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syakuさんのTriptychの長文感想

ユーザー
syaku
ゲーム
Triptych
ブランド
ALcot
得点
93
参照数
425

一言コメント

重なり合う三つの想い。確かに重なってます。原画買いしましたが後悔はしていません。シナリオは、設定をもう少し生かせていればよかったと思いますが、それなりのものでした。最初の印象は現実世界のサスペンスだったのですが、実際のところはファンタジーでしたね。シナリオは強制一本道なので、狙いを付けてということが出来なくなってます。設定上仕方のない部分もあるのですが、それをどうにかするのがシナリオライターの仕事と思っているだけにそこが残念でした。あと、少々一般人の死を軽めに捕らえすぎな感を受けました。音楽に関しては、OPなどのムービーはいいのですがMusicモードなどでの回想がなく、もし連続して聞きたいならば、OHPなどでムービーだけ落としておくなどしたほうがいいと思います。10点分くらいは抱き枕のネタっぽさなのは内緒です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 Triptych→三部作、祭壇画の三枚構造版だそうで。確かに導入、展開、結末の三部作ですね。ヒロインも見た目は三人ですし。
 シナリオは、設定を生かしきれていないものの、そう悪いものではありませんでした。日常の会話もいい感じで、ヒロインたちの感情も上手く表現できていたと思います。ちりばめられた数多くの伏線は最後の最後でようやく解きほぐされるのですが、そこまでが長かった。シナリオを生かしていたのは魅力的な立ち絵と、雰囲気に合ったBGMでしょうね。立ち絵はヒロインたちの発言にあわせてころころと表情豊かに変化するため、見ていて楽しかったです。また、通常シナリオの謎解きの部分に入れにくい日常の恋愛やサブヒロインとのHシーンをAppendixという形でうまく追加したのはいいと思います。Hシーンも全部で18と多く、またシチュエーションもいろいろあってエロゲーとして使うにももってこいだと思います。ただ、絵が少々炉利気味なのでそっちに興味のない人にとっては微妙だと思いますが。
 問題点としては、シナリオはサスペンス調で進んでいくのですが、犯人はすぐに分かります。それを主人公が受け止め、解決し、次の世界へと進んでいくのですが、ここが伏線を暴かないようにするためか少々急ぎすぎな感が漂いました。日常はいいだけにそこがなおさら性急感を漂わせます。また、ヒロインが多くの人を殺しているのに、そのことを全く気にしていないかのようないちゃいちゃっぷりはいかがなものかと。一般人の生きる力を回収して世界を救うということで理由は存在してますが、それが判明するのは最後の最後ですし、人を殺したということをもう少し書かなくては深刻性が伝わらないような気がしました。電撃文庫の某魔法使いの脳みその一巻でも同じことを思ったのですが、ヒロインを救うために、関係のない多くの人が死ぬのは、それはいいのか?と。私的にはありなのですがね。
 シナリオは一本道で途中にBadエンドはありますが、Trueエンドに向かって進んでいくというものです。また、すべてのヒロインは真ヒロインであるセツナへの踏み台に過ぎず、箱の横にあるように、本当の意味で「重なり合う三つの想い」になります。三つの世界に分かれていた器と記憶と知識が主人公を通してようやく一つに重なり合いセツナになるわけです。微妙にOPでネタバレしてる!?「セツナの夢はすっと、その力で悲しい過去を守って」って聞こえる。
シナリオの順序はマヤ→ミウ→カレン→セツナという順なのですが、セツナは饒舌になったマヤなので、実際のところはマヤがもう一回のようなものです。流れとしてはおのおののシナリオが起承転結の役割をうまく果たしていると思います。
選択肢がどれも妥当でありながら、答えは一つであり、また、シナリオの頭にあるものが間違っていると目も当てられません。セーブは選択肢のところでやっておいたほうが賢明です。
システムに関しては、前作Clover heart'sにあったシナリオ冒頭部、最後、OPムービーの回想のところと、歌の回想が出来なくなったという感じです。OPムービーはすばらしい出来だけに、あれを起動時にしか見えないのは駄目なんじゃないかと。お気に入りBGMはPretty Show。

各ヒロインシナリオの考察
マヤ プロローグとして存在し、主人公の今後の行動の方針を定める「起」の役割ですね。ヒロインと結ばれて次の瞬間には次の世界へと飛ばされる。ここで張られる伏線は主人公の世界移動、鏡の塔の役割、ケイの正体、どうして一人で主人公があのような家に一人で住んでいるのか、ジャジャスとマリネオの役割、「選択者」の定義、神隠しといったところかと。
ただ、本当にプロローグとしての存在でしかないため、マヤという魅力あるヒロインをただのHシーン要員にしか使えていない点で不満を抱きました。もっと結ばれるまでの過程があってもいいと思うのですが。直感で結ばれるのも悪くないのですが、その過程が突然すぎです。あの、寡黙なようで呆けているというギャップが大好きだ。ファッションはゴスロリ。下着までフリフリにこだわってます。私は好きですね。ただ、現実のあまり見目麗しくない女性たちがかのような衣装に身を包んでいらっしゃるのを見ると悲しくなりますが。

ミウ シナリオ全体としては承を受け持ってます。ここで出てくる伏線はヒロインの意識消滅、ヒロインの殺人の意義、理由、主人公とケイのみが記憶を失わないこと、主人公の道具に対する魔力付与能力の意義といったところかと。
主人公は前世界のヒロインマヤに対する思いを抱えたまま、ミウとこの世界で発生している通り魔殺人に挑んでいくことになります。で、案の定な展開になりヒロインと主人公がいい感じになったところで次の世界へ。謎解き要素は皆無です。ばればれなので、実は違うかな?なんて裏を読んでみて少々後悔。声くらい変えましょうよ。サブヒロインたちは少々邪魔くさく感じました。あまりスキにはなれなかったせいでしょうか。あと、シナリオの終わり方に置いてけぼり感を感じました。ファッションは白のゴスロリ。白い妖精をイメージにしていたようですが、上手くできていると思います。最初はあまり好きになれなかったのですが、最後はこういうのもありかなと思いました。立ち絵の表情の力は偉大です。穏やかな、けれどどこか強いところを持った女の子。

カレン 転を受け持ちます。ようやくここで謎の多くが解明され、話も終わりへと近づきます。伏線は神隠しの原因、ケイの意図するところ、主人公の記憶、正体、館の書斎といったところです。
サスペンス部分に二度同じ方法を使うのは反則じゃよ。まあ、確かにその必要が有るけど。人の死に方が少々印象的でした。
サブヒロインたちは10歳くらいの双子なので、まさかHシーンはないだろうと思っていましたがありやがった。ソフ倫とかメディ倫とかは大丈夫なのか?と少々心配に。
カレンはツンデレです。少々ツンが足りないよ。もっとツンツンしててくれ。

セツナ 結。長かった話もようやく終結です。今まで出てきた伏線もすべて解消されすっきり。セツナは饒舌なマヤなのですが、これはこれで。一つ気になったのが三人が合体したところで、一番はセツナになるわけだが、それまでで主人公は誰が一番好きだったんだろう?ころころ変わってやがったのか、この尻軽小僧め。ウラヤマシス。

なんだかんだ愚痴を書いたりしてますがなかなか面白いゲームです。仁村有志氏のイラストが気に入った方ならやってみるとよろしいかと思います。前作clover heart'sをやってからやると、一般人の声優のところとかとある登場人物に関してなど、この作品をなおさら楽しめると思います。