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sweets443さんのジュエリー・ナイツ・アルカディア -The ends of the world-の長文感想

ユーザー
sweets443
ゲーム
ジュエリー・ナイツ・アルカディア -The ends of the world-
ブランド
きゃべつそふと
得点
82
参照数
374

一言コメント

説明描写と場面転換の多さが気になるものの、ジュエハの続編として満足のいく内容であったと思う

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作のジュエハは批評空間でも言われているとおり、賛否の分かれる内容であったと思う。個人的には以下の問題点があったと分析している。

・チープな戦闘描写
・蛇足としか思えないラスト
・他作品(閃の軌跡)のオマージュの多さ

一つ目は「チープな戦闘描写」。これに関しては演出やライターの得意分野と力量の問題があると思っているので、結論から言えばジュエナでも解決できていない。相変わらず、斬撃と銃弾のシンプルなエフェクトのみの安っぽい戦闘描写である。

これに関してはきゃべつソフト自体の予算の問題もあると考えられるし、さくレットやアメグレなど推理系のシナリオで評価されてきた冬茜トム氏がそもそも戦闘メインのシナリオを得意としていないように思えることから、続編で根本的に解決できるとは思えない。

そもそもこの部分に大きな不満を抱くなら、続編を購入しないと考えるので、私はそこまで問題には感じない。続編の製作で戦闘描写に不満を持つ層に関しては最初からターゲットにしていないと思う。

二つ目は「蛇足としか思えないラスト」。私自身もジュエハのプレイ当時は失望した点であり、大きく評価を落としたところではあった。しかし、続編のジュエナでは納得できるかは別として批判の多かったラストに向き合った点は評価できると思った。ラストで不満を持った人にこそプレイして欲しい続編という気概は感じられたと思う。

三つ目は「他作品(閃の軌跡)のオマージュの多さ」私の感想や他の人の感想でも指摘があったと思うが、この作品は日本ファルコムが販売する閃の軌跡シリーズのオマージュ要素が非常に多い。具体的に挙げるなら10個以内では済まない。あちらは空の軌跡から続く長編続編であるため、賛否が分かれるのは仕方がないが、そこまでオマージュしなくても良いと思ったが・・・

しかし、ジュエナに関してはジュエハから続いている土台的な設定を除いて、軌跡シリーズから引用したと思えるようなオマージュは少なくなったと感じた。最も特筆してオリジナリティのある内容といわれれば疑問ではあるが、ジュエナを読んでいて閃の軌跡ではないかと思うことはなかった。

すべての問題点を完璧に解決できるとは思えないが、一部に関しては解決しようとしていることは伝わってくるし、一番の問題点であった消化不良なラストに決着をつけてくれた点は評価したいと思う。

ジュエナは、ジュエハから続く群像劇形式の物語であるため場面転換が非常に多い。さらに地上と地下では、時間軸がずれている設定から、話が飛び飛びになることもあった。また、前作ラストの尻拭いもあり、オフィーリアとアリアンナの問答でかなりの部分を占めていたことから説明描写が非常に多い。

では、面白くなかったのかといわれればそうではない。そうであってもクリックを進める手が止まらず、1回目のオープニングが流れた後はそのまま完走してしまうほど続きが気になる内容であった。アメグレやさくレットのクライマックスまでの流れを初めて読んだとき、あの続きが気になる感覚が確かにあったと思う。

よって、説明描写と場面転換が多いと聞くとマイナスに感じるかもしれないが、どこまでも読み進められる文章であった。今回は続編ということもあり、世界をひっくり返るような衝撃を与えるトリックはなかったが、改めて冬茜トム氏の文章力に感服した。

ほかには、メインキャラが多いことからルビィが強さと設定から持て余し気味になっているなど、不満がないわけではないが、個人的には満足のいく読了感であったと思う。改めてジュエナまでプレイして、不満はあっても自分はけっこうジュエハを楽しんでプレイしていたのだと再確認できた。