悔しさとやるせなさを抱えながら、それでも万人受けを狙わなかった意欲作として評価したい
この物語の結末に対する直感的な心情は悔しさとやるせなさ、これに尽きると思う。
物語の結末に対して受け入れられず納得もできないなら、駄作であると切り捨てられるが、スカイコードは真の意味で共感はできないが、納得できてしまう自分がいるからこそ、悔しいと言う気持ちが湧いてしまう。
天使エンドの結末に関して言えば嫌いな作品だと断言できる。逆にシンジュエンドは納得もできる満足のいく内容だった。
【シンジュエンドについて】
シンジュの希死念慮は、生まれ落ちてから家庭環境を含めて自らが承認されてこなかったことの積み重ねの上にあった。
自己肯定感とは持つものではなく、積み重ねの上でしか成り立たないため、漆月雫として積み重ねてきたペルソナがある以上、彼女は自分を永久に肯定できない、他人の好意も信じられない。
その解決策として、全ての記憶と立場を失い、真っさらな人間として再び主人公と出会う結末は、そんな絶望を持った彼女を唯一救う方法であったと思う。
【天使エンドについて】
梯子が好きなのは天使であって、天ではない。正直、天の状態でHシーンが入った時点で嫌な予感はしていたが、結局天使について行くのではなく、天と一緒に生きて行く結末を選ぶのは心情的に納得しかねる。
天使は主人公に対して天を救って欲しいと言って消えており、最後に会った瞬間には天が主人公の事に好意を持ったことに対して安堵している。最後まで好きな人の幸福を祈って去って行くことは天使のあり方としては自然であるが……
天使としての真名を教えたことで同じ存在になったって伏線を張っていたのだから、天使とともに行って欲しかった。
【まとめ】
一般的な倫理観と比較して、人の死が軽く扱われていることから人を選び、希死念慮の基本的な概念として自殺を選ぶことに対して、納得できる理由を必ず持っていると考える人には致命的に合わない。
ぼんやりと死にたいと考えながら生きて、実際に行動に移した人の心情を一般的に幸せに生きてきた人にわかるはずもない。私自身も理解はできるものの、共感できるはずもないし、そもそも劇中の登場人物の様に同様の苦しみを持っている人間が最も嫌うのは無責任な共感である。
「お前に俺の苦しみの何が分かる?」のテンプレートな台詞に対して、「わかる」と無責任に言う主人公より「わからねぇよ」とバッサリ切ってから言葉を続ける主人公のほうが心に刺さる事を言うのと同じだ。
登場人物達がそれぞれ苦しみを持って生きていたことを知り、結果として死を選ぶ。しかし、その事実に対してどれだけ傷つき、どれほどの絶望を抱えていたかなど本人以外に知りようがない。
そんな登場人物への救いをシンジュエンドは描いており、一つの突き抜けた作品として心に刻まれたと思う。ただし、それでも私個人としては天使エンドの結末の一点を持ってこの作品を好きとは言えない。
しかし、演出が素晴らしく、ビジュアルノベルとしての完成度は高い。万人受けを狙わなかった意欲作として私は評価したい。