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sweets443さんのいろとりどりのセカイの長文感想

ユーザー
sweets443
ゲーム
いろとりどりのセカイ
ブランド
FAVORITE
得点
82
参照数
87

一言コメント

シナリオの細かな部分、特に主人公に対して不満はあるもののメインヒロインの真紅の魅力だけでもプレイする価値あり。後はヒカリに期待したい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

いろとりどりのセカイは、私がエロゲを始めたばかりの時に流行していた作品で、当時のTwitterのエロゲーマーのアイコンが真紅で統一されるくらい人気を集めていた時代を思い出す。

さくら、もゆを来年春にプレイする予定で、Favorite作品は未プレイなのでその前にこのブランドの作品をプレイしようと思いいろセカを選んだ。

私自身は幼い見た目のロリ系のキャラが刺さることは少なく、見た目なら澪が好きなくらいなので、本当に真紅が一番好きになるのかプレイ前は疑問だった。

まぁメインヒロインでシナリオも一番力を入れていると考えられるので、最後までプレイすればそうなるものなんだろうと。

開始数分で堕ちた。主人公との関係性が姿が変わらずとも側にいる年上のお姉さんのような存在で、澤田なつ氏の包み込むような優しい声色も含めてすぐに真紅が好きになった。

必ずしも幼い見た目のヒロインが好きな人だけに刺さるわけではないので、発売当時、あそこまで真紅の人気が出たのも納得というものだった。

いろセカを語る上で必要な真紅についての前置きを終えたので、次は各個別ルートについてまとめていく。

【つかさ√】
つかさが健気で周りにも良い人ばかりが集まる優しい世界で個人的に好きな話だった。

最初は医者に騙されているに違いないと疑っていて、自分の心が汚れきっていることを自覚させられた。

【鏡√】
いなくなったつかさを探す鏡のシーンは、いつものんびりした印象とはギャップが大きく、声優の演技もあって印象に残った。

誰もが同じスタート地点から走り始められない中で、周りと比較すれば当たり前のことでも、頑張りを理解して褒めてもらいたいという多くの人が持っている気持ちを描けていたと思う。

【澪√】
嘘をテーマにした内容の話。倫理的には悪いこととされる嘘について、入れ替わりの件でつかざるを得ない状況で嘘をつき続ける澪は自己嫌悪から嘘は嫌いだと言い続けてきた。

しかし、嘘にもつくことで人を救うことにつながるものもあり、必ずしも悪い結果に結びつくわけではない。澪が嘘を許容することは、嘘をつき続けてきた自分を許すことである。

夏目鈴が無意味に見えるほど嘘をつき続けた場面も澪が自分を許せるようにするための行動だったのだと思った。ついて良い嘘と悪い嘘と言うのはどこまで言っても個人の主観でしか計れないものだから、自分で納得するしかないからだ。

指輪が2人を引き寄せる結末は予想通りではあったが、凄く好きだった。

【加奈√】
蓮と白、加奈と加奈の母親、そしてあゆむ、見守られるものと見守るものの関係性を描いたルート。

加奈が子どものように振る舞う理由は、小さい頃から人と交流できず他者との関わり方を学ぶことができなかったことにある。

猫のあゆむもいじめっ子から逃げだし、群れから離れて加奈を見守る一生を選んだことで、久しぶりに会ったいじめっ子が他者と関わらなかった自分よりも大人になってしまったシーンは印象的で、現実でも起こる縮図に見えた。

体は成熟してもいつまでも子どものような発言をする大人は、他者との関わり方を学ばなかったからなのだろう。

また、鏡の兄が蓮の父親、時雨が白の父親であることがこのルートで分かるが、この要素はグランドである真紅√にも影響しない。なぜこの様な設定があるのか疑問である。

【真紅√】
これまでの√がすべて主人公が作り出したいろとりどりのセカイで、この状況を生み出した原因が主人公にあることが判明していく。

結局のところ主人公が全ての元凶と言える内容なので、この点において賛否が分かれるのは想像に難くない。

とは言え主人公の境遇を考えれば仕方がない部分もあるので、元凶であったことに対しては否定しないが問題はその後の行動である。

真紅に好意を持った主人公はいろとりどりのセカイにおいて、真紅をそばに置きながら誰にも見えない状態にして、真紅を忘れる様に世界を設定した。恋は苦しいものと分かったので忘れたいけれど、好きな相手に離れてほしくない、自分だけを見て欲しいというエゴを包み隠さない設定だ。

そして、 いろとりどりのセカイの出来事を経た後にも主人公は真紅の好意を信じておらず、真紅の願いを叶えるためではあっても最終的に真紅を1人にしてしまう。

誰からも見えない存在になった真紅がどれだけ寂しい思いをしていたのか、1人残された真紅がどんな気持ちでいたのか、本編の出来事を経験した後もそれを慮ることができていない。

最初から最後まで結局の所は自分のことしか考えてないという印象を拭えず、個人的に主人公に対して好感を持てる要素がなかった。

ただ主人公のエゴは鈴や藍が代弁してくれていたところはあったので、そこまで溜飲が残るわけではない。

また、これまでの√が明らかにグランドに至るまでの踏み台で、攻略したヒロインが偽物になる展開は納得しかねる所もあるだろう。

気になる所はあるものの、グランドルートの真紅の魅力が高過ぎて、これだけでもプレイして良かったと思える内容だった。

これまで主人公のお姉さんのように振る舞っていた真紅が子どもの様に感情をぶつけて泣くシーンは、ここまで積み重ねてきたものがあったからこそ涙腺にくるものがあった。

内容に気になる所はあるが、それを帳消しにしてくれるほどメインヒロインに魅力があり、最後のシーンを見た時にはまぁ良いかと許せるくらいには満たされたと思う。

とは言え藍があまりにも犠牲になり過ぎている結末なので、いろセカまでのプレイでは後味に良くないものを残すところはある。

いろセカシリーズはヒカリまでやって評価を高くしている人も多いため、後はヒカリに期待したい。