カルタグラから推理パートの追加により、ミステリー部分が強化され、前作以上に高い完成度を誇るシナリオ
ミステリーでありながら、殻ノ少女は事件ごとにシナリオを分けていないことが新鮮であったが、あえて分けるなら「女学生による売春組織に関わる連続殺人事件」と「冬子と殻ノ少女を巡る連続殺人事件」の2部構成になっているといえるだろう。
2つの殺人事件はつながっており、事件を解き明かすことで、やがて玲人が探偵になったきっかけを作った過去の事件を明らかにすることもつながっていく。また、その結末のすべてが完全なハッピーエンドとはいえないものであった。
前作のカルタグラの要素が非常に多く、実質的にカルタグラ2とも呼べる内容。和菜とお腹の子供の生死が物語のターニングポイントとなっており、唯一プレーヤーの行動で死亡の運命を変えられる点だ。回避できるとはいえ、幸せになった前作のヒロインにここまでの展開があるなんて、エグくないですかイノグレさん・・・
しかし、和菜の出産はカルタグラからプレイしていると感慨深かかったので、前作をプレイしていて良かったと思った。
また、前作で掘り下げがなかった八木沼の掘り下げもあった。八木沼に関しては昭和の典型的なエリート男性の印象だったが、掘り下げとあるENDによって印象が大きく変わった。
カルタグラで入れ込んでいた娼婦であった乙羽死亡時の態度も、同情されたくない気持ちと、女(姉)が自分の弱みであることを周りに悟らせたくなかったのかもしれない。
カルタグラから続く、プレーヤーの心を抉ってくる被害者はトジ子。プレゼントの指輪を付けたときには「これ絶対、腕だけの死体が発見されて、指輪でトジ子だと分かるパターンやん」と思いながら進め、怒涛の死亡フラグを立て続けて案の定・・・
玲人とトジ子のやり取りが好きなのもあったのと、死亡フラグ立てる前に死亡がまったく予想できなかったのでショックが大きかった。普段元気な子は死体になったときのギャップが大き過ぎる・・・
時代が昭和であるため、テキストも昭和文学を意識しており「識っている」「温和しい」など、普通のエロゲでは見られない表現なども多数存在した。
殻ノ少女の世界観を作っているのは、やはりイラストなどの視覚的な効果が大きいとは思うが、テキストや細部へのこだわりにもあるのだと思った。
細部へのこだわりがエロゲを終えたというより、ひとつの文学的な芸術作品を見たような満足感を生み出しているのだろう。