今日この日までこの作品のネタバレをされなかったことを感謝したい
一言感想に尽きる。ネタバレ厳禁の作品と聞いていたが、後から振り返って本当に1mmも作品に対する情報を入れなくてよかったと思うくらいである。
ネタバレのチェックは入れたはずであるが、万が一にも憶が一にも未プレイの方が読んでいるならブラウザバックを推奨したい。
海底の娯楽施設であるLEMUに主人公が訪れたところから始まり、読み進めるごとに話が思わぬところに膨らんでいく理想的なADVが最初の√を終えたときの印象であった。
通常、ネタバレ厳禁の作品といえば、〇〇の正体であったり、世界の真実であったり、一つのファクターを知るだけで物語のカラクリがわかってしまい、楽しめなくなることにあると思っている。
そのため、思わぬところから不意打ちを食らうような驚きを重視した内容がネタバレ厳禁の作品の共通点であると思っている。驚かせるだけなら、読者にとって理外な部分からシナリオライターが展開すれば驚く展開になりやすいが、あまりにも説明が少ない反則な部分から情報を提示すると不公平感が出ることもある。
しかし、Ever17は答えを明確に示してくれる前にヒントを提示してくれる作りになっている。物語をしっかり読んでいれば、答えが提示される前に伏線を理解してプレーヤーが答えを出せるようになっているのだ。
このような設計のADVは、読み進めている読者を強く驚かせるよりも難しいと思っている。なぜなら、多くのプレーヤーが読んでいてわかりやすいように事象を説明する必要があるからだ。
Ever17では、答えを提示する前にピグマリオンの話や、八尾比丘尼など、本編で起きている事象を説明するための分かりやすい例え話が入る。分かりにくいところも子どもであるココの説明によりかみ砕いて説明してくれる場面もあるため、読者の教養・知識に関係なく理解しやすい内容であると思った。
度重なる視点変更と主人公を錯覚させるトリック、17年を軸にした時間軸のトリック、そして理解が難しいと考えられる二次元から三次元、三次元から四次元に変化することによる認知の違いなど、難解な内容も丁寧に説明することでわかりやすいものになっている。
非常に丁寧に物語を構成しているからこそ、難しい話も頭に入りやすいといえるだろう。第3の視点で物語を観測しているプレーヤーに対して、一から物語を読み解く体験ができることがEver17の魅力である。
この作品が特にネタバレ厳禁といわれている理由は、自らの視点で物語を読み解いていく楽しみがあるからだ。
「全人類にプレイして欲しい」という言葉は頭が悪いとされて批判されることも多いが、Ever17はすべてのルートの最後に救いがあることを含めて、非常に万人受けしやすい作品だと思っている。
今日この日まで生きてきてEver17のネタバレに触れたことがなければ、プレイして欲しいといえるほどの作品だ。
最後の結末を迎え、優(春)は娘に自分のすべてを託すつもりでいたものの死を回避している。空は実体を手に入れてこの世界で普通に生きる人間と同じように存在することができるようになった。そして、つぐみは元凶であるライプリヒとの因縁を絶ち、武と子どもたちの沙羅、ホクトと再会して幸せな未来を築けるようになった。
ライプリヒとの因縁がなくなったココ、少年の未来も明るいものになるだろう。
事件に巻き込まれながらも最終的には全員が幸せになる結末であるため、読了感が心地よい作品であり、欠点らしい欠点がない内容であったと思う。