お嬢様ルートのシナリオが期待以上に良かった。アイドルルートは✖。全体的に引きずる程の不幸にはならず、起伏のあるシナリオを楽しめる。経済関係の話は深く考えるところではない。長文感想はネタバレ分薄め。
共通パートは途中でお嬢様ルートとアイドルルートに分かれ、お嬢様ルートは二部構成でかなり長い。個別を除いて早めに読んでも10時間程度は掛かった。
だがお嬢様ルートはキャラが魅力的で、共通を含めテキストも良く、苦にはならなかった。
不快だと言及されている音羽については、お嬢様ルートになるとあまり出てこない。
確かに傍若無人っぷりが常軌を逸しているため、前半の印象はかなり悪い。
主人公も仕方ないとはいえ、わざわざ関わりに行くので、ダメな人はダメだろう。
ただ個人的には、第一部終盤で主人公や透夏を鼓舞、激励する見せ場があったりするので、そこで見直した。
また、シナリオ全体をダメにする程のキャラではない。
主人公は有能系で魅力あり。程よく万能だが精神的な未熟さも適度にあり。まず不快にはならないと思う。
●シナリオ
・アイドル(音羽、透夏)ルートについて ※途中、スキップをしながらプレイ
タイトルからも分かる通り、明らかにサブルートとして用意されている印象。テキスト量もお嬢様ルートに比べると圧倒的に少ない。
どちらも展開は盛り上がりに欠け、面白いとは言い難く、これがもっと面白いか、無ければ95点くらい付けたかった。
透夏はビジュアルが好みだったので、是非お嬢様ルートで攻略したかった。
音羽はルートに入ると一気にデレる。努力する天才で、信念があるというキャラクターゆえに、オンオフがはっきりしている。
だがいくらなんでも性急で、ちょっと付いていけない。
透夏は良くも悪くも無難な印象。「こうなるだろうな」というそのままを行く感じで、面白味に欠ける内容だった。
確かに可愛いのだが、アイドルルートというのがとにかく勿体無かった。
・お嬢様(詩綾、花、七波)ルート
おそらく驕りと自信について、その境や成長がテーマになっているが、あまり気にしなくていい。
共通から続きで二部構成になり、二部の序盤でルートが分かれていく。グランドルートは花と七波になるだろう。
経済、というか株取引の話が多いが、あまり深く捉えなくても問題無い。
このルートについてはヒロイン3人ともしっかり魅力が引き立つ内容で、シナリオも気持ち良く終わるので、安心してプレイ出来た。
詩綾はお嬢様ルートの中ではギャグルートと言っても過言ではない。
主人公が詩綾の秘密を知ってから、物語全体の雰囲気が変わる。このルートでは重いシリアスは無く、終始明るい雰囲気でエンディングまで行ける。詩綾のキャラクターもパンチが効いていて面白かった。
主人公にトラウマを植え付けていくシーンは、それまでの共通シリアスを払拭する上で十分な役割を果たす。
花ルートは鶴美との関係修復があるので、主人公にとってのトゥルーエンド感がある。
鶴美の過去が明かされ現在に至るまでの経緯は、彼女が持つある種の狂気ゆえに現実的ではないが、十分納得のいくものだった。
花もお兄ちゃん大好き妹キャラとして魅力十分。星咲さんの声もあって、とても可愛かった。前向き感も良い。
シリアスも適度で、最終的にはすっきりするため、読後感が良いシナリオ。
七波ルートはメインルートにあたり、内容は最も力が入っている。
何より七波がキャラクターとしてすごく良い。そしてやはり、桐谷さんが上手い。
ぬぼーっとした、いわゆるテンプレ天才キャラの一種なのだが、極度のかまってちゃんというのが良い塩梅だった。まっじで。
ルートに入るときちんと嫉妬したり、照れたり、好意の示し方も好みで、とても魅力的だった。
ただ終盤の展開は、共通の展開がスケールの大きなものだったせいもあり、比べると若干弱かった。しかし鶴美が個人を狙っているという目的から、主人公たちの立場が低くなった以上、当然の結果なのかもしれない。
七波と花はどちらが先でも良いので、セットで攻略すると良いかもしれない。
詩綾は箸休めとして絶妙。
お嬢様ルート共通で唯一残念、というか心苦しかったのが、第一部の終わりで七波の行動が(予想通りの展開でもあるが)凄まじく、七波ルートに行きたくなる流れになっていること。これならもっと早い段階で分岐して欲しかった。
そして七波ルートをクリアした後だと他に行きづらい。読後感的に。
自分にとってゲーム全体を通して最も良いシーンだと思ったのが、七波ルートで主人公の夢を叶えるシーン。
いわゆるヒロインからの明確な告白シーンなのだが、是非ルートに入ってから一気に見て欲しい。より一層、七波が好きになるシーンだった。
●絵
立ち絵は他のゲームに比べると全体的に遠い(小さい)が、気にならない程度だと思う。
綺麗さも十分だと思う。首から下になると少しだけ粗も見えるが、目くじらたてる程ではない。
一枚絵も一定のクオリティはしっかり出ている。残念に思うことは全く無かった。
●総評
絵柄、声、キャラクター(お嬢様ルートの3人)、設定、あらすじ、どの要素でも良いので、少しでも気になったら手にとって損は無いと思う。タイトルからもっと薄い内容だと思っていたが、十二分に楽しめる内容だった。
アイドルルートはやらなくても全く問題ないと思う。
お嬢様ルートの七波と花は必見。