもするんですよね~。)の方がお気に入りだったりします♪てな事で、つばさルートのエンディングと、その映画のエンディングと言うか、雰囲気や締め方、そして死んだ人への概念や考え方が似ていたので、懐かしさも上乗せしての高得点です。

ま、ここはエロゲのサイトですので、映画の話はここらへんでおいといてっと。さてさて、このゲーム。全てが明穂を主軸に物語が展開されるので、その明穂を好きになれるかどうかで評価がガラリと変わってくるような作品です。明穂が好きなら、かなり高い評価になるでしょうし、そうでなければ一般的な雰囲気の良い萌え&泣きゲーになってしまうかもしれません。

明穂の死を受け入れる事が出来るか、受け入れる事が出来ないか?それぞれの想いと葛藤、そしてその結末が、つばさルート(あとその他w)と明穂ルートで対極的に描かれていきます。んで、かく言う私なんですが、ぶっちゃけ、明穂はそこまで好きではありませんし、明穂ルートもあまり好きではありません。(いえ嫌いではなく、あくまで普通ってな感じですが。)それでも、ここまで高い評価を下したのは、明穂を軸に語られる、つばさルートが余りにも素晴らしい出来だったからです♪つばさルートがSSSクラスとするなら、他のルートは平凡なBクラスってなところでしょうか。もうね、つばさルートでの姉妹の想い。そして最後のEDのシーンに本当に心打たれました。結構オールウェイズのラストに影響されているかもしれませんね♪個人的な思い出もありますので、私の中では名作の部類に入ってます。

CGに関しては最高クラス。本当に綺麗ですね!キャラの表情も豊かで見ていて本当に楽しくて飽きません。背景も美しく描かれており文句なしの出来です。秋の少し肌寒いような物悲しい雰囲気がすごく伝わってきます。人気の無い海岸なんかが本当に哀愁を感じさせてそれだけでもこの世界観に惹き込まれてしまいます。

音楽も申し分ないですね。テーマソングや挿入歌とか本当に優秀で、少し切なくも綺麗な旋律が、この世界の雰囲気を見事に表現されておりBestです。ゲーム中のサウンドも綺麗な曲が多く素晴らしいのですが、ただ、少しクラシック調のメロディが多いので、眠い時にしてしまうと、ウトウトしてしまうかもw

声優に関しては、つばさ役のみるが素晴らしい演技をされています。このゲームでみるファンになった方も多いのではないでしょうか?私もそんな一人ですwそれ以外の配役もいい感じで、メインの明穂役の西田こむぎも光っていました。声優陣のおかげでキャラの個性がより光っていましたね♪

テキストは平凡てなとこでしょうか。主人公がへタレなので、そんな描写がイライラしたりしますが、文章自体は丁寧で、背景描写とかも優秀で読みやすかったです。

シナリオですが、これに関しては好みがはっきりと分かれるような気がします。幽霊モノが嫌いな方や、人が死んだりする話が嫌いな方はその時点で受け付けないと思います。また、死生観というか、各々の亡くなった人に対する思い出、考え方、あとは哲学や宗教的な観念も入ってくる訳ですから、様々な評価が下されるはずです。ただ、従来のポピュラーな泣きゲーのように、大切な人が死ぬ→悲しい→泣く→(場合によっては奇跡が起きたり起きなかったり)ではなく、大切な人の死をどうやって受け入れるのか?その人の死をどうやって乗り越えるのか?を正面から問いかけている点が素直に感心できました。現実的に誰もがその問いに突き当たり、乗り越えなければいけない問題だからです。少し大人なビターなお話ですね。

Hは、うーん、これは微妙です。エロゲーなので無理やり入れてみました!みたいな感じです。シナリオ自体が優秀なので邪魔に感じる人もいるかもしれませんね。ただ、明穂とのHシーンというか、幽霊とのHの概念が斬新的でしたね。本来接する事が出来ないはずの霊的な存在との物理的な肉体関係ってのはインパクトありました。肌と肌を重ねていく表現を、無理の無いように上手く描写していたのは見事ですね!あ、でも、ゴーストと言えば、「ゴーストバスターズ」にそんなシーンがちょっぴりあったような気がwまぁ、そもそも幽霊の定義なんて曖昧なので何でもありでしょ♪

特筆すべきは、やはり幽霊と言うか明穂の存在や描き方かな。幽霊なメインヒロインってのも本当に珍しいですね♪その描き方が本当に優秀でした。フワフワ浮いてる感じがとても自然だし、急須を浮かせてお茶入れたり、壁をすり抜けたり、一緒の生活が本当に楽しく感じました♪でも力が弱まると薄くなったり、存在感が薄くなったり、そんな儚い存在を綺麗すぎるくらい上手く表現できていたと思います。明穂の「そう、私は過ぎ去った夏の思い出に過ぎない…。」その言葉はかなり胸にグッときましたね~。

感動して泣くかどうかは、その人が歩んで来た人生の経緯や価値観、考え方次第だと思いますので言及はしません。ともあれ、儚さや切なさ、そして美しい幽玄的な雰囲気が見事な作品です。世界観・CG・音楽・シナリオ・CV共に全てが最高峰に位置します。私の中では正に名作と呼ぶに相応しい作品です。