ErogameScape -エロゲー批評空間-

syakuさんのVolume7の長文感想

ユーザー
syaku
ゲーム
Volume7
ブランド
RococoWorks
得点
79
参照数
526

一言コメント

例えるなら、個々としてはおいしいけれど、味の調和が取れていない果物で作られたフルーツタルト。付録の冊子やシナリオを見るに、全体を俯瞰した上で必要な設定を作っていったというよりは、設定ありきでシナリオを無理やりあわせたような感じがします。真世界編などは、急展開過ぎてついていくのが難しいと感じることが少なくなかったです。絵と音楽の質は申し分ないのですが、少々BGMが少ないように感じます。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前半部分は普通の恋愛を、ちょっとややこしい事情を入れながらやってるという感じだったので、この調子なら良作では?と期待したのですが、

後半部は・・・なんというか、今まで普通の生活をしてると思ってたら突然SFのような感じですよ。しかも、宇宙人は宇宙人だからしょうがない、的なレベルの。
前半部に、後半部の重要な部分に関しての伏線がほとんどない状態で後半部に入るので置いてけぼりを食らったような感じがしました。

折角の群像劇も、ルートを分けてまでやった割には、前半部分ではほとんど核心に触れることがなかったために、読者サイドが個々のシナリオから情報を得ることで後半部分の推測をする、ということも難しかったなどの問題がありました。これなら、最初から1ルートに絞り、そこで視点を変えて物語を作ったほうが自然だと思います。

群像劇ならば、例えば、十丸ルートであればシナリオ冒頭で昔の記憶に少し触れてみたり、後半で出てくる映像技術などのさわりなどを入れておく、などの伏線を用意しておくことも出来、もっとシナリオを良く出来たのではないかと思うのです。

設定そのものはそれなりに良く練れているように思えるので、そういう意味では勿体無い作品だったな、と。


そういえば、この作品、ヒロインが(一時的にとはいえ)男だった、また百合だった、モザイクしていないCGがデータ上に存在していて、回収騒ぎになった、などえらく冒険してますね。
お願いですからカタハネと同じように遺作になるなんてことにはならないでもらいたいものです。


それにしても、この作品の歌のうちのひとつ、「0の軌跡」を歌っている、観月あんみさんがアメリカに行ってしまうとか。この人の新曲を聴くのが難しくなると思うと悲しいばかりです。