二人の主人公の攻防・協力を描いた大人向けADV、システムを利用した演出と完成度の高いシナリオが魅力
ダブル主人公物は決まった順序で交互に章が展開される内容が多いが、EVEはプレーヤーによって自由に視点の切り替えができる点が良かった。
序盤においては視点の切り替えを多く必要としないことから、自由にプレイできることが魅力であった。
後半になると視点切り替えのシステムを活かした小次郎とまりなが同時にハッキングする場面が非常に印象的で、このシステムならではの演出だったと思う。
視点の切り替えをプレーヤーが自由に行える中で内容をまとめており、ADVゲームとして高い完成度を誇っていたと思う。
ただ基本的に一本道であることから分岐を含めてまとめられているYU-NOには劣る。ADVとしてのYU-NOの完成度の高さを改めて思い知らされた。
シナリオは小次郎とまりな、それぞれの視点で物語が進んでいく構成であるが、お互いがもう1人の主人公について仕草や行動一つで只者でないと判断して、警戒する心理描写が秀逸だった。
知らず知らずのうちに協力していくことも多いが、最初からそれぞれの主人公が明確な味方でないことが物語を面白くしていたと思う。
また、大人だからこそわかるネタが多く、まりなと弥生の大人の女性同士の情事の際の男への本音を語るシーンなど、まさにアダルトゲームと呼べる内容だった。
メインとなる題材はかなり攻めたもので、中東の新興国を舞台にリベラルと保守の対立を描く。
御堂はあの立ち位置は真っ先に殺されるか、殺されないなら「さては敵だなお前」となるので最初に死ななかった時点で裏切り者として疑ってかかると思う。
中東の情勢を舞台にしてることも珍しく、今の時代には書けないであろうテーマ設定だったと思う。
今回の事件の犯人となる殺人鬼テラーに関しては次々にミスリードが出てくることで犯人の正体が全く分からず、最後の最後、容疑者がプリンと真弥子に絞られるまで当てられなかった。
とは言え推理物として考えると真弥子の設定は反則級のSF設定なので犯人当てのミステリーとして楽しむものではないと思う。あくまでADVとして予想のつかない怒涛の展開を楽しむものであると感じた。
ラストの超展開に疑問はあるものの、シナリオの完成度は非常に高い。大人向けのADVゲームとして今でも十分に通用する内容だと思う。
恐らくラストに関しては色々言われていると思うが、それ以外ではまりな編では最初から登場していた松野と小次郎編で小次郎の相棒となった恭子が完全に途中から物語からフェードアウトしてしまった点。
作中でも登場回数の多い2人であり、何らかの繋がりを匂わせる描写もあったが、伏線回収なしで深く触れられることもなく終盤には一切登場しなくなったのは、その後の展開でカットされた何かしらの設定の名残りなのか少し疑問に残った。