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sunatokageさんの巣作りカリンちゃんの長文感想

ユーザー
sunatokage
ゲーム
巣作りカリンちゃん
ブランド
KarinProject
得点
60
参照数
1671

一言コメント

前作から進化した部分もあるが、劣化した要素の方が多い。巣作りドラゴンと恋姫†夢想の両方をプレイしてる人間の感想です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

従来のソフトハウスキャラの作品と違いコラボ先の恋姫†夢想から絵師を提供してもらってることもあり
全体的にグラフィックは高水準なものになっている。見栄えに関しては間違いなく進化している。
育成も煩雑さを解消した上で、気に入ったユニットを重点的に鍛えられる作りとなっていてこれ自体は悪くない。
羅針盤はもう少し取捨選択に悩む作りにして欲しかったけど。
建造できる部屋の種類と景観も大幅に改善されており、この点に関しては素直に評価できる。よく頑張った。
また恋姫†夢想のキャラの中にはいつものソフトハウスキャラには出てこないような個性の持ち主もいるので
定番の流れの中にも多少の新鮮味が生まれていた。

では一体何がダメなのか。
問題点は色々あるが致命的にダメなのはやはりユニットの配置が恋姫キャラ+魔物のセットでしか配置できない点だろう。
この仕様のせいで40近く用意されている魔物の大半は一度も出番がないまま押入れで眠ることになる。
布陣が整う前の数合わせとしてすら使うことが出来ないので
部屋の建設や戦闘などで雇用できる魔物が増えてもそれが喜びに繋がらない。

またオープンニグこそ省略可能なもののゲーム本編は本家のようなモード選択がないので
周回のたびに毎回既読シーンが発生してストレスとなる。
部隊配置に必須の恋姫キャラも周回ごとに集め直しでこちらも面倒くさい。
周回ゲーを作るなら周回するのが苦痛にならない工夫が求められるよね。

シナリオのクオリティは単純に品質だけ見るなら許容範囲内だが
恋姫†夢想のスピンオフとして考えると落第点。
メインヒロインにカリンを据えたのは原作での人気と魔王に据えるのに一番適したキャラクターだからだろうが
実はこのカリンはエロゲー史上でもトップクラスに扱いが難しいヒロインなのだ。

恋姫†夢想は一般的には三国志をモチーフにした萌えエロゲーであると理解されていると思うし
実際それは正解でもあるのだが、単純にヒロインとイチャつくだけの話かといえばそういう訳でもない。
ストーリーの中では戦争の悲惨さや身内の犠牲なども描写され
ヒロインたちはそのたびに悩み、苦しむが自分が掲げた理想と大義のために戦い続ける道を選択する。
そういう甘い中にもビターな要素が入ってるからこそ、量産型萌えゲーから一歩抜き出た良作として評価されたのだと思っている。
そしてカリンはそんな原作の中でも一番指導者としての冷酷さ、非情さを持っているキャラなのだ。
ソフトハウスキャラ側のシナリオライターである内藤騎之介のテキストは残念ながらこうした部分をまったく表現できていない。
もっともこれはソフトハウスキャラにゲームシステムだけでなくシナリオまで丸投げしたBaseSonにも問題がある。

総合的に評価すると今回のコラボは2つのブランドの持ち味が生かせておらず失敗だったと思う。
ただ企画自体にはとても可能性を感じた。
役割分担や監修の仕方などのノウハウが蓄積されれば、コラボする両方のブランドのファンが喜ぶ作品がいつか誕生するのではないだろうか。